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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

花まんま

2025年04月30日 | 映画(は行)

もうひとりの自分

* * * * * * * * * * * *

2005年、第133回直木賞受賞の朱川湊人さん「花まんま」を映画化したものです。

大阪の下町で、加藤俊樹(鈴木亮平)とフミ子(有村架純)の兄妹が2人で暮らしています。
俊樹は亡き父と「どんなことがあっても妹を守る」と約束していたので、
高校も中退して就職し、必死で2人の生活を守ってきていたのでした。

そして今、妹の結婚が決まり、親代わりの兄としては
肩の荷を下ろすところだったのですが・・・。
遠い昔に2人が封印したはずのフミ子の秘密がよみがえります。

「月の満ち欠け」の話を思い出しました。
状況が少し似ています。

とある事件で、若い女性が命を落とします。
そして彼女の魂は生まれたばかりの赤子に改めて宿る・・・。

 

「月の満ち欠け」では、体を移し替えてよみがえった彼女の目的は、
愛する男性だったわけですが、
本作は「家族」であったということなのでしょう。

 

すなわち、フミ子には以前若くして命を失ったとある女性の魂が宿っていて、
自分の結婚の前に、その、本来の「家族」に会っておきたかった。
俊樹は、その事情は分からなくもない。
というのも、2人がまだ子どもの頃に、フミ子の情熱に引きづられるように
そちらの家族に会いに行ったことがあるから。
でも、そのことはそれっきりにするように妹と約束したはずだし、
自分がフミ子をここまで守り育てたのだという自負があったので、
いまさらあちらに「親」のような顔をしてほしくなかった。

・・・と、描きようによっては暗くなりそうな話なのですが、
本作はコメディタッチでつい笑ってしまうところも多いのです。
泣いて、笑って、ぐしょぐしょです。

「花まんま」というのは、子供のままごと遊びで作ったお花のお弁当のこと。
この「花まんま」というアイテムが、おっそろしく効果的な場面で2度登場します。
なんて美しくて切ない。
涙、涙・・・。
まさに本作の題名はこれ以外にはあり得ません。

フミ子の結婚相手役が鈴鹿央士さんで、なんと大学でカラスの研究をしている准教授。
終始三枚目的ポジションではありましたが、これが又いい雰囲気でした!!

ちょっと暑苦しい兄の愛ではありますが、大満足の作品。

あれ?でも、亡くなった女性は結婚寸前だったとのことですが、
その相手の話はまったく出てこなかったですね。
その人に会いたいとは思わなかったのか・・・?
も一度どこかで転生していたりして。

でも正直私は、「月の満ち欠け」の狂おしく恐いくらいの女の情念よりも
温かな家族愛のこちらの物語の方がずっと好きです。

 

<シネマフロンティアにて>

「花まんま」

2025年/日本/118分

監督:前田哲

原作:朱川湊人

脚本:北啓太

出演:鈴木亮平、有村架純、鈴鹿央士、ファーストサマーウイカ、酒向芳、キムラ緑子、六角精児

 

兄弟愛度★★★★★

親子愛度★★★★★

満足度★★★★★



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