映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ワンダーストラック

2018年04月25日 | 映画(わ行)

シンクロする二人の冒険

* * * * * * * * * *


2つの時代の少年少女の話が、同時進行していく物語です。
まずは1977年。ミネソタ。
母を事故で亡くした少年ベン(オークス・フェグリー)は、
母の遺品の中から会ったことのない父に関する手がかりを見つけます。
そしてそこから50年前、1927年のニュージャージー。
聴覚障害のある少女ローズ(ミリセント・シモンズ)は厳格な父親に馴染めず、
女優リリアン・メイヒューの記事を集めてスクラップするのを楽しみにしています。
孤独な2人はそれぞれニューヨークを目指して家出を決行。
2人の目指すものは見つかるのでしょうか?

1927年のローズのパーツはモノクロのサイレント。
実はローズが好きなリリアン・メイヒューの映画もサイレント映画なのです。
セリフは字幕が入る。
ニューヨークにたどり着いたローズは近々「トーキー」という、声の入った映画ができる
というポスターを見て、ちょっとがっかりした顔をします。
耳の不自由な彼女にとっては、トーキーよりもサイレント映画のほうが良かった・・・。
そんなちょっとしたシーンにも心憎いばかりの演出がなかなかです。



ニューヨークを訪れた二人の行く先は自然史博物館。
50年の時を隔てながら、シンクロするかのように、
それぞれ心細さとワクワク感、双方をいだきながらニューヨークの雑踏の中を歩いていく。

しかもどちらも聴覚障害ということで、まさしく見ているこちらまで、ドキドキさせられます。
そしてこの2人は必ずどこかでめぐりあうはずとは思いながらも、
50年のときは乗り越え難く、全く先が読めません。
一気にタイムワープしてしまうようなファンタジーではなかったんですね! 
でもそこがまたいいのですよ・・・。
そんな方法ではなく、もっと納得の行く驚きの結末に、歓びがこみ上げます。



この博物館は「ナイトミュージアム」の映画でもおなじみですが、
「時」の流れを感じるのに、最高の舞台でもあるわけですね。
全く別々の少年少女の物語が、やがて家族の物語として集結してゆく。
なんてステキな物語なのでしょう!! 
オススメです。



<シアターキノにて>
「ワンダーストラック」
2017年/アメリカ/117分
監督:ドット・ヘインズ
出演:オークス・フェグリ―、ミリセント・シモンズ、ジュリアン・ムーア、ジェイデン・マイケル、コリー・マイケル・スミス、ミシェル・ウィリアムズ
冒険度★★★★☆
物語の収束度★★★★★
満足度★★★★★