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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「銀の匙 14」荒川弘

2017年09月04日 | コミックス
待ってました!!

銀の匙 Silver Spoon 14 (少年サンデーコミックス)
荒川 弘
小学館


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北国から遠く離れた場所でバイトをして過ごす駒場の新たな目標とは!?
御影が挑む畜産大学・推薦入試の模様&結果は!!?
初めての事業として八軒が挑むピザ販売会の成果は!!!?
そして、くっつきそうでくっつかない微妙な距離感のまま、
高校3年生も後半に差し掛かってしまった、八軒&御影の恋の行方は…!!!!!?

* * * * * * * * * *

ずいぶんしばらく続きが出ていないなあ・・・と思ったら
やはり前巻からはほぼ2年ぶりでした。
著者が「家族のサポート」をするということで、連載を中断していたとのことです。
いやでも、無事に本巻が出るところまでことは進んだようで、
良かった良かった・・・。


そこで本巻、いよいよ御影の推薦入試当日。
イヤ~緊張感が伝わりますね。
まあ、物語上なんとなく結果は予想できますけれど。


そしてその同日、八軒はばんえい競馬場で、ピザ販売会に挑みます。
売上は上々なれど、これが儲けにつながるためには
まだまだ工夫の余地ありというところなのですね。


いつもながら、皆からは評判の悪い"社長"の大川ですが、
しかし意外といい働きをするのです。ユニークなやつ!!
それで、その"社長"の発案なのですが、
八軒にまた新たな進路変更が?!
う~ん、そう来ましたか。
私、本作はそろそろ最終回に近づいているのでは?
などと思っていたのですが、
これはまだまだ目が離せない感じです。
肝心の駒場くんの動向も、本巻では伏せられたままですし・・・。
順調に次の巻が出ることを祈りつつ・・・。

「銀の匙 14」荒川弘 少年サンデーコミックス
満足度★★★★☆

「ダンジョン飯 5」九井諒子

2017年08月26日 | コミックス
生きて帰るまでが冒険だ

ダンジョン飯 5巻 (HARTA COMIX)
九井 諒子
KADOKAWA / エンターブレイン


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炎竜(レッドドラゴン)を倒し、ついに妹のファリンを救出したライオス。
ホッとしたのも束の間、彼らの前に、迷宮の主・狂乱の魔術師が現れる……!
果たして、ライオス達は生きて迷宮を脱出できるのか!? 
生きて帰るまでが冒険だ! 食事もストーリーも怒涛の第5巻!


* * * * * * * * * *

さて、新刊です。
前巻でようやくライオスの妹ファリンを救い出したところでしたが、
迷宮の主・狂乱の魔術師とやらが現れて、再び見失ってしまいます。


これまで本作のストーリーはワリと単純だったのです。
ファリンを救出するために、魔物を倒しながら、
そして時としてそれを食しながら、地下の迷宮を下へ下へと進んでいく。
しかし、前巻あたりから話が複雑になってきまして、
本巻でも新たな登場人物やら新たな挑むべき敵がドッと登場。
正直、私にはわけがわからなくなってきました。


このように雑誌連載しながらコミックが追加されていく状況で、
初めの方はとても楽しみに読んでいたのだけれど、
途中から登場人物が入り組んで
(人物の見分けが難しい・・・みんなおんなじ顔してるから・・・)
めんどくさくなって、どうでも良くなって
読むのを止めてしまうというパターンが時々あるのです・・・。
進撃の巨人とか・・・。
それでこの巻の途中あたり、この話も同じ運命を辿りそうな、
いや~な予感がし始めたのですが、
マルシルが石化して解けたあたりから少し気を取り直しました。
始めのうちはこんなに連載が長くなる予定ではなかったのでしょうね。
それが意外と人気が出たから登場人物を増やして話を伸ばそう・・・というのがミエミエ。
それで成功する場合もあるけど、ダメになる場合も多いと思います。
ナントカ頑張って、この拡張期を乗り切って充実させてほしいと願っておりまする・・・。


そう、「生きて帰るまでが冒険だ!!!」
この分ではまだまだ帰れそうにありません。


「ダンジョン飯5」九井諒子 カドカワハートコミックス
満足度★★★☆☆

「ポーの一族 春の夢」萩尾望都

2017年07月29日 | コミックス
何のために彼らは“在る”のか・・・

ポーの一族 ~春の夢~ (フラワーコミックススペシャル)
萩尾 望都
小学館


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名作「ポーの一族」40年ぶりの新作続編!
不朽の名作「ポーの一族」から40年。
ついに新作の続編がコミックスに!!
永遠の時を生きるバンパネラ(吸血鬼)であるエドガーとアランは、
1940年代戦火のヨーロッパ、
イギリス郊外でナチスドイツから逃れてきたドイツ人姉弟と出逢う・・・
そしてその出逢いが新たな運命の歯車をまわすーーー

