映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

CUT

2013年03月06日 | 西島秀俊
西島秀俊に魅せられて



            * * * * * * * * *

あれ?久しぶりの登場です。 なんで今作で呼ばれたかな?
なぜか最近西島秀俊さんが気になるのです。それでちょっと、色々見てみようかな?と。
彼のことは、もともとステキだなあ・・・とは思っていました。
たしか、あれですよね、「あすなろ白書」
まあ、そうなんですけどね。決定打は、NHK大河ドラマ「八重の桜」。
主人公山本八重のお兄さん役ですが・・・
あのもろはだ脱ぎシーンでしびれました・・・!
何やら不純な動機のような気もしますが。
いや、きっかけはなんでもいいじゃないですか。
それで、この「CUT」を見たらますます好きになりましたよ!



イラン出身、アミール・ナデリ監督による異色作です。
売れない映画監督の秀二。
兄からお金を借りていくつかの作品を作りましたが、全く商業ベースに乗らず、
やむなく自主上映会を開いたりして暮らしている。
「かつて映画は完璧な芸術であり、同時に娯楽でもあった。
しかし、今は単なる娯楽でしかない!」
拡声器を持って街なかで演説をするのですが、雑踏を行き交う人々は誰も聞いてはいません。
そんなとき、彼の兄は借金を抱え、そのトラブルで殺されてしまいます。
元はといえば秀二のための借金ですが、その額およそ1200万円。
2週間で返さなければ命はない!とヤクザに宣言されてしまう。
うそ~、無理無理。絶対まともには返せないでしょ!
しかし、秀二は普通では考えられない行動を起こすんだな。
兄の痛みをわかちあい、借金を返済するため、
兄の死んだヤクザの事務所で「殴られ屋」をするのです。
サンドバック代わりに、俺を殴ってくれ。
でも一発ごとに金を払え・・・と。

相手は喧嘩っ早いチンピラでしょ。
寄ってたかってボコボコにされたら命にも関わるよ・・・
まさに。破れかぶれ、命がけの秀二の決断だ。
もちろんこちらからは手出しはなし。ひたすら殴られるだけ。
けれど、彼は間違いなく“戦って”いるんだよね。
そう、次第に彼にとってこの行動は、お金のためと言うよりは自分自身の戦いになっていくんだ。
商業主義に支配された現在の映画業界への怒り。
彼の未来を阻む元凶がそれだね。
秀二の鬼気迫る執念に、ただただ圧倒されました・・・。
実際口をぽかんと開けて見てたかも・・・。
一人の男の、“非戦”による命がけの戦い。
相手は直接に殴ってくる人物ではなく、自らの道に立ちふさがる巨大な“何か”だ。
すごかった・・・・!



そしてこの作品には、過去の巨匠といわれる監督たちへの愛もつまっているんだよね。
そう、作中では秀二の映画への愛、ということだけれど、
これはもちろん、アミール・ナデリ監督の映画愛でもある。
ラストに紹介されたベスト映画100選は、つまり監督にとってのベスト100なんだろうね。
芸術であって、娯楽でもあるということだな・・・。
見たことある?
いやあ・・・、私がせっせと映画を見はじみたのはこの10年くらいだし・・・。
お恥ずかしいけど、エンタテイメント中心だし。
題名を知ってはいてもみたことないもの、そして題名すらも知らなかったもの・・・、そんなのばっかりです。
映画ファンとはいえるかもしれないけど、映画通とはとてもいえる状態ではありません。
そうなんだよねー。でも単館系もきらいじゃないよね。
もちろん! ミニシアターで見る作品も大好きです。
しかし、こんなにいい作品なのに、なんでもっと大きな映画館でやらないのか・・・と残念に思うことも多いよね。
そうだよねえ・・・。
まあ、そういうわけでもありまして、西島出演作品とともにこの「CUT100選」も今後見ていこうと思うわけです。
全部レンタルで見ることができるかどうかもわからないけれど、まあ、出来るところまで・・・。
長丁場になりそうだね。
でも楽しみです!



CUT [DVD]
西島秀俊,常盤貴子,菅田俊,でんでん,笹野高史
Happinet(SB)(D)


「CUT」
2011年/日本/132分
監督:アミール・ナデリ
出演:西島秀俊、常盤貴子、菅田俊、笹野高史、でんでん
ファイト度★★★★★
満足度★★★★☆