MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『行き止まりの世界に生まれて』

2020-09-12 21:00:24 | goo映画レビュー

原題:『Minding the Gap』
監督:ビン・リュー
撮影:ビン・リュー
出演:ビン・リュー/キアー・ジョンソン/ザック・マリガン
2018年/アメリカ

「ギャップ」を巡る葛藤について

 イリノイ州のロックフォードで生まれ育ったザックとビンとキアーはスケートボードを通じて知り合った仲で、ザックが最年長で2歳ずつ離れてビンとキアーという年齢構成で、ザックは22歳になって屋根職人になりニーナと結婚して子供も生まれたのであるが、DVが原因で離婚して、さらにコロラド州のデンバーで知り合った女性とロックフォードに戻ってくる。
 スケートボードに夢中になっていた時期を終え、自分で人生を切り開かなければならない時に、自分たちの親にされたようなDVは決してしないように思っていたはずなのに、ザックが妻に暴力をふるったことに2人は驚き落胆してしまう。
 結果的には黒人として厳しい人生を送っていたキアーが皿洗いから地道にキャリアを積んでデンバーでプロのスケートボーダーとして成功することになるのだが、スケートボードに詳しくないと原題の意味は分からないと思う。
 「ギャップ(gap)」とは「オーリ―(ollie)」と組み合わせて行なうスケートボードの乗り方で、ボードの後方に置いた脚に力を入れてボードを浮かせて行なうジャンプをオーリ―と呼び、ストリートなどでよく見られる縁石同士の間の段差のことをギャップと呼び、タイミングを見計らってオーリーと同時にギャップを飛び越えるのである。
 だから原題はスケートボード用語の意味で「ギャップに注意しながら」という意味になるのだが、若い頃思っていた理想と大人になって味わう現実との大きな相違にもギャップを感じるはずだから、2つの意味が重なっているのである。

HOW TO OLLIE GAPS THE EASIEST WAY TUTORIAL


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『ファナティック ハリウッドの狂愛者』

2020-09-11 00:59:55 | goo映画レビュー

原題:『The Fanatic』
監督:フレッド・ダースト
脚本:フレッド・ダースト/デイヴ・ビーカーマン
撮影:コンラッド・W・ホール
出演:ジョン・トラボルタ/デヴォン・サワ/アナ・ゴーリャ/ジェイコブ・グロドニック
2019年/アメリカ

ストーカーが逃れられない偏見について

 本作は興行的に大失敗しているのみならず、何故か批評家からも低評価で第40回ゴールデンラズベリー賞にノミネートされ、主演のジョン・トラボルタは最低主演男優賞を受賞してしまっているのだが、ここでは多少なりとも汚名挽回を試みてみたい。
 主人公のムースはハリウッドでストリートパフォーマーとして生計を立てているのだが、仕事仲間に観光客から財布を掏ることを提案されても拒み、パパラッチをしているリーアという女友だちもいる。つまりムースは根は悪い人間ではないのである。
 ムースが俳優のハンター・ダンバーの大ファンになったきっかけは幼い頃にシングルマザーの母親が他の男を家に招いている時に、テレビで見たダンバーが自分と同じような状況に置かれた主人公を演じていたのを見て共感したことで、それ以来、ムースはダンバーのようにハリウッドの片隅で頑張って生きてきたのである。
 ムースは年齢不詳なのだが、近所でサイン会をするダンバーについに会えるチャンスを得るのだが、実際に会ってみたダンバーは離婚による息子の養育などで問題を抱えているためなのかサイン会を訪れたムースに冷たい態度をとり、長年憧れていたダンバーの性格の悪さを認めたくないムースは、「本当」のダンバーを確かめるためにストーカーのような行為に走るのである。
 つまりムースの性格の良さも悪さもダンバーに影響されているのであり、実際のダンバーはムースの右指全てをライフルで吹っ飛ばし、右眼も失明させ、庭で家政婦が死んでいることにも気が付かない酷い男で、それをまるごと「コピー」したようにムースは狂気へ突き進んだのである。
 本作にはストーカーという存在を考える上で、重要な視点が含まれていると考える所以である。