* * * * * * * * * *

本巻の発売前に、私は予習として久々に「ポーの一族」を読み直していました。
40年ぶりの新作・・・。
まさか今頃になってエドガーやアランと再開できるとは。
私の持っている本はもうすっかり紙も変色して黄ばんでおり、
いかにも年代物です。
でも、これだけは絶対に捨てることはおろか、
BOOK OFFに売り飛ばすなどとは思いもせず、
ずっと手元においてありました。


さて本巻、時代は第二次大戦中のイギリス。
作中では戦火の描写はありませんが、
私はちょうどこの時コニー・ウィリスの「ブラックアウト」を読んでいて、
まさに時代が重なりました!!
本作に登場するブランカという少女はユダヤ人で、
ドイツから難を逃れてイギリスにやってきていたのです。
その少女がエドガー、アランと出会う。


本作は、これまでの「ポーの一族」の中のほんの一つのエピソードなどではありません。
バンパネラという謎の生き物、いえ、生き物ではないですね、
謎の"存在"の秘密にも少し触れながら、
また新たな仲間を得て今後につながっていく、
全体の中でも根幹的なパーツです。


"バンパネラ"にも、各国いろいろな系統があるようで、
今回登場するファルカはスラヴ系で800年も生きているらしい・・。
そして、超能力的な力を持ち合わせてもいて、なかなか心強いやつです。
しかしそんな彼もまた、時にその800年前の心の傷が今もまだうずくというあたり・・・、
不老不死の残酷さが浮かび上がる気がします。


それからちょっとショッキングなシーンが。
エドガーが怖い顔したオバサンに陵辱されている・・・(ToT)
いえ、陵辱という言葉は言い過ぎで、
気(エネジ―)を与えていたのですが・・・。
不老不死とはいえ、バンパネラもきちんとエネジーを補給しないと、
次第に劣化していくもののようです。
キング・ポーの血を引くエドガーは、
仲間たちに時々自身のエネジーを分け与える義務を課されているのです。
孤独ではあるけれど自由・・・そう思っていた彼らの生活ですが、
人の世のしがらみ以上の制約、不自由さ。
一体何のために彼らは"在る"のか・・・。


私、ポーの一族の新作と聞いたときには、
この“現在”を生きるエドガーを想像してしまいました。
もし今もなお、エドガーがいるとしたら、どんなでしょう。
こんな風にSNSが張り巡らされたなかで、
彼らが生きていくことは可能だろうか・・・?
古い伝説やロマン、そうしたものと、このICTの発達した現代は融和できるのか、
そんなところを見てみたかったのです。


萩尾望都さま、次にはぜひそういうストーリーを・・・。

「ポーの一族 春の夢」萩尾望都 フラワーコミックススペシャル
満足度★★★★★

「信長協奏曲15」石井あけみ

2017年05月12日 | コミックス
ますます先が読めない

信長協奏曲(15) (ゲッサン少年サンデーコミックス)
石井あゆみ
小学館


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主君のため…竹中半兵衛決死行!

荒木村重謀反!!
反織田勢の機運が高まる中国方面の戦況を
裏で操るは、将軍・足利義昭。
そんな義昭と秀吉を結ぶ意外なきっかけは…!?
片や、秀吉に疑いの目を向ける竹中半兵衛の元に
とある情報が転がり込み…!
戦国に、思惑錯綜する第15巻!!


* * * * * * * * * *

いよいよ、ときが迫ってきた感じの第15巻。
竹中半兵衛が、亡くなります。
それも病床にて、ということではなくて・・・。
竹中半兵衛、そして荒木村重の謀反とくれば、
ここにはぜひ黒田官兵衛に触れてほしいところなのですが、
残念ですが本作中では全く触れられていません。
人質の官兵衛の息子を殺すようにと信長が命じるようなシーンは、
確かにこの物語にはそぐわないか・・・。


しかし、本巻を見るとますますわからなくなってきます。
本作の明智光秀=ホンモノの信長は、
あくまでもサブロー信長を守ろうとしているように見受けられます。
とすれば、本能寺の変で信長を襲うのは一体誰?
やがて天下を取る野望に燃える秀吉は、
結局私たちの知っているとおりの動きしかしない。
あ、ここでの石田三成と秀吉との関係のはじまりのシーンもなかなか興味深いですが。


