映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

おいしい家族

2023年02月23日 | 映画(あ行)

多様性の見本市

* * * * * * * * * * * *

監督・脚本がふくだももこさん。
監督自身が手がけた短編映画「父の結婚」を、長編化したものです。

 

銀座のコスメショップで働く橙花(松本穂香)。
母の三回忌のため、実家のある離島へ帰ります。
実家に入ると、なんと父・青治(板尾創路)が母の服を着て生活しているのです。
そして、「この人と結婚する」と言って、居候の男性・和生(浜野謙太)を紹介。
その男には、高校生の娘・ダリア(モトーラ世理奈)までいるのです。
また、この家には橙花の弟・翠(笠松将)とその嫁も住んでいます。
嫁はスリランカ人で、出産間近。

謎の一家ではありますが、誰もがこの状況を平然と受け入れ、
和気あいあいと盛り上がっている。
一人、取り残された気がして、次第に怒りすら湧いてきてしまう橙花。
何しろ彼女は結婚生活がうまくいかず、夫と別居生活中でもありまして・・・。

こんな意味不明の家族ですが、数日間滞在し、
それぞれの人となりや、父が母になってしまった理由を知り、
橙花も変わっていく・・・。

「家族がほしい男と、妻を亡くして淋しい男、
これって互いに利用しているだけじゃないの?」
と橙花は問います。

あらら、これって先日見た「エゴイスト」の問いかけているものと、
図らずも同じことですね。
根底にあるのは、相手が幸せなら自分も幸せ、という、
相手のことを大事に思う気持ちがそこにあるということ。
だから、「エゴイスト」でも、「利用している」でもOKということなんだな。

それにしてもあっぱれだと思うのは、
この島に住む人々はすでに青治の女装のことを見慣れているらしく、
何も言わずに受け入れているというところ。
しかも青治はここの高校の校長でもあるのです。
生徒達は平然と「おはようございます」と挨拶したりしている。
法事に集まった親類達も、全く普通のこととして受け入れています。
まあ、始めは驚いたでしょうが、見慣れてしまえば、
この人はこういう人、別に誰に迷惑をかけるわけじゃナシ、いいんじゃね?
くらいの感じでしょうか。
小さな島だからこそ、皆がそれを知っているという利点が逆にありそうです。

こんな高校なら、馬鹿げた校則もなくて、
茶髪金髪、無論男子の女装も全然OKのような気がする。
多様性の見本みたいな場所であります。

断然、お気に入りの一作となりました。
なんで封切り時に見ていなかったのだろう・・・。

<Amazon prime videoにて>

「おいしい家族」

2019年/日本/95分

監督・脚本:ふくだももこ

出演:松本穂香、笠松将、モトーラ世理奈、三河悠冴、柳俊太郎、浜野謙太、板尾創路

 

多様性度★★★★★

満足度★★★★★



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