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セクシュアリティ・科学・社会・映画

『ムーシェ』

2006年12月18日 03時26分21秒 | 映画雑感
メキシコにフチタンというところがあります。ゲイやトランスジェンダーな人びとがそれを隠すことなく街の風景に同化しながら生きている。そんなステキな街のドキュメンタリー映画をみました。

 なんともラテン的だ。
 時はゆっくりとすぎ、ことあるごとに踊りだし、お祭りにせいを出す。ゲイ同士でも、地元の人とも、小競り合いがないわけではないが、おおむね認められて街でもゲイも女装も当たり前の風景となっている。
 エイズなどの逆風は、予防啓発活動を積極的に行うことで、いつの間にか味方につける。小さな町で学歴のない職人も、学校の先生も、おじいさんもゲイとして暮らしている。日本の暮らしから考えると貧乏だけど、一年のめりはりがあり、日々の踊りがある。みんなそこそこ満足感を得ているようだ。
 このドキュメンタリーの登場する女装をはじめとするゲイの肖像は、アメリカのドラァグクイーンを描いた「パリ 夜は眠らない」から「プリシラ」に至る社会に敵対する事を辞さず、ゲットー化する危険性を押してもビジビリティを上げるようとする表現でも、「トーチソング・トリロジー」から「フローレス」に見られるような、都会の片隅でしか生きていけない孤独な人間の表象でもなく、町のお祭りを盛り上げともに楽しむツールとして女装を活用する。そこには実存が自然に受容され、町の風景に同化していく幸福な姿がある。

 女装をはじめたころの僕の夢を思い出した。
 地方の小さな町の秋の公民館発表会みたいなイベントで、おじいさんの詩吟や、おばあさんたちの大正琴や、ママさんコーラスにまじって、女装のショーをするっていうことだ。この街では、まさにそんな姿が現実になっている。

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