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SHE SED シー・セッド その名を暴け

2023年09月05日 | 映画(さ行)

なぜこんなことが何十年も繰り返されたのか

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映画プロデューサーのハーベイ・ワインスタインによる性的暴行を告発した
2人の女性記者による回顧録をもとに映画化したものです。

ニューヨーク・タイムズ紙記者、
ミーガン・トゥイー(キャリー・マリガン)とジョディ・カンター(ゾーイ・カザン)。

大物映画プロデューサーのワインスタインが数十年にわたって続けてきた
性的暴行について取材を始め、
これまでワインスタインが何度も記事をもみ消してきたことを知ります。
いまだにワインスタインは被害者との秘密保持契約と、敏腕弁護士によって守られているのです。
そして被害者女性の多くは示談に応じ、証言すれば訴えられることになるし、
また当時のトラウマもあって声を上げられないでいるのです。

事の本質は業界の隠蔽体質にあると気づく記者たち。
取材対象からのかたくなな拒否や、ワインスタイン側からの嫌がらせを受けつつ、
なんとかこのことを世間に知らせたいと苦悩する記者たち・・・。

数十年にわたって続けられてきた性的暴行、
被害者の実数は数知れず、
しかしほとんどの被害者はトラウマを抱えつつ口を閉ざしている。
周囲は知っていても知らないふり、
ほんのいたずらでたいしたことではないと思いたがって(?)いる・・・。

この構図、いま話題に上がっているジャニー喜多川氏の性加害問題と全く同じですね。
周囲の人は知っていたはずなのに誰も止めることをせず、
数十年も続いてしまった。
・・・もう男女の違いの問題ではないのです。

性的なことは個人のプライベートの最深部。
それを力ずくではもちろんのこと、
立場を利用した圧力でも、犯すことは決してあってはなりません。

ところが、勇気を振り絞って被害を口にした人物が
誹謗中傷を受けるなどということがあるなんて、信じられません。

性加害は「罪」であることを、世間の誰もがしっかりと認識すべきです。

本作にアシュレイ・ジャッドが被害者の1人として、そのまま本人役で出演しています。
彼女はワインスタインの誘いを拒み、実際にキャリアを妨害されてしまったのでした。

 

さて、本作では、記者たちがなんとかこの事実を記事にしたいと思うわけですが、
多くの被害者が「秘密保持契約」を結んでしまっているので、
どうにもできないことが大きなネックになっています。
オフレコで話を聞き出すことができたとしても、
本人の了承無しには決して記事にはできません。
そうした基本的なルールを、どんなに歯がゆくても守り抜くところに、記者魂を見ました。
まあもっとも、証拠も確証もない記事を出せば
たちまち相手側から訴えられてしまうことを恐れたのでもありましょうけれど。

今、多くの人が見るべき作品だと思います。

 

個人的にはジャニーズびいきなので、なんとかメンバーたちに不利益なことがないよう
解決に向かってほしいと思っています・・・
今、トリリオンダラーがあれば、ジャニーズ事務所丸ごと買い取って
幹部総入れ替えで立て直しだな。
スミマセン。余計な一言。

 

<WOWOW視聴にて>

「SHE SED シー・セッド その名を暴け」

2022年/アメリカ/129分

監督:マリア・シュラーダー

出演:キャリー・マリガン、ゾーイ・カザン、パトリシア・クラークソン、
   アンドレア・ブラウアー、ジェニファー・イーリー、アシュレイ・ジャッド

 

性加害の実態のおぞましさ★★★★★

立ち向かう勇気度★★★★☆

満足度★★★★☆



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