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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「家族ずっと」 森浩美

2014年02月10日 | 本(その他)
癒しに満ちたストーリー

家族ずっと (双葉文庫)
森 浩美
双葉社


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一番大事な存在だが、同時にやっかいなことも多い家族。
普段は大して感謝もされず、思いやりも感じられず、
そのくせこちらはけっこう気を遣う。
どのくらい分かってくれているんだろうか。
一体、自分にとって家族ってなんだろう。
そんな問いへの答えが、読むうちにパッと目の前に現れる、
大好評家族小説短編集。
ずっと家族―八つの物語に八つの希望が待っている。
家族シリーズ第5弾。


* * * * * * * * * *

著者・森浩美さんは、作詞家でもありSMAPの曲なども手がけていますね。
この「家族シリーズ」は第5弾ということなのですが、
失礼ながら、私は初めてでした。
「家族」にまつわる短編が収められています。
暖かく居心地がいいのも家族ですが、
何かと厄介であるのもまた、家族。


例えば本巻冒頭の「父ちゃんとホットドッグ」
父親が入院したと弟に言われ、故郷に帰ってきた圭。
父とは反りが悪く、しばらくまともに顔を合わせたこともない。
頑固一徹な父には子供の頃からかわいがられた記憶も、共にいて楽しかった記憶もない。
しかし病室を訪れた圭は、父のやつれ様に思わずハッとする。
その父が、「昔、ホットドッグを食べに行ったっけなあ・・・」
と思い出を口にすると、
圭にもその時の光景が思い出されてくる・・・。
似たもの同士で意地っ張りの二人。
結局それだけの事だったのではないか・・・。
これまでのわだかまりが溶けて行くのです。



こんな風に親と子、夫婦などのわだかまりや行き違いを描きながら、
最後には何処か必ず温かな"救いの光"や"希望の光"が残されます。
そもそもこのシリーズにおいては、それがこの著者のモットー。
時にはこのように、癒やしに満ちたストーリーも良いものです。


著者は後書きで述べていますが

「残念ながら僕の描く"小さな光"とは解決させる"光"ではないのです。
ならば一体何であるのか。
それは「一緒に考えてみましょう」ということなのです」

多くのシリーズ短編の中には、
きっと今自分が抱えている問題と同質のものがあるかもしれません。
そんな時、迷い込み落ち込んでいく心を
少しでも救い上げていくヒントがここにあるのかもしれません。


でもまあ、あまりにもいい話で終わってしまうので、
やや物足りなくも感じてしまう、天邪鬼な私なのでした。


「家族ずっと」森浩美 双葉文庫
満足度★★★☆☆