いや、そもそもこのストーリーはやっぱり、
信長の死で終わってしまうのでしょうか?
その後の秀吉の死辺りまで連載を続けてほしいと思ったりして・・・。
そう、「秀吉狂詩曲(ラプソディ)」に変えて・・・。
待たれる次巻。

「信長協奏曲15」石井あけみ ゲッサン少年サンデーコミックス
満足度★★★.5



「海街diary8 恋と巡礼」吉田秋生

2017年05月09日 | コミックス
チカちゃんて女の子なんだ

海街diary 8 恋と巡礼 (flowers コミックス)
吉田秋生
小学館


* * * * * * * * * *

家のゴミ箱で見つけてしまった妊娠検査薬のことを誰にも相談できず、
気持ちが落ち着かないすず。
そんなとき、地蔵堂の軒下で眠っている千佳を見つけて、
彼女の秘密も知ってしまい・・・。
姉達には隠したまま、千佳とある願掛けに出掛けるすずだが、
そこで事件が・・・。
そして姉妹それぞれの恋が、大きく動き始めて!?


* * * * * * * * * *

海街ダイアリー、
本巻はこれまで脇役的立場に甘んじていた3女チカちゃんに、
いよいよスポットが当たります。
妊娠が発覚したチカ。
お相手は、もちろんあのアフロ店長。
しかし彼は今ヒマラヤに行っており、チカは一人悶々としているのです。
すずだけがそのことを知っているのですが、
誰にも言わないでとチカに固く口止めされてしまいます。
しかし、実際そのことが広まったのはあっという間。
姉妹や、おなじみの人々、そして当の店長にも、
またたくまに伝わってしまいました。
一旦帰国していた店長がチカの元を訪れます。
「結婚してください。」
おー、なんのバリエーションもない直球勝負。
いや、そこがまたいい。
近頃すっかり涙腺が緩んでいる私、この本を読むと涙が滲んで仕方がありません。
すっかりこの4姉妹の親戚のおばちゃんのような気分になっています。
アフロを返上した店長とチカちゃんに、幸あれ!!


思うに、本巻87ページのシーンが、双方アフロヘアだったら
ものすごく絵にならないと思うので・・・よかった、よかった(^_^;)
チカちゃんの妊娠、結婚と、すずの来春からの新生活、
そして幸と佳乃のそれぞれの恋。
まもなく、香田家に大きな転機がやってきそうです。

「海街diary8 恋と巡礼」吉田秋生 小学館フラワーズコミックス
満足度★★★★★

「ダンジョン飯4」九井諒子

2017年04月20日 | コミックス
ついに炎竜と対決

ダンジョン飯 4巻 (ビームコミックス)
九井 諒子
KADOKAWA


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ついに炎竜(レッドドラゴン)のいる地下5階に
たどり着いたライオス一向。
鉄をも弾く真っ赤な鱗と、骨まで灰にする炎を吐く強敵を相手に
ライオスは、命をかけた作戦を決行する……!
妹・ファリンは救えるのか? 
そして、竜の肉を喰うことはできるのか!?
腹ペコダンジョンファンタジー、激闘の第4巻!

* * * * * * * * * *

本巻、ライオスたちがたどり着いたのは、
この旅の目的である炎竜のいる地下5階。
炎竜に呑まれてしまったファリンを、なんとかまだ形のあるうちに取り出して、
再生の魔法をかけなければなりません。
ということで、この巻は今までよりかなりシリアスで、あまり遊びがないのがちょっと残念。
でもセンシは料理だけでなくメンタルでも、とても頼りになります。
最後の最後、ここ一番というときに、

「ライオス、もうわかっているだろう?
ここでは食うか食われるか。
必死にならなければ食われるのはこちらだ。
腹をくくれ!」


檄を飛ばすセンシの言葉に、皆の気持ちが引き締まりひとつになる。
そして、ライオスの最後の作戦とは・・・!!
う~む。
身を切らせて骨を断つ・・・。
怖わ・・・!!
そしてまた、禁断の黒魔術も登場して・・・
旅の目的は達せられるのでした・・・。
とすれば、この話はこれで最終回?
と思ったのですが、まだ続くみたいです。
乞うご期待。

