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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ヒトラーと戦った22日間

2018年10月29日 | 映画(は行)

死の匂いに満ちた物語・・・

* * * * * * * * * *


第二次世界大戦下、ナチスによるソビボル絶滅収容所で実際にあった出来事の映画化です。



現ポーランドにあるソビボル収容所に多くのユダヤ人が送り込まれ、
ガス室で大量殺戮が行われていましたが、
一部、使役のために生き延びている人々がいました。
そんな中で、密かに脱走を計画するグループがあったのですが、
その計画を牽引するリーダーがいなかったのです。
そんなところへ、ソ連の軍人アレクサンドル・ペチェルスキーが収容者として送られてきます。
やがて彼をリーダーとして収容者全員の脱出を目指す反乱計画が動き始めます。

全編に渡って死の匂いが立ち込めているようで、見るのが辛かった・・・。
もちろんユダヤ人収容所のことが描かれている作品は
これまでにも多く見ているのですが・・・。
本作はまだ少しのんきに構えている裕福なユダヤ人たちの載った列車が
ソビボルの駅に到着するところからはじまります。
貴重品などの入ったカバンを預けて、シャワーを浴びるからと全裸になって案内された部屋は・・・。
そんなところが詳細に描かれているのが辛い。
そしてどうしても思ってしまう。
ドイツ兵たちはこんなことを毎日のように見て、平気だったのか、と。
毎日のようだからこそ、すでに神経が麻痺してしまっていたのかもしれません。
ユダヤ人をほとんど家畜のように扱う、その後の数々の描写にも、目を背けたくなります。
そしてユダヤ人たちは諦めながらも、憎しみを少しづつ蓄積していくのですね。



脱走者が出るとその後、ペナルティとして全く無作為で残った者たちが殺されてしまうのです。
自らは脱走に加担したわけでもないのに。
その事があったので、アレクサンドルらは、
全員が一斉に脱出する計画を練らざるを得なかったわけです。



計画の手順の始めは、主なドイツ兵幹部を一人づつ誘い出して、殺害していく。
軍人ではない民間人が殺人を犯すわけで、これはなかなか心理的ハードルも高いのですが、
そこには蓄積された憎しみがある。
ここの描写も、自由のため、正義のためという高ぶりはなく、
やはりただその死の匂いにたじろぐばかり・・・。
いづれにしても戦争に正義なんかない。
つくづくそう思わせる作品ではありました。



ちなみに、ソビボル収容所にはユダヤ人、ユダヤ系のソ連兵の捕虜、ロマなど
20万人~30万人が送り込まれたそうです。
そこに10万もの差があるというのも恐ろしいですよね。
とにかくきちんとた管理などされていなかったというか、
証拠隠滅されてしまったということなのか。
人一人の尊厳など全くありません。
そして1943年10月にこの反乱が起こりますが、
600名が反乱を起こし、脱走に成功したのが300名。
(残りの半数は死亡?)。
ところがその脱走に成功した者たちも、地元の人に捉えられたり殺されたりで、
結局終戦まで生き残ったのは50~70名とのことです。
このことは作中ではなく、エンドロールの中で文字で示されるのみですが、
あまりにもリスクの大きい脱出劇ではありました。
しかしでは、何もしなければ良かったのかと言えば、そういうわけでもなかったのですね。
いすれにしても救い難く、血の匂いに満ちた物語・・・。


<シアターキノにて>
「ヒトラーと戦った22日間」
2018年/ロシア・ドイツ・リトアニア、ポーランド/118分
監督・脚本:コンスタンチン・ハベンスキー
出演:コンスタンチン・ハベンスキー、クリストファー・ランバート、フェリス・ヤンケリ、ダイニュス・カズラウスカス、マリア・コジェーブニコワ

歴史発掘度★★★★★
満足度★★★.5



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