生々しい、ジグロ!
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つれあいのタンダとともに、久しぶりに草市を訪れたバルサは、
若い頃に護衛をつとめ、忘れ得ぬ旅をしたサダン・タラム“風の楽人”たちと再会、
その危機を救ったことで、ふたたび、旅の護衛を頼まれる。
シャタ“流水琴”を奏で、異界への道を開くことができるサダン・タラム“風の楽人”の頭は、
しかし、ある事情から、ひそかに狙われていたのだった。
ジグロの娘かもしれぬ、この若き頭を守って、ロタへと旅立つバルサ。
草原に響く“風の楽人”の歌に誘われて、
バルサの心に過去と現在とが交叉するとき、
ロタ北部の歴史の闇に隠されていた秘密が、危険な刃となってよみがえる。
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上橋菜穂子さん「守り人」シリーズの外伝、
今のところこれが最終巻となっています。
本巻では、本編後のタンダとバルサが草市を訪れるところから始まります。
相変わらず仲がよろしいようで、結構なことです。
ですがバルサは、そこで出会ったサダン・タラム“風の楽人”たちに護衛の仕事を頼まれ、
タンダとは別れてサダン・タルムとともに旅をすることになります。
実は昔、バルサが16歳の頃、
ジグロとともにこのサダン・タルムを護衛して旅をしたことがあったのでした。
それで、この旅の合間にバルサは昔の旅のことを回想して行くのです。
それは、前巻「炎路を行く者」の中の「十五の我には」の続きの物語、といってもいいのです。
この中で、ジグロが彼を追ってきた刺客を倒すシーンがあります。
その刺客というのはかつてジグロの信頼した朋友・・・。
国を裏切って出てくる事になってしまったジグロには、
かつての仲間たちが刺客として送り込まれてきて、
自分が生きるために彼はかつての友を倒さなければならなかった・・・。
これまでの物語の中ではそうした説明はあったのですが、
本作中で初めてその具体的な描写がなされたのでした。
あまりにもつらいので、私はこのシーンは読みたくはなかったのですが・・・。
そんな場面を目の前で何度も見てきたバルサにも、つらいことであったでしょう。
だからバルサは、ジグロにそれをさせたくない、
せめて自分自身が刺客を倒したい、と思うわけなのですね。
さて、本作でまた注目すべきは、
ジグロと、当時のサダン・タルムの女頭サリとが良い仲であったと言うこと。
ほほう、そういう生臭い話でしたか。
今の頭はその娘、エオナ。
つまり、エオナは、ジグロの娘なのかもしれない???
驚きの隠し球。
まあ、正解はどうなのか言及はありません。
・・・ということで、実に興味深いストーリーなのでした。
あ、でも本作の目玉は、過去の旅、現在の旅、
どちらにもスリルあふれる護衛としての働きがある、というところです。
<図書館蔵書にて>
「風と行く者」上橋菜穂子 軽装版偕成社ポッシュ
満足度★★★★☆
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