「ダンジョン飯4」九井諒子 ビームコミックス
満足度★★★★☆


「レベレーション-啓示ー2」 山岸凉子

2017年01月28日 | コミックス
「王」を言い当てるジャンヌ

レベレーション(啓示)(2) (モーニング KC)
山岸 凉子
講談社


* * * * * * * * * *

山岸凉子さんのジャンヌ・ダルクの物語、第2弾です。
前作ではいよいよ故郷の村を離れるジャンヌ、というところまででしたが、
本巻は、シノン城に赴き、シャルル王太子に対面。
そしていよいよ戦場となるオルレアンに出発する直前までを描きます。


通常、ただの田舎娘が王に「兵を貸してほしい」などと言っても
取り合ってもらえないですよね。
そもそも王の耳まででそんな話が届くとも思えない。
しかしですよ、ジャンヌの「天啓を受けた」という強い自信と使命感、
そして諦めない心が周囲の人を動かしてゆくのです。
しかし、その人々の心をつかむためには、
何かしらの「奇跡的」なできごとが必要。
そこであの有名なエピソードがあるわけです。
城の広間に大勢集まった人々の中から、
一度もあったことのない「王」を言い当てる、という。


本作で、作者山岸凉子さんはハッキリとジャンヌが神からの啓示を受けた、
というふうに表現しています。
ジャンヌはそれに突き動かされるように行動してゆくわけですが、
でも、ジャンヌ自身が奇跡の力を発揮した、
というふうには描いていないのです。
彼女は巧みな観察力と洞察力で王を言い当てたのです。
決して神がかりではない。
強い精神力で人間はどこまで高みに登ることができるのか、
それを言っているようにも思えます。


ところで前作ではジャネットの村の司祭が、
「神の声を聞くという者は時々いるけれども、
そのものはたいてい『逃げたい現実』を持っている」
と言っていました。
それで私はこの人物が現代的思想の代弁者?というように思ったのですが、
なんと本巻ではこの人、
「そうかジャネット、やはり神の声は本当だったのだね。
主よ少しでも彼女を疑う心を持ったわたしをお許しください」
などと言っている。
う~む、この人まで騙してしまうジャンヌ。
一般庶民などイチコロ間違いなし。
髪を切り男装をしたジャンヌは実際カッコイイですしね。
どんどん人の心をひきつけていくジャンヌ。
次巻はいよいよ戦闘に突入でしょうか。
早くも、続きが待ち遠しい。

「レベレーション-啓示―2」山岸凉子 講談社モーニングコミックス
満足度★★★★☆


「信長協奏曲14」 石井あゆみ

2016年10月24日 | コミックス
ひとときの花

信長協奏曲(14) (ゲッサン少年サンデーコミックス)
石井あゆみ
小学館


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上杉謙信、死す!!
打倒信長の重要人物を失った足利義昭は、
新たな共謀者を得ようと、織田家武将からの寝返りを
画策する!毛利家の外交僧・安国寺恵瓊の助言のもと、
標的となったのはあの人物…!!
緊張感漂う情勢の最中、織田家内ではサブローの思いつきに
より再びあのイベントが開催されて…!?


* * * * * * * * * *

信長協奏曲の新刊です。
やはりつくづく思うのは、映画化されたものに比べて、
こちらのストーリーのなんと広くて深いこと。
秀吉、蘭丸、おゆきとその周辺の人々がしっかり描写されています。


本作は、上杉謙信が亡くなった、というところから始まります。
これが1578年。
本能寺の変が1582年なので、残された時間も少なくなってきました。
信長は天下統一の夢はまだ果たせず、中国攻めに苦慮。
そんななか、荒木村重の謀反が伝えられたりもする。
(あ~、黒田官兵衛さ~ん(T_T))
という、厳しい状況の中、突然サブロー信長が
柴田勝家率いる越前の陣中に現れて、すもう大会を催します。

「皆さんたまにはリラックスしてね~」

というサブローの心遣い。
リラックスどころか常以上に燃えてしまっている皆様ですが。
お茶々が子どもの部に出場して、男の子に勝ったりしてます。
この先ますます深刻になっていくストーリーの、一時の花。
良いシーンでした。
それにしてもこの中ではまだ明智光秀の動きは特になし。
どうなっちゃうのでしょうねえー。

「信長協奏曲14」 石井あゆみ ゲッサン少年サンデーコミックス
満足度★★★★☆


「ダンジョン飯 3」 九井諒子

2016年08月22日 | コミックス
絶妙なバランスで保たれる生態系

ダンジョン飯 3巻<ダンジョン飯> (ビームコミックス(ハルタ))
九井 諒子
KADOKAWA / エンターブレイン


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地下4階は、強敵揃いの水のフィールド。
人魚、ウンディーネ、大ガエル--
水の下から急襲してくるモンスター達をライオス一行はどう倒す? 
どう食べる!? 
かつての仲間・ナマリも登場し、物語が大きく動く第3巻!