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『青くて痛くて脆い』

2020-09-10 19:29:41 | goo映画レビュー

原題:『青くて痛くて脆い』
監督:狩山俊輔
脚本:杉原憲明
撮影:花村也寸志
出演:吉沢亮/杉咲花/岡山天音/松本穂香/清水尋也/森七奈/茅島みずき/光石研/柄本佑
2020年/日本

気がつかない「影響力」について

 「人に不用意に近づかない事」と「誰かの意見に反する意見をできるだけ口にしない事」の2つを信条にしている主人公の田端楓は大学に入学しても、その信条を貫いていたのだが、ある日、授業中に「みんなが平和を求めれば世の中は平和になる」と教師に意見している秋好寿乃を目撃し、その後何故か秋好に付きまとわれるようになって一緒に学食で食事をしたりするような関係になる。
 それぞれ学内で浮いた存在だった2人はやがて秘密結社サークル「モアイ」を設立して「世界を変える」ための運動を密かに始める。最初はフリースクールの手伝いをする程度の活動だったのだが、大学院生の脇坂が加わって3年後、「モアイ」は就活サークルと化しており、秋好はリーダーを務めているのだが、楓は関係を断っており「モアイ」に強い怨みを抱いている。
 本作の面白さは現実主義の楓と理想主義の秋好がお互いに影響を与え合って、結果的に秋好が現実路線に方向を変える一方で楓が、秋好や「モアイ」に対して「理想」を抱くようになり、さらに2人ともそのことに気がついておらず、「モアイ」のデータ流出問題に関する説明会前の会場で楓と秋好が差しで語り合うのだが、どうしてこうなってしまったのか2人とも説明がつかなくなっているのである。
 結局、楓にとっては自分が得意とする、決して描き込まない(つまり深入りしない)「パラパラ漫画」のような軽いフットワークこそ人間関係を上手くこなす最良の手段だったのであるが、このような若者の微妙な心理をよく拾い上げたと感心した。


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『事故物件 恐い間取り』

2020-09-09 00:46:03 | goo映画レビュー

原題:『事故物件 恐い間取り』
監督:中田秀夫
脚本:ブラジリィー・アン・山田
撮影:花村也寸志
出演:亀梨和也/菜緒/瀬戸康史/江口のりこ/MEGUMI/瀧川英次/木下ほうか
2020年/日本

「ラスボス」の「戯れ」の恐怖について

 関西を舞台としているためなのか、ホラー映画、つまり幽霊譚というよりも「おばけ映画」といった感じで、恐怖よりも笑いを誘ってしまっているのだが、それは具体的におばけのキャラクターの出現のみならず、クロちゃんやバービーなど人間であっても「おばけ」を思わせる出演者の存在も大きいと思う。
 しかし一度悪魔に憑りつかれたらお祓いも呪文も通用せず、もはや逃げきることができないというラストの余韻こそ本物の恐怖だったと思う。


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『狂武蔵』

2020-09-08 23:09:23 | goo映画レビュー

原題:『狂武蔵』
監督:下村勇二
脚本:灯敦生
撮影:長野泰隆
出演:TAK∴/山崎賢人/斎藤洋介/樋浦勉/原風佳/西明彦/山中アラタ/森本のぶ
2020年/日本

