シドニー・ルメットというと、映像的に確たるスタイルを持たないにも関わらず、アメリカ映画界で長年、佳作を作り続けてきた映画作家だ。アメリカといってもハリウッドよりはニューヨークを拠点に活動するいわゆる「ニューヨーク派」の一人である。
彼の45作目となる本作(ワーカホリック!!)で、彼は、人間の醜悪さから目をそらすことなくじっくり見つめた。
たとえばタランティーノやコーエンブラザーズであれば乾いた表現 . . . 本文を読む
MILKといっても牛乳とは関係ありません。
ハーヴェイ・ミルクの伝記映画。
こちらが完成して、11月からアメリカで公開だそうです。
こちらがHP。予告編やってます。
ハーヴェイ・ミルクというともちろんゲイのサンフランシスコ市長です。伝記のドキュメンタリー映画はあるのですが、それも感動的。ちなみに、『セルロイド・クローゼット』のロブ・エプスタイン監督も共同監督の一人です。
今回製作さ . . . 本文を読む
実に滑稽な映画である。
とはいえ、たとえばブニュエルが確信犯として滑稽であったのとは事情が異なる。チベットから帰ってきた娘の家庭教師をしていたところ、情が通じ目を合わせ、詩を交し合ったという「罪」で鞭打ち500回に処せられるのを皮切りに、現代日本に住む私たちの感受性では、信じられない「罪」が次から次へと繰り出される。
なにかほとんどSFのような荒唐無稽な世界の映画なんだろうと思った瞬間、 . . . 本文を読む
仕事が忙しかったり、風邪引いたり、飲み会あったりで更新してませんでした。
みなさん、おひさしぶりです。
この間、お友だちと『EARTH』っていう映画をみました。
総じて「地球ってうつくしいなあ~~!!」っていうもので、ネイチャー・ドキュメンタリー好きな人は見ておいて損はないと思うよ。「一体どうやって撮影したんだろう?」ってシーンもいっぱいです。でも、世界中駆け回りますので、どこのことやってるのか . . . 本文を読む
レズビアンものです。
そこはかとなく「ブロークバックマウンテン」のレズビアンバージョンですが、「ブロークバック」ほどいろいろ練りこまれていないし、事実をもとにしたという分、生っぽいです。
どこか空想の世界をみているような「ブロークバック」と、目の前で現実として展開する「中国の植物学者」。
一般的な映画のできとして見ると、やっぱり「ブロークバック」なんだろうけど、こちらはこちらで捨てがたい . . . 本文を読む
「シリアナ」「グッド・シェパード」も含め、CIA嫌いに磨きをかけてきたマット・デイモン君、ここまできたか、てな感じですよ。
だいたいが右寄りなハリウッドがこれだけ国家不信を表明するってことは、アメリカ世論も政府のやることにホトホト愛想をつかしてるんだろうなー。 巨大な貧困層を抱えて、戦争にいくしか仕事がないような状況の若者が大勢いて、ところがそこまでしても国からしたら使い捨てにすぎないんだよ . . . 本文を読む
ほとんどの人の生き様は到底かっこよさなどとは無縁で、時代の流れにただただ翻弄されながら流れていく。そんな中国のダムに沈む街を見据えたドキュメンタリー的なフィクショナルな映画である。
16年間音信不通の妻と娘を探しに来た50がらみの男と、2年ぶりに夫を探しに来た女の物語だ。物語とはいってもさしてドラマティックな展開があるわけでもなく、ジャンクー的な映画時間が悠々として流れていくだけだ。
こ . . . 本文を読む
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』をみました。
日本のアニメーションの技術はすごいですね。
エヴァンゲリオンのシリーズはいままでちゃんと見てなかったのですが、今回見てとても面白かった。面白かったので、テレビシリーズもいまごろになってはじめてみて見ました。
いまから12年前に作られた『新世紀エヴァンゲリオン』です。
いまから12年前というと、ぼくは大学院での研究生活で、心身ともに衰弱し果て . . . 本文を読む
もちろん『イレイザーヘッド』のころからその傾向はあったが、『マルホランド・ドライブ』から本気で追及をはじめ、『ストレート・ストーリー』のような”分かりやすい”作品を難なく撮って世間を安心させながらも、映像の本質へと向かおうとするデビッド・リンチ監督が、世間が理解を示すわけがないことなどはなから分かっているにもかかわらず自己表現を突き詰めようとした作品である。最先端を切り開こうとしたさくひんなどで . . . 本文を読む
巨匠です。
アルモドバル監督の描く女性たちの、なんとしたたかで細やかで図々しいことか。橋口亮輔やフランソワ・オゾンが描く女性たちは、図太く図々しいが、ゲイである彼らはその図太さを称揚するけれど、アルモドバルは女性の多面性を丁寧になぞりながらそのまま称揚する。肯定の度合いがより深く、より根源的だ。『オール・アバウト・マイ・マザー』でもそういったところはあったが、今回より徹底してきたと思う。
. . . 本文を読む
テーマは周防監督の『それでもボクはやってない』と同じであるが、物語のスケールが大きい。マイケル・ウィンターボトム監督は、社会の中で孤立し、抑圧されている人をしばしば描くが、この映画の主人公も『In This World』と同様、戦争で悲惨な目に会わされる。
アメリカは自由の国であり、そのために民主主義を貫いていることになっている。しかし、人種差別の問題一つ見ても分かるように、みんなが平等であ . . . 本文を読む
青年期に入るころ、自分がこれから入っていくであろう社会に、一方で反発し、一方で恐れを抱く時期がだれにでもある。そんな時期に、私は台湾という国で映画的な革命が起こったことを知る。
ホウ・シャオシェンによる『非情城市』や『戯夢人生』、アン・リーの『ウェディング・バンケット』、ツァイ・ミンリャン『青春神話』、そして決定打のようなエドワード・ヤン『枯嶺街少年殺人事件』 。
ヤン監督は、他の監督たちと . . . 本文を読む
恋愛をしていくうちに相手に対する欲情は磨り減っていく。
相手の男が自分に欲情しなくなってきている雰囲気を察知した女は整形をすることで、気をひこうと考える。
韓国の鬼才キム・キドクの『絶対の愛』は、あまりにも直接的な邦題だが、グロテスクなまでの愛を表現している。
絶対の愛などどこにもないがゆえに、求めてしまう。その滑稽なまでの行動。整形手術に狂奔する韓国において起こっているかもしれない、 . . . 本文を読む
前編は金子監督だってこともあり、劇場でみましたが、後編は見る気にならずビデオで鑑賞。
漫画は読まないのですが、漫画でも大評判となった、挫折経験のない優等生が全能感のとりこになる話ですね。
金子監督らしく、二転三転する物語。ですが、まぁ、予定調和です。
ほとんどすべてのシーンが誰かの想定の範囲内にある。
映画には脚本があり、すべて予定通りに進むと思っている人が多いかもしれませんが . . . 本文を読む
こちらで、『ドリームガールズ』と溝口健二を比べて書いているわけですが、まあ溝口と比べられるのは、現代の映画監督には荷が重い。溝口健二の時代には、「家父長制」が生きており、溝口は弱者に対して救済的な視線を投げかけはするものの、弱者の「自立」を目指すわけではなく、あくまでも家父長が救済する物語になっている。これは、当時の状況をよく現すだろう。そして、そういった家父長的な存在として君臨したのが、だれあ . . . 本文を読む