* * * * * * * * * *

待望の第3巻です。
前巻に引き続き、水の階層地下4階。
水の階層だけあって、魚介祭り!となっていますよ。
もう、さすがのマルシルも、モンスターを食すことにほとんど抵抗がなくなっている様子。
・・・とはいえただ一つのタブーは残しているようなのです。
それは、亜人型には手を出さないということ。
つまり人と似た形のものは食べない。
それで、「人魚」はどうなのだ、という話になったりします。
さすがに、ヒトを食べてはまずいか・・・。


それから、この地下の魔物に満ちた迷宮も、
絶妙な食物連鎖で生態系が維持されていることがわかります。
だから、むやみと殺しすぎてはいけないと、センシは言う。
食に関することなら実に博識のセンシなのですねえ。
モンスターはただヒトを倒すためにいるのではなくて、
自分たちなりの秩序の中で生きているということか。
では、そもそもこのダンジョンがどのように発生したのか?
知りたいところです。


巨大なイカ・タコの合体のような"クラーケン"は、
さぞかし食べがいのあるごちそうのように思えるのですが、
残念ながらその身はエグみがひどくて、とても食べられたものではなさそう。
しかしなんと、センシはそこに寄生していた寄生虫を蒲焼きに調理してしまう。
ゲゲゲ・・・。
恐るべし。


ところでこのライオス一行は、ライオスの妹を救い出すために
ダンジョンの旅をしているわけですが、
これまでその妹ファリンのことにはほとんど触れられていませんでした。
本巻にはようやく過去のエピソードとしてファリンが登場。
マルシルと親しかったということで、
だからこんなに頑張っているというところもやっと納得ですね。
そのマルシルも、魔力が弱まり、一時は戦線離脱か?というところまで行ったのですが、
なんとか回復できたようです。


続きが待たれます。


「ダンジョン飯 3」九井諒子 ビームコミックス
満足度★★★★☆

「信長協奏曲13」 石井あゆみ 

2016年02月11日 | コミックス
どのような時の神の意図が・・・?

信長協奏曲 13 (ゲッサン少年サンデーコミックス)
石井 あゆみ
小学館


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映画版の「信長協奏曲」も公開中。
TVドラマも見ていましたが、面白くはあったものの原作とはほとんど別物。
ラストはとても気になりますが、
でも見るのはDVDでもいいかなあと・・・。


そこでやっぱり、原作ですよね!! 
コミック味を活かしつつ、笑えるシーンもあるけれど、
なかなか鋭いところを付く、読み応えたっぷりの本なのです。


本巻ではまず、松永久秀の最期が描かれます。
斎藤道三に松永久秀、サブローと同じく未来からやってきた彼らが、
ついに未来へ戻ることなく、この時代で命を落としてゆく。
さすがにノーテンキなサブローもちょっぴり思うところがあったりします。
どういう時の神の配剤でこんなことになってしまっているのでしょうね・・・。
一方もう一人の未来からの旅人、黒人の弥助は、
一人旅に出ることにし、信長の元を去ります。
実はこの人物の先行きこそがこのストーリーの意外な展開に繋がるのではないか・・・?
などと思うのですが。


さて、どうも明智光秀と信長の顔がそっくりのようだ・・・と、気づいている3人に、
二人は事情を明かしてしまいます。
蘭丸くんと、おゆきちゃん、そして竹中半兵衛。
でも、この明智光秀こそが正真正銘の信長であるということを知っているのは、
おゆきちゃんだけです。
ミッチーの方はやはり、信長に嫉妬して彼に離反しそうな気配は見えないのです。
どうしてここから本能寺の変に繋がるのか、未だに見えてきません。
簡単に手の内は見せない、著者の目論見が心憎いですね。
本巻のラスト、上杉謙信の死が天正6年。
本能寺の変は天正10年。
いよいよその時が近づいています。

「信長協奏曲13」 石井あゆみ ゲッサン少年サンデーコミックス
満足度★★★★☆

「あの日の青空 海街Diary7」吉田秋生

2016年01月26日 | コミックス
新展開、それぞれの恋。

海街diary 7 あの日の青空 (flowers コミックス)
吉田 秋生
小学館


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映画「海街Diary」の評判も良かったようで、何よりでした。
原作のイメージそのままに、楽しませてもらいました。