チャンバラの「純粋性」について

 本作を「時代劇」と捉えるならば、例えば、『雄呂血』(二川文太郎監督 1925年)の阪東妻三郎や『宮本武蔵 一乗寺の決斗』(内田吐夢監督 1964年)の中村錦之助(萬屋錦之介)を既に観ている者にしてみれば粗しか見いだせないのかもしれないが、「チャンバラ映画」と捉えるならば、途中で水分摂取や刀を取り換えたりしているものの、ワンカットの77分間、うまい具合に斬られることなく相手を斬り続けているチャンバラの生々しい「純粋性」は否定できないのではないだろうか。
 相手の名前が分からないのだが、宮本武蔵が石川五右衛門のような頭髪をしている相手に対して必ず頭を斬っているところが面白い。


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『僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46』

2020-09-07 00:28:39 | goo映画レビュー

原題:『僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46』
監督:高橋栄樹
撮影:上池惟考
出演:平手友梨奈/長濱ねる/菅井友香/小林由依/渡邉理佐/小池美波/齋藤冬優花/守屋茜
2020年/日本

「平手友梨奈観点」からの欅坂46について

 最初に印象的なシーンを挙げてみたい。「黒い羊」のMV撮影が終わった後に、メンバーたちが床に倒れている平手友梨奈のもとに駆け付けるのであるが、そんなメンバーたちのそばでただ黙って立ち尽くしたまま見つめているメンバーがいて、おそらくそれは鈴本美愉だったと思う。ここは象徴的なシーンで、グループの中で完璧にダンスをこなすメンバーの一人だった鈴本と、型を崩してでもエモーショナルに観客に訴えるパフォーマンスを得意とする平手との確執が現れているように思うのである(口にはしなかったが小林由依も平手には一家言あったようである)。
 しかし平手はデビューから頭角を現し、グループ最年少であるにも関わらず不動のセンターで、物おじせずに積極的に自分の意見を述べ、もはや「平手友梨奈 with 欅坂46」状態で、それはキャプテンの菅井友香も認めていた。例えば、乃木坂46のようなユルさがなく考え抜かれたパフォーマンスであるが故に、平手の代わりにセンターに立つということは「完成品」を見せられないという意味でプレッシャーがかかることは理解できる。そしてそんな平手の「天才」がメンバーのみならず平手本人も苦しめることになったのは不幸としか言いようがない。
 ところでプロデューサーの秋元康はそんな平手の感性を舐めていたような気がする。多作の秋元にとって一曲は「ワン・オブ・ゼン」でしかないだろうが、「不協和音」、「ガラスを割れ!」、「アンビバレント」、「黒い羊」という流れで散々煽るような曲を提供された平手の感受性は確実に追い詰められていたはずで、「黒い羊」の次にどのような顔をして「10月のプールに飛び込んだ」歌を歌えばいいのか分からなかったのではないだろうか。
 欅坂46のラストシングルとなる「誰がその鐘を鳴らすのか?」は今年の秋元康作品の中では一番良い曲だとは思う。

欅坂46 『誰がその鐘を鳴らすのか?』 from KEYAKIZAKA46 Live Online,but with YOU!


