働く者の法則
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何故おれは、裏切られ続けて死にゆくのか。信長の内面を抉る革命的歴史小説
織田信長の飽くなき渇望。
家臣たちの終わりなき焦燥。
焼けつくような思考の交錯が、ある原理を浮かび上がらせ、
すべてが「本能寺の変」の真実へと集束してゆく――。
まだ見ぬ信長の内面を抉り出す、革命的歴史小説!
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織田信長の、これまでにない切り口から描かれたストーリー。
子供時代、いつも1人で野山を歩き回っていた信長は、
アリの巣穴を飽きもせずに眺めて、あることに気がつきます。
せっせと食物を集めては巣穴に運び込んでいるように見える、アリの行列。
しかしそれはよく見ると、本当にせっせと仕事をしているのは全体のほんの2割程度。
そして6割は、のらりくらりと働いているような、サボっているような、
いい加減なものたち。
そして、残りの2割はハナから全くやる気のない役立たず。
信長が長じて合戦に加わるようになると、
兵士たちの動きがこのアリの集団と同じであることに気がつくのです。
必死で先頭に立って闘い、成果を上げるのが全体の二割。
6割は逃げ腰で、さしたる戦果は揚げられない。
そして、残りの2割はやはり、役立たず。
そして信長はアリを使ってある実験を試みます。
全体のうちのよく働く2割だけを使って、同じくエサを運ばせてみる。
すると、予想に反してその中でもエリートは2割だけ。
適当なのが6割。
ダメなのが残り2割。
この中のエリート集団だけを使って同じ実験をしても、
優秀なのはやはり2割だけ。
神も仏も信じない信長ですが、世の中には神とは別の何かの“ことわり”があるらしい、
と信長は思います。
どう頑張っても集団の中での働きぶりは1:3:1。
こんなことから信長は、
優秀な家臣が5人いれば、必ずそのうちの1人はダメな家臣、
つまり自分を裏切る者になるのではないか、と思うようになるのです。
それにしても、どうしてこのような割合になってしまうのか。
すべてが役に立つ者にはなぜならないのか・・・。
信長がその答に気づくのは、なんと本能寺の炎の中でした・・・。
すべてが“ことわり”通り。
ただし、自分はその相手を読み間違えていた・・・。
「是非もなし」という信長のセリフが、みごとにハマります。
明智光秀が謀反を決意し、実行に移すまでの描写がさすがに圧巻でした。
本作の姉妹作というべきなのか、「光秀の定理」という作品もありまして、
こちらもぜひ読まなくては、と一瞬思い、
でもよく考えたら数年前に読んでいました。
確かそちらは「確率」に関係する話だったような・・・。
うろ覚ならもう一度読んでもいいのですけどね・・・。
<図書館蔵書にて>
「信長の原理」垣根涼介 角川書店
満足度★★★★☆
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