映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

英国総督最後の家

2019年09月17日 | 映画(あ行)

英国とインドの事情

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1947年独立前夜のインド。

 

最後のイギリス統治者として、デリーの総督の家に
ルイス・マウントバッテン卿(ヒュー・ホビネル)が就任します。
当時のインドは、ヒンズー教、シク教、イスラム教と宗派の対立が大きく、
また、カースト制度による対立も加わり、分断され、混乱状態。
これらの各指導者層と話し合い、極力穏便に主権を譲渡する、
そういう役割が期待されているのです。
統一インドとするか、もしくは分離してパキスタンを建国するのか。
重大な決断をルイスは下さなければなりません。

 

マウント・バッテン卿はいかにも人柄がよく、インドの人々のために尽くそうとするのですが、
そんな彼も「国家」という巨大な歯車の一つでしかなく、
「国益」のために動かされているに過ぎない、というところが次第に見えてきます。
単なる英雄譚にならないのがよいと思いました。
できることならば、統一インドとすべきだったのかもしれない。
ガンジーがそう主張していたように。
けれど各地で起きている暴動や虐殺の実情を見れば、分断するしかないとも思えます。
しかし、結果論ではありますが、国を分離してしまったことで、
もう二度と融合できなくなってしまっているわけです。

 

このインド・パキスタン分離独立運動を現地で体験した祖父母を持つ
チャーダ監督の思いが伝わる作品です。

 

そしてまた、使用人のインド青年ジートと令嬢秘書アーリアの
宗派の違いを超えて、惹かれ合う二人の姿を交えたところで、
一段と私たちの思い入れも深まります。

 

マウント・バッテン卿のヒュー・ボネビルは、あのTVドラマ「ダウントン・アビー」のグランサム伯爵。
こうした時代のこういう役がいかにも身についていますね。

 

英国総督 最後の家 [DVD]
ヒュー・ボネヴィル,ジリアン・アンダーソン,マニーシュ・ダヤール,フマー・クレイジー,マイケル・ガンボン
Happinet

 

「英国総督 最後の家」

2017年/イギリス/106分

監督:グリンダ・チャーダ

出演:ヒュー・ボネビル、ジリアン・アンダーソン、マニシュ・ダヤル、フマー・クレイシー、マイケル・ガンボン

 

歴史発掘度★★★★★

国家の理論度★★★★☆

満足度★★★★☆