さて、原作の方の最新刊です。
本巻では、これまでいつも脇役的存在の3女・千佳ちゃんにもスポットが当たります。
彼女の想い人、スポーツ店のアフロ店長こと浜田が、ネパールへ行ってしまうのです。
登山ではないので遭難の心配はありませんが、
そこで山の空気を吸い、登山仲間たちと会うことで、
日本に帰らなくなってしまうのではないかと、彼女は心配しているようなのです。
が、さらにその上・・・!! 
この千佳の秘密を偶然知ってしまうのが、すず。
さあ、どーする!?
・・・って、この結果がわかるのは次巻ですね。
ひゃ~、待ち遠しい。


さて、千佳ちゃんのこともさることながら、
長女・幸と次女・佳乃の恋にも変化が訪れます。

「もうわかってると思うけど、おれはあなたが好きです。」
まっすぐに幸への思いを告げる井上。

これまで胸の奥にしまいこんでいた苦しみを佳乃に打ち明け、
「ぼくの・・・そばにいてくれませんか」
そっと告げる坂下。

いいですねえ、どちらも海岸で。
鎌倉っていいなあ~。


ですが、本巻で私が一番ジーンと来たのは、すずと風太のシーン。
静岡の高校の女子サッカー特待生の声がかかったすずは、
せっかく馴染んだ今の家の暮らしから離れることに不安を感じているのです。
けれど、そんなすずを風太はそっと後押しする。

「おまえがどこで暮らしたって、お姉ちゃんたちがおまえのお姉ちゃんなのは変わんないって」
もう気づいているだろう、と。

本当は地元の高校に一緒に通いたいと、風太は思っているはずなのですが、
偉いぞ、風太!! 
こんなやつだからこそ、すずも彼を好きなんですよね。


ということで、この展開、まもなくの「最終回」が射程圏内のようなのです。
それはかなり残念な気がするのですが・・・。
とりあえずは次巻を待ちましょう。

「あの日の青空 海街Diary7」吉田秋生 小学館フラワーコミックス
満足度★★★★★

「レベレーション(啓示)1」山岸凉子

2016年01月14日 | コミックス
天啓とは・・・?

レベレーション(啓示)(1) (モーニング KC)
山岸 凉子
講談社


* * * * * * * * * *

山岸凉子さんの新しい物語が始まりました。
「レベレーション」は、英仏の100年戦争時にフランス軍を率いて戦ったという、
ジャンヌ・ダルクを描いた作品です。
バレエでも怪奇ものでもなく・・・というのは意外な気がしますが、
考えてみたらあの「日出処の天子」も、歴史上の人物を描いたものでしたね。
この表紙のように、強く刺すような目をした少女がどのように生きていくのか、
しっかり見届けたいと思います。


冒頭にまず、いきなりジャンヌの処刑シーン。
ずっと自分に「啓示」を与えてきた神によって、自分は必ず解放される、と
これまで信じてきたジャンヌだったのですが、
未だに"救いの手"はなく、刑場に引き立てられている。
では、まだ幼いといえるほどの、あの日見た"あれ"は何だったのか。
彼女の束の間の回想が、ストーリーとなって語られていきます。


1400年代のフランス。
ジャンヌは片田舎の貧しい農家の家に生まれました。
当時ほとんどの農民がそうであったのと同様、字を読むこともできません。
13歳のその日、彼女は突然に眩い光を浴び、ある声を聞く。
そんなことが何回かあったのです。
はじめのうちは、誰に言っても信じてもらえないと思い、黙っていたのですが、
空に天使の顔を見て、
「フランスへ行け。王を助けよ。」
という声を聞くようになってからは、自分の役割を確信していきます。
とは言え、女性が戦争へ行くなどとは誰も考え付きもしない、
そういう時代です。
周りの人は気が狂ったと思うか、ばかにするかのどちらか。
それでも神の「啓示」を受けたと信じる彼女は、
自分の意志を貫き通し、ついに故郷を後にし旅立つ、と本巻はそこまで。


中世。
「ルネサンス」期に多少の科学的思考が芽生える時代以前のこと。
杉浦日向子さんの描く江戸以上に、
神や悪魔、迷信に囚われていた時代。
だから「天啓」だと言われればそれは確かにあったのだろうし、
でも逆にそれは"異端"と呼ばれる危険なことでもあったのでしょう。


