映画と本の『たんぽぽ館』

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聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア

2019年06月09日 | 映画(さ行)

生贄で罪を贖う・・・?

* * * * * * * * * *

なかなか風変わりのこの題名の通り、内容も一筋縄ではいかない作品です。

心臓外科医スティーブン(コリン・ファレル)は、
美しい妻(ニコール・キッドマン)と娘、息子を持ち、
充足した生活を送っていました。
ある日、マーティン(バリー・コーガン)という少年を家に招き入れてから、
奇妙なことが起こり始めます。
子どもたちが突然歩けなくなったり、目から血を流したり・・・。
スティーブンはこの少年に追い詰められ、容赦ない選択を迫られることに・・・。

監督のヨルゴス・ランティモスはギリシャの監督。
そのためか、本作は「アウリスのイピゲネイア」というギリシャ神話に由来しているのです。
ギリシャ群を率いるアガメムノンがトロイ軍との戦に勝つために、
自身の娘イピゲネイアを狩猟の神アルテミスに犠牲として捧げるというもの。


マーティンは謎めいた少年です。おずおずと遠慮めいたはじめの登場。
しかし次第に馴れ馴れしく厚かましく、ストーカーのようにスティーブンにつきまとい始めます。
少年愛の物語? 
もしくはマーティンはそのように少年に嵌められようとしているのか・・・? 
そんな想像をも軽く蹴散らして、ストーリーは予想外の方向へ動き始めます。



かつて、少年の父親がスティーブンにより手術を受けたのだけれど、死亡している。
少年はそれがスティーブンの過失によるものだと思っているようなのです。
スティーブンの家族について、不気味な予言めいたものをする少年・・・。
一体この少年は何者なのか。
神?悪魔? 
それとも何か人智を超えるものの代弁者に過ぎないのか・・・?
しかし、彼の不気味な予言は現実のものとなっていき、
スティーブンも無視できなくなってくるのです。



己の過失を本人ではなく、その家族で贖おうとするのがなんとも不気味です。
そんなことなら自分の命を失うほうがまだマシだと思う人もいるでしょうし、
あるいはそうでない人もいそうです。
家族に優劣などつけることができるでしょうか?
・・・などというのは建前で、実際にはそれはあるのかも知れない。
そう思うと、自己の本質を見透かされるようで、怖いですね。
そしてまた密かに家族たちが、自分がその役を負いたくないばかりに
スティーブンにすり寄っていく様子も皮肉。
バリー・コーガンの不気味な存在感が秀逸。

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア [DVD]
コリン・ファレル,ニコール・キッドマン,バリー・コーガン,ラフィー・キャシディ,アリシア・シルヴァーストーン
Happinet

<WOWOW視聴にて>
「聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア」
2017年/イギリス・アイルランド/121分
監督:ヨルゴス・ランティモス
出演:コリン・ファレル、ニコールキッドマン、バリー・コーガン、ラフィー・クアシディ、サニー・スリッチ
不気味度★★★★☆
満足度★★★.5



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