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映画と本の『たんぽぽ館』

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「御子柴くんの甘味と捜査」若竹七海

2018年10月23日 | 本(ミステリ)

お菓子に振り回される御子柴くん

御子柴くんの甘味と捜査 (中公文庫)
若竹 七海
中央公論新社

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長野県警から警視庁捜査共助課へ出向した御子柴刑事。
甘党の上司や同僚からなにかしらスイーツを要求されるが、
日々起こる事件は、ビターなものばかり。
上田市の山中で不審死体が発見されると身元を探り(「哀愁のくるみ餅事件」)、
軽井沢の教会で逃亡犯を待ち受ける(「不審なプリン事件」)。
『プレゼント』に登場した御子柴くんが主役の、文庫オリジナル短篇集。

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本作の主人公とも言える御子柴くんは「プレゼント」という作品でデビューしたそうなのですが、
うーん、どうも読んでいないようです。


長野県警から警視庁捜査共助課へ出向しているという御子柴くんは
殺人事件の解決へ向けていい仕事をするのですが、どうも最後の最後で納得がいかない。
そんなときに、長野県警でかつて一緒に組んで捜査をしていた小林警部補と電話で話をする。
すると彼は御子柴くんの話を聞いただけで、スルスルと事件解決してしまう。
おおよそそんなパターンの短編集です。
「プレゼント」の方を読めばわかるのでしょうけれど、
つまり小林警部こそがこのシリーズの名探偵役(警察なのに名探偵というのは変か?)だったのですね。
今度読んでみよう・・・。

さて本作のユニークなのは、あま~いお菓子が沢山登場するところです。
御子柴くんが特に甘いもの好きではないんですよ。
長野から東京へ出向してきている彼は、いつも上役などから頼み事をされてしまうのです。
長野の名物の〇〇を入手して送ってほしいとか、
逆に東京のどこそこでしか売っていない〇〇というお菓子を買って送れとか・・・。
忙しいのに冗談じゃない、と思いながらもつい従ってしまう。
ところがそれを上役へのゴマすり、出世のためと人には思われているフシがあって、
くさってしまう御子柴くん。
・・・などという設定がまた面白い!
東京のお菓子はともかくとして、
長野すなわち信州のお菓子はどれも美味しそう・・・。
私も御子柴くんに買って送ってほしい!!

またこの御子柴くんのプロフィールがなかなかいいのです。
もともと東京生まれ東京育ちなのに山の雄大さに憧れて長野県警入を果たしたのです。
本当は山岳救命の仕事に付きたかった。
しかし、ある事件で膝を怪我してしまい、登山ができなくなってしまうのですね。
登山は諦めたものの、でもやはり長野の自然は大好き。
東京で長野の山を恋しく思う・・・
まるでアルプスの少女ハイジみたいな心境をとても好ましく思う私でした。


「御子柴くんの甘味と捜査」若竹七海 中公文庫
満足度★★★★☆