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『3年目のデビュー』

2020-09-06 22:58:33 | goo映画レビュー

原題:『3年目のデビュー』
監督:竹中優介
出演:佐々木久美/佐々木美玲/小坂菜緒/加藤史帆/斎藤京子/井口眞緒/柿崎芽実/長濱ねる
2020年/日本

「長濱ねる観点」からの日向坂46について

 日向坂46の母体だったけやき坂46が結成されることになったきっかけは欅坂46にイレギュラーで加入することになった長濱ねるを欅坂46の正式メンバーにできなかったことにある。
 けやき坂46の追加メンバーを募集して長濱を含めて12人のグループとなったのが2016年5月8日で、この時、けやき坂46は欅坂46のアンダーグループであったことは、長濱が2つのグループを兼任していたことから推察できる。つまりいずれは欅坂46とけやき坂46は一期生と二期生という扱いで選抜でシングルをリリースする計画だったと思う。
 ところが2つのグループがまとまることはなく、それどころか2017年4月6日にけやき坂46のメンバー追加オーディションが発表され、さらに長濱が同年9月24日に欅坂46に専任することになりけやき坂46の「顔」のはずだった長濱がけやき坂46を去ることになる。これはあくまでも想像の域を出ないが、欅坂46のシングル「不協和音」がリリースされるのが2017年4月5日なのだが、リリース前頃から平手友梨奈の様子がおかしくなりけやき坂46が欅坂46に合併することが困難になり、さらに平手と話ができる長濱が欅坂46に必要とされたからだと思う。これは『僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46』(高橋栄樹監督 2020年)に詳しい。
 長濱はあまりにも忙し過ぎてアイドルとしての寿命を短くしてしまい、結果的に日向坂46のメンバーも平手に翻弄されることになったと思うが、性格が対照的な一期生と二期生の組み合わせによるケミストリーと、最年長の佐々木久美の寛容なリーダーシップが幸いして良いグループになったと思う。一時的ではあっても井口眞緒がグループを牽引していたことは間違いない。

 しかし日向坂46名義としてはファーストアルバムとなる『ひなたざか』のリード曲である「アザトカワイイ」はSKE48の曲のようで決して良い曲とは言えない。

日向坂46 『アザトカワイイ』

 リハーサル動画の方が良い。3分頃に影山優佳がカマしていると思う。

日向坂46 「ひなリハ」~アザトカワイイ~


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語学力に比例する性格の悪さについて

2020-09-05 23:33:52 | Weblog


(2020年9月5日付毎日新聞朝刊)

 8月28日の記者会見で茂木敏充外相が、新型コロナウイルス感染拡大防止策として実施していた在留外国人の入国制限に科学的な合理性があるかと日本語で訊ねた外国人記者に「What do you mean by scientific?(科学的とはどういう意味か)」と英語で聞き直したことで差別的だと批判されていることに対して、「英語が通じると思って、善意でお聞きしたまでだ」と釈明しているが、そもそも前提が間違っていると思う。
 外国人記者が日本語で「科学的」と訊いているのならば、「科学的とはどういう意味か」と日本語で訊かなければならないはずで、質問者が英語で具体的に定義していいかと訊かれた時に初めて茂木外相は英語を通じて相手の意図を聞き取るべきなのである。
 茂木外相はハーバード大学に留学経験があるらしいが、英語を使って自分の頭の良さを示そうとして自爆して逆に性格の悪さを露呈してしまったパターンで、これは茂木外相に限らずジョージタウン大学を卒業した河野太郎防衛大臣など英語に堪能な日本人が陥りがちな過信で、さらに言っておくならば、別に英語に堪能でなくても勘違いして自分が英語が堪能だと思い込んでいる麻生太郎財務大臣にも当てはまる。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/mainichi/politics/mainichi-20200904k0000m010207000c


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レガシーの簡単な作り方について

2020-09-04 23:38:26 | Weblog


(2020年8月29日付毎日新聞朝刊)

 通常であれば一般企業や団体などのトップが「嘘つき」ならば、その企業はすぐに潰れるはずなのだが、日本がまだ潰れないのはある意味奇跡なのかもしれない。
 ところで安倍晋三首相は立場的にはレガシーを作れる絶好のポジションにいたはずで、2006年から2007年にかけて首相を経験して失敗したことで何が問題だったのか反省できるチャンスがあり、2012年に首相に返り咲いた時には、その反省を生かしながら七年八カ月の長期政権を担えたのならば得意の外交を活かして日本が長年抱えている大きな問題の一つくらいは解決に導けたはずなのである。
 実際には、北朝鮮の拉致問題は当の金正恩朝鮮労働党委員長に会うこともできず、ロシアのプーチン大統領とは良好な関係らしいが北方領土は一島たりとも戻って来る気配さえなく、アメリカのトランプ大統領とはゴルフ仲間らしいのだが、沖縄の基地問題はもちろんのこと日米地位協定の改定さえ成し遂げられず、中国の習