映画と本の『たんぽぽ館』

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ベルリン・シンドローム

2018年04月29日 | 映画(は行)

監禁、その複雑な心理。

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オーストラリアからベルリンに旅行に来たクレア。
アンディというスポーツ学校の教師と知り合い、恋に落ちます。
旅先のちょっとした素敵な出会い・・・、のはずでした。
アンディの部屋に泊まり、朝を迎えたクレア。
アンディはすでに外出しており、クレアも外に出ようとしたのですが、
鍵がかけられていてドアが開きません。
やむなくアンディが帰るまで一日をそこで過ごしましたが・・・。
ようやく戻ってきたアンディはクレアを開放するつもりはないようなのです。
廃墟のようなビルの一室。
近所には誰もいる様子はなく、窓は特殊な強化ガラスのようで、クレアが力いっぱい叩いてもびくともしません。
彼女は監禁されてしまったのです・・・。

監禁という状況も恐ろしいですが、
ちょっと見でいかにも人の良さそうな、このアンディこそが恐ろしい。
彼は何食わぬ顔できちんと勤務に出かけます。
外では完璧にきちんとした教師・・・。

そして彼はクレアに暴力を奮ったりはせず、爪を切ったり、髪を切ったり、
やむなくベッドに縛り付ける事はあるにせよ、不気味に優しいのです・・・。
まるでペットを可愛がるような感覚でしょうか・・・。



こんなエピソードがあります。
アンディの職場で、ある女性が間違ってアンディのカップを使ってしまった。
気がつくと彼女はあわててしっかり洗って返すのですが、アンディはもう一度洗い直しそうな勢い。
(けっきょくその場面では洗っていませんでしたが。)
そして謝る彼女がアンディの手に触れると、そこを汚らわしいとでも言うように洗い始めるアンディ。
こんなところから、なんとなく彼の性質が見える気がしました。
彼は「自分のもの」にこだわるのです。
クレアを閉じ込めて自分のものにする。
自分の「もの」であれば多少の反抗も許せるし、自分のものだからこそ、大切にしようと思う。
でも、「もの」だから相手の感情は無視。
しかしある時、アンディの父親が亡くなり、
そんなときには慰めるようにクレアの方からアンディを抱きしめたりもする。
すごくリアルな人の感情を描いていると思いました。
愛と憎しみは相反するようで入り混じって同居することもある・・・。
人の心は計り知れません・・・。



クレアはこの部屋に以前、別の女性が同様に監禁されていたことに気づきます。
でも結局本作中に彼女がどうなってしまったのかは描かれていませんよね・・・。
私はそこも怖いと思います・・・。
無事逃げることができたとはとても思えないのですが、ではどうなった・・・?
つくづく怖いストーリーです。
うかうか人を信用してはいけない・・・。



<ディノスシネマズにて>
「ベルリン・シンドローム」2016年/オーストラリア/116分
監督:ケイト・ショートランド
出演:テリーサ・パーマー、マックス・リーメルト、マティアス・ハービッヒ、エマ・バディング、エルマイラ・バーアーミー
精神の欠落度★★★★★
猟奇度★★★★☆
満足度★★★.5