無自覚なバイアスを織り込んで
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下町のフレンチ・レストラン、ビストロ・パ・マルはカウンター七席、テーブル五つ。
三舟シェフの気取らない料理が大人気。
実はこのシェフ、客たちの持ち込む不可解な謎を鮮やかに解いてくれる名探偵でもあるのです。
突然姿を消したパティシエが残した謎めいた言葉の意味は?
おしゃれな大学教師が経験した悲しい別れの秘密とは?
絶品揃いのメニューに必ずご満足いただけます。
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近藤史恵さん、先日のお口直し(失礼!)という感じで、本作。
フレンチ・レストラン、「ビストロ・パ・マル」のシリーズ第3巻。
はい、堪能しました。
やはりいいです、このシリーズ。
レストランで見聞きした不可思議な謎を、三舟シェフが解き明かすという短編連作。
一作一作が、おいしい料理を食べた後のような満足感。
どうしてだろうと、我ながら不思議な気がしましたが、
巻末の解説で若林踏氏が「無自覚なバイアス」という言葉を使っていらっしゃいました。
例えば昨今、マスメディアやSNS上で差別的表現をして炎上することがあるけれど、
それについて発信者は「差別的な意図はなかった」とか「傷つける気持ちはなかった」などと謝罪します。
でも本当の問題は「差別的な発言を誘発しかねない価値観が内在していること」だというのですね。
このような、無自覚な差別意識=無自覚なバイアスを、近藤史恵さんが作品に織り込んでいるのです。
本巻では、トランス・ジェンダーのこと。
開発途上の外国人のこと・・・。
こうしたところが、納得のいく読後感につながっています。
今後も続いてほしいシリーズです。
「マカロンはマカロン」近藤史恵 創元推理文庫
満足度★★★★☆