映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ル・アーヴルの靴みがき

2014年02月17日 | 映画(あ行)
法律のことなんてよくわからないけれど、人としてすべきことがある。



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フランス北部の港町、ル・アーヴル。
アフリカからの不法移民が乗ったコンテナが漂着し
1人の少年が逃げ出しました。
その少年を救ったのが、靴みがきを仕事としているマルセルです。
彼の妻は病で入院中。
その間、警察に追われる少年・イングリッサを家に匿い、
彼の母がいるというロンドンへ送り出そうとします。



アキ・カウリスマキ監督によるこの作品、
登場人物たちは非常に言葉少なで独特の間があります。
どうしたのかな?
何を考えてどうしようとしているのかな?
そんな風に考えながら見るので、
饒舌な作品よりも、つい画面に集中してしまいます。
そしてまた底辺に流れるちょっぴりのユーモアがいい。



マルセルはごく善良な市民で、
大変な思いをしてここまでやってきて、さらに行き場のない少年を
是非助けなければ!!という義憤にかられています。
そしてその思いは彼の馴染みのパン屋やカフェの人々にも伝わります。
法律のことなんかよくわからないけれど、
人としてすべきことはある・・・と。
でも作品中にはそんなもっともらしいセリフなど一言も出てきません。
でも、それこそセリフなんか無くても
万国どこでも通用する思いなのだと思います。



一方、マルセルの妻アルレッティは医師から余命宣告を受けているのですが、
「夫は大きな子供みたいな人」だから、
そのことはいわないでおいてと医師に懇願します。
一度だけイングリッサがマルセルの代わりに
アルレッティをお見舞いに来るのですが、
その時に交わした握手が、本ストーリーの“奇跡”を呼んだものと思えます。



そう、社会問題を扱ったように見えるこの作品は、
実は人と人との温かい絆が生み出す奇跡の物語であったのです。
でもそれが実にさりげないというか過大な演出も仰々しさもなし。
とにかく淡々としているのですが、好きですねえ。こういうの。
この監督の作品をもっと見たくなりました。
(というか、今まで見ていないのがハズカシイ・・・)
今作に出てくるワンちゃんのライカは監督の愛犬で、
他の作品にも出てくるそうです。
それもまた見たい!!



ル・アーヴルの靴みがき 【DVD】
アンドレ・ウィルム(声:大塚芳忠),カティ・オウティネン(声:田中敦子),ジャン=ピエール・ダルッサン,ジャン=ピエール・レオー,ブロンダン・ミゲル(声:朴 叙ミ美)
キングレコード


「ル・アーヴルの靴みがき」
2011年/フィンランド・フランス・ドイツ/93分
監督:アキ・カウリスマキ
出演:アンドレ・ウィルム、カティ・オウティネン、ジャン=ピエール・ダルッサン、ブロンダン・ミゲル、ジャン=ピエール・レオ
言葉少な度★★★★☆
ハートウォーミング度★★★★☆
満足度★★★★★