しかし、著者はここに一人、現代に近い思考をする人物を登場させます。
それは教会の司祭。
彼はジャンヌに警告します。

「神の声を聞いたという者に過去に何回か会ったけれども、
彼らは皆"逃げたい現実"を持っていた。
もしお前がそうではないというのなら、
それでも人はその"声"に心を囚われてはならない。
それをすれば、お前の身が滅びる・・・。」


神の「天啓」というのは、実は当人の精神の変調なのではないか・・・という、
現代的見地を彼が代弁しているわけですが、
物語はそれについての答えを出しません。
多分最後までそれはないのでしょう。
私たちは、彼女がどのようにそれと向き合うのかを見守るのみ。
今後の展開が楽しみです・・・、
と言うか、結末はわかっているのですが。


「レベレーション(啓示)1」山岸凉子 講談社モーニングKC
満足度★★★★☆

「百物語 上の巻・下の巻」 杉浦日向子

2016年01月07日 | コミックス
人々と、怪異の共存

百物語 上之巻
杉浦 日向子
小池書院


百物語 下之巻
杉浦 日向子
小池書院


* * * * * * * * * *

楽しみにしていた杉浦日向子さん作品を入手。
舞台はやはり江戸時代、
あるご隠居さんが、訪れる人から一つずつ奇妙な話を99話聞くという趣向です。
恐ろしいというよりも、奇妙で不思議という感覚に近いでしょうか。


例えば、早々の第2話。
ある人の子供の頃の話。
家の障子の決まった場所に人の顔のようなものがいつも現れるというのです。
それが見えるのは夜だけ。
障子を張り替えてもいつも同じマスのところにそれは現れる。
本人はそれを怖いと思ったことはないそうなのですが、
ある時ふといたずら心で、その顔を墨でなぞってみた。
すると翌日、すぐにそのマス目は切り取られて
そこだけ新しい紙が貼られたのですが、その日以来、顔は二度と現れなかった・・・と。


ただこれだけのことで、別に怖くはない。
が、それにしても、一体何のためにそれは現れたのか。
どうして。
何者の意志で・・・?
と考えると薄ら寒い気がしてきます。


理屈では言い表せない、全く人の思考の外にそれらはあるらしい。
全くわからない、未知のものだから「怖い」のでしょうね。
恨みつらみで現れる幽霊なら、まだ理解の範疇ではありますが・・・、
それはこの本に語られるような多くの「奇妙なもの」の
ごくごくまれな一現象であるような気がします。


考えてみると、電気のない江戸の夜は真っ暗闇。
月明かりと、家の中では僅かなろうそくや行灯の明かりがあるだけ。
このような中では、人々と怪異は常に同居していたのかもしれません。
ある話をした客は、
「まあ、いつもではありません。たまにですよ。」
とあっけらかんとして言う。
夜の闇の中に、何かわからないものが潜んでいて、
それは人の理屈では考えられないいたずらや悪さをする。
わけがわからないけれども、それは「ある」。
人々は身を持ってそれを感じていたのかもしれません。


ところが現代、夜の闇がどんどん追いやられてしまっています。
それとともに、この奇妙なものたちも、住むところをなくしてしまっているのかもしれません。
まさに、絶滅危惧種ですね。


本作の魅力はまた、登場する市井の人々の日常が描かれているところ。
お侍さん、女将さん、お女中さんに遊女。
ご隠居さんにお坊さん。
何者かに取り憑かれたり見たりすることに
何の差別もきっかけもありはしません。
因果応報もなし。
誰のところへもある日不意に、それはやってくる。
だからこそ、ちょと怖いのですけれど・・・。
こういうのを見ると、普段読んでいる時代小説も一段とイメージが膨らみやすい気がします。

「百物語 上の巻・下の巻」杉浦日向子 小池書院
満足度★★★★★

「合葬」杉浦日向子

2015年10月21日 | コミックス
文庫版は辛いよ・・・

合葬 (ちくま文庫)
杉浦 日向子
筑摩書房


* * * * * * * * * *

江戸の終りを告げた上野戦争。
時代の波に翻弄された彰義隊の若き隊員たちの生と死を描く歴史ロマン。
日本漫画家協会賞優秀賞受賞。


* * * * * * * * * *

本作は映画を見てから興味を持ってみました。
著者は杉浦日向子さん。
漫画家であり江戸風俗研究家であり、エッセイストでもある。
才能あふれる方ですが2005年に46歳で病のため亡くなっています。
本作は1984年日本漫画協会賞最優秀賞を受賞しています。


