映画と本の『たんぽぽ館』

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「物語は人生を救うのか」千野帽子

2019年09月29日 | 本(解説)

人は世界のなりゆきを、ストーリーでとらえようとする

物語は人生を救うのか (ちくまプリマー新書)
千野 帽子
筑摩書房

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世界を解釈し理解するためにストーリーがあった方が、
人は幸福だったり、生きやすかったりします。
実話とは?
そして虚構とは?
偶然と必然って?
私たちの周りにあふれているストーリーとは何でしょう?

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先に「人はなぜ物語を求めるのか」という同著者の本を読んでいたので、
続編のこの本も手に取りました。

表題の「物語は人生を救うのか」と言うより、
実話とは? 虚構とは? 偶然と必然とは?と言うところに重きがあるように思いました。

人は実話よりもフィクションの方に「ほんとうらしさ」を求める。

人がフィクションに求める「ほんとうらしさ」とは、じつのところ「必然性」と呼ばれるものにすぎない。
フィクション内の偶然は時にご都合主義として批判される。

「事実は小説よりも奇なり」と言うが、人が小説に「奇」ではないことを要求しているだけの話。

・・・なるほど、その通り。

そしてさらには、

歴史の中で生き残ってきたものがあると、
人は運や偶然よりもそこに必然性(淘汰されなかった理由)を後づけしたがる。

人はうっかりすると、現実世界のなりゆきにも必然性を求めてしまう。

そんなわけで、人は世界のなりゆきを「原因→結果」とか、「動機→行動」と行った因果関係のストーリーでとらえようとするのです。

そのストーリーをどう作るかが問題なんですね。
単一のストーリーに縛られると自責的あるいは他責的に思考してしまう・・・ということで、
「物語は人生を救うのか」の答えは、物語の作り方による、と言うことになりそうです。

どのようなストーリーを作っても起こってしまったことを変えることができないならば、
自分や誰かを責めるようなストーリーでないほうが良さそうです。

図書館蔵書にて

「物語は人生を救うのか」千野帽子 ちくまプリマー新書

満足度★★★☆☆