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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ジャンゴ 繋がれざる者

2013年03月12日 | 映画(さ行)
主役が一番地味な、超インパクト西部劇



            * * * * * * * * *

クエンティン・タランティーノ監督作品。
う~ん、やはり強烈でした。
アクの強さと容赦ないバイオレンス。
私などはどちらかと言うと苦手な部類ですが、
でもやっぱり惹きつけられて見てしまうんですよね・・・。


冒頭、聞き覚えのある「続・荒野の用心棒(原題 DJANGO)」のテーマ。
今作「ジャンゴ」は、特にそのリメイクというわけでもなく、
名を借りただけの全くの別物。
でもタランティーノ監督のむちゃくちゃなこだわりが感じられます。
ややレトロな感じではありますが、
その音楽に重なるのは黒人奴隷が引き連れられて荒野を歩む姿の映像。
う~ん、これもインパクトたっぷりです。



時は南北戦争の始まる少し前、1858年。
アメリカ南部。
この、引き連れられている奴隷の一人がジャンゴ(ジェイミー・フォックス)です。
そこへ通りかかったのは、元歯科医のドイツ人賞金稼ぎシュルツ(クリストフ・ヴァルツ)。
彼はほとんど無理やりジャンゴを買うのですが、
奴隷としては扱わず、賞金稼ぎのコンビを組むことになります。
ジャンゴには生き別れになった妻・ブルームヒルダ(ケリー・ワシントン)がいて、
二人は賞金稼ぎをしながら彼女の行方を追います。
そして、残忍な領主として名高いカルビン・キャンディ(レオナルド・ディカプリオ)のもとに彼女がいることがわかるのです。



奴隷制度に真正面から立ち向かいつつ、
それを皮肉に笑い飛ばしてしまおうというエンタテイメントの威力を感じます。
私はKKKもどきに、気に入らない黒人を抹殺しようとする白人たちが、
袋をかぶるとうまく目が見えないと文句を言い、
引き返そうとしたりして揉めるシーンにすごくウケてしまいました。
そうですよね。実際、よく我慢してあんなものかぶっていたものです。
笑えます。
(今調べてみたらKKKは南北戦争後に発足したようで・・・
余計なこと調べてしまった・・・。
でも作中でそう名乗っているわけではないので、問題ありませんね)

  

一見知的で穏やかそうなシュルツは、
全く予期しないタイミングで平気な顔で銃を抜き人を撃つ
・・・全く油断なりません。
アカデミー助演男優賞、なるほどです。
でも実はレオナルド・ディカプリオも狙っていたのではないかな。
ものすご~く強烈に嫌なヤツでした。
頭蓋骨を切り取って演説するシーンは圧巻・・・。
これでもかというくらいに毒を放ってましたねえ。
そしてまた、その配下とでもいいますかスティーブン(サミュエル・L・ジャクソン)がまたすごい。
彼自身黒人奴隷でありながら、
筆頭に立って他の黒人を痛めつけるサディスティックなヤツ。
しかしこの頭のキレ具合、全く憎らしい! 
それから、名前を言うとおじぎするシュルツの愛馬もステキ! 
ラストにジャンゴが見せた馬のステップも実は難易度が高いのでは? 
馬たちの演技力も素晴らしい作品なのです。

 

振り返ってみれば、主役のジャンゴが
最も地味で目立たないという作品なのでした・・・・。
が、くだらぬ奴隷制度を
銃でメッタ撃ち、そしてダイナマイトで一掃。
なんだかそんな爽快さがあったのは確かです。
やたら重苦しく史実を書き連ねるよりも、心に訴えるやり方というのもあるものですね。

「ジャンゴ 繋がれざる者」
2012年/アメリカ/165分
監督・脚本/クエンティン・タランティーノ
出演:ジェイミー・フォックス、クリストフ・ヴァルツ、レオナルド・ディカプリオ、ケリー・ワシントン、サミュエル・L・ジャクソン

アクの強さ ★★★★★
バイオレンス度★★★★★
皮肉度★★★★★
満足度★★★★☆