・・・と、わかったようなことを書いていますが、
実のところ私はこれまでに著者の本は読んだことがなく、
よく知らなかった、というのが正直なところ。
「ガロ」で描いていたのですね。
いやはや、自分でコミックファンだとか言っていながら
実は「ガロ」は全然読んでいなくて、
なにがコミックファンだよ、インチキじゃん、
ということがすっかり露呈してしまいますね・・・。


そうそう、つい最近読んだ梨木香歩さんのエッセイ「不思議な羅針盤」の中で
杉浦日向子さんのことに触れていまして、
同年代なのに、惜しい方を亡くした
というようなことが書かれていました。
そういえば最近見たいと思いながら見逃していたアニメ「百日紅」も
この方の著作じゃありませんか!!
何やら今更ですが、運命が私に杉浦日向子を読め!
と促しているようであります。
もっといろいろ読んでみたい。


余計なことばかり書いてしまいました。
さて、本作、映画も良かったですが、
原作はさすがにもっとディティールまでも見どころがあって、堪能しました。
・・・が、しかしです。
私が見たこの文庫版。
中高年にはキビシイ!!
じ、字が・・・細かくて辛い…(T_T)
せっかく、他の作品も読む気満々なのですが、
文庫版は無理!!


あー、つい本題からそれますね。
ストーリーは映画版の方を参考していただくことにして、ご勘弁を。
→映画「合葬」


武士といえば、敵討ちや切腹は日常茶飯事あたり前、
みたいな気がしていましたが、
本作、いきなり柾之助が敵討ちを命じられ、逃げ出す。
写真を撮るシーンでは
当時の写真は写すのに時間がかかるので、
顔が動かないように首を支える道具があったりする。
展開が私達の知っている「江戸物」とは一線を画していて、
なんとも興味深いのです。
なんだか嵌りそうです。
それにしても文庫版がダメとなると古本をあたったほうが良さそうですね・・・。

「合葬」杉浦日向子 ちくま文庫
満足度★★★★☆

「ダンジョン飯2」九井諒子

2015年09月02日 | コミックス
それぞれの個性炸裂、パワーアップ

ダンジョン飯 2巻 (ビームコミックス)
九井 諒子
KADOKAWA/エンターブレイン


* * * * * * * * * *

餓死の恐れと隣り合わせで、ダンジョンを進むライオス一行。
地下3階で彼らを待っていたのは、
ゾンビに幽霊、生ける絵画や、ゴーレムといった食べられないモンスターばかり。
この未曾有の危機を、どう乗り越えるのか!? 
知られざる魔物の生態と、食への活用法が、いま明かされる! 
空腹と戦う、全てのダンジョン攻略者に捧ぐ。
はらぺこダンジョンファンタジー第2巻!


* * * * * * * * * *

待ってました! 
「ダンジョン飯」の第二弾。
前巻よりも更に面白くなっていると思います。
というのも、本巻ではこのライオス一行のチームメンバー
それぞれの個性がとても豊かに描かれてきているから。


何と言っても、ダンジョン飯の達人・センシはとてもユニークで頼りになります。
ゴーレムを耕して野菜を作ってみたり、
パンを作ってオークと親しくなったり、
宝虫のこともよく知っている。
実際、センシなくしてこの旅は成り立ちません。
凄いなあ・・・。
しかし、彼が完璧かというとそういうわけでもない。
本巻ラストの水棲馬(ケルピー)では、思い込みで大変危険な目に合いますよ。
そんなところも皆のチームワークで乗り切るようになってくる。
大変頼もしいメンバーなのです。
それにしてもセンシのふんわりツヤツヤおひげも楽しい!!


もともと一番食い意地の張っていたのは、ライオスですね。
彼は「生ける絵画」の中に入り込んで、
絵に描かれたごちそうを食べてみようと目論むのですが・・・。
さすがにチームの他のメンバーはそこまで物好きではありません。


本作で一番おいしそうだったのは、『ミミック』です。
そう、あの宝箱の中に潜んでいる・・・。
これが、カニとかエビ系で、ゆでたのがなんとも美味しそう!!
しかもこの大きさ。
これは絶対にイケます!!


そしてまた、宝虫とミミックの捕食関係、生態系が
なんともうまく出来ていて感心してしまう。
モンスターといえども生きるのに必死ですね。


チルチャックの意外な年齢もまたおかしい!!
水の地下4階。
この先の旅もまだまだ楽しみです。

「ダンジョン飯2」九井諒子 ビームコミックス
満足度★★★★★