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ダウントン・アビー 新たなる時代へ

2022年10月06日 | 映画(た行)

トーキー映画と出生の秘密

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私の敬愛するドラマ「ダウントン・アビー」映画版最新作です。

時は1928年。
グランサム伯爵グローリー家の亡き3女シビルの夫トムが、
モード・バックショーの娘との結婚式を挙げるシーンから始まります。

初めて見る方には、何のことはないシーンですが、
ドラマの始めから見ている方なら、いろいろな感慨がこみ上げて来るでしょう。

トムはもともとこの屋敷の運転手でした。
3女シビルとの結婚は、賛成されるはずもなかったのですが、
元気で進歩的な考えを持つシビルはトムと駆け落ち。
やがて身ごもって戻って来ます。
トムはシビルの家族たちと信頼関係を結ぶために奮闘。
いつしか互いのしこりも溶けて結婚も認められ、ようやく出産。
ところが、その直後にシビルは命を落としてしまうのです。
その後トムは幼い娘と共に屋敷を離れていたこともあったのですが、
やがてまた戻って来ます。
今やトムはすっかりこの家の「家族」の一員なのでした。

・・・と言う風に、本作に登場する人物一人一人の来歴を揚げていけばきりがありません。
どの人物にも感情移入してしまっていて、
だからこそ、このドラマが多く人に愛されるのでしょう。

さて、余談が長過ぎでした。

本作は、こんな頃に映画会社から新作の撮影に屋敷を使用したいとの申し出があるのです。
当主ロバートは屋敷に知らない者たちが大勢出入りして荒らされるのがイヤだったのですが、
その謝礼金で老朽した屋敷の修繕ができると長女メアリーに言われて承諾。

一方、ロバートは母バイオレットがモンミライユ男爵から
南仏の別荘を相続したことを知らされます。
亡くなった男爵の長男から招待を受け、家族とともに現地へ向かいます。

と言うことで今回は、

○映画の撮影隊がやってくる屋敷と、残留組の一家や使用人達の様子、
○南仏の別荘へでかけた一家の様子

二組の様子が交互に語られて行きます。

この時代は映画にとっては大きな分岐点。
それまでの無声映画から、声もフィルムと合わせて流れるトーキーへと
変わっていくその渦中なのです。
なので、それまでの俳優さんは撮影時口パクだったのですが、
これ以後は正しくセリフを話さなければならないわけです。

この屋敷に来た主演女優は、見た目こそハッとするブロンド美人なのですが、
下層階級の出なので、話し言葉が下品。
どうにもうまくいかずに落ち込んでしまうのです。

そんなわけで、なんとメアリーが声の吹き替えをすることになったりして、
なんともユニークな展開。

さて一方、南フランス。
そもそも何でこんなところの別荘をバイオレットが相続することになったのか、
というのが一番の問題。
それには、ロバートの出生の秘密が・・・?
本作にはスキャンダラスな展開も多いですが、まさかあのおばあさまが・・・? 
興味は尽きません。

と言うことで、今回もたっぷり楽しませていただきました。
私としてはこの人々があの2次大戦をどう乗り切るのかが非常に興味深いのですが、
それは本作でもまだ先のこと・・・。
そこのところまで描いてほしいけれど、
果たしてそれまで自分が元気でいられるのか?という問題にもなりそう・・・。

そして本作の終わりは、ちょっとショックでした。
エリザベス女王が亡くなったのと同じタイミングで・・・。
この一家にとっても、現在の英国にとっても
確かに時代は新たなものへと移り変わるところなのでしょう・・・

 

<シネマフロンティアにて>

「ダウントン・アビー 新たなる時代へ」

2022年/イギリス・アメリカ/125分

監督:サイモン・カーティス

出演:ヒュー・ボネビル、ローラ・カーマイケル、ジム・カーター、
   ブレンダン・コイル、ミシェル・ドッカリー、マギー・スミス

出生の秘密度?★★★★☆

映画の歴史度★★★★☆

満足度★★★★☆



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