映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

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2021年01月05日 | 映画(は行)

じんわりと萌える

* * * * * * * * * * * *

都会を離れ、岐阜の田舎町で孤独に暮らしていた迅(宮沢氷魚)。
ある日突然、6歳の娘を連れた渚(藤原季節)が訪ねてきます。
渚は大学の卒業間近に別れたゲイのパートナー。
全く音信不通だった彼が、突然現れてしばらく居候させてほしいという。
渚は妻と離婚調停中で、娘・空の親権も争っているというのです。

渚に一方的に別れを告げられた後、
就職してからも同性愛者であることをひたすら隠し続けるのがつらくなり、
彼はこの地に移住してきていたのでした。
それなのに、渚はあろうことか結婚をして、子どもまで作って
今さら転がり込んできた。
当惑以上に怒りを覚える迅なのです。
しかし子連れでもあり、追い返すわけにも行かず、
やむなく共同生活を始めます。

はあ~。
なんかじんわり萌えました。
渚がこの家を訪ねてきた時点で、2人の互いへの思いはもう想像が付きます。
けれど、そう簡単に元のサヤに戻ることができるわけじゃない。
2人が互いの気持ちを確認するまでのプロセスが丁寧に描かれています。

田舎町のことなので、イケメン2人+子どもの同居は「何か訳あり」と、
すぐに人々の興味を引きます。
そして、真のことをバラしてしまったのは、なんと娘の空。

まだ幼くてなんの偏見も持たない彼女は言います。
「パパは迅くんが大好きで、迅くんはパパが大好き。
だからキスするんでしょ。
それがどうして変なの?」

世間の偏見や差別を恐れて、ひたすら自分自身を隠し続けてきた迅。
けれど、人が人を愛して何が悪いと開き直り、
カミングアウトできたのは、空のおかげなんですね。
ここの町の人々の心がひろくてよかった~と、つくづく思います。
いや、過疎の町なんで、ゲイだろうとなんだろうと、
人が増えるのは大歓迎、ということなのかもしれないですが・・・。

さて、もう一方で語られるのは、空の親権のこと。
渚の妻には仕事があり、安定した収入があると言えます。
これまで渚が家事・育児担当だったんですね。
だから余計に渚としては空とは離れがたい。
しかし、ゲイの男性2人の家で子どもを育てるというのはどうなのか・・・? 
ここが重要な争点。
同性愛にあからさまに異を唱えれば差別主義者だけれど、
世間一般にはいかがわしいとしか思われていないのも事実。
互いの弁護士が実にシビアな論を繰り広げるのが、
どちらもつらい・・・。

・・・と、2人を取り巻く状況もうまく描かれていて、
何といってもこの2人が日常の中で
気持ちのつながりを次第に強めていく様が心地よい。
単なるBLを超えていて、私は心打たれてしまったのでした。

このバックハグがヤバい・・・。

<WOWOW視聴にて>

「his」

2020年/日本/127分

監督:今泉力哉

脚本:アサダアツシ

出演:宮沢氷魚、藤原季節、松本若菜、松本穂香、外村紗玖良、堀部圭亮、戸田恵子

 

萌え度★★★★★

満足度★★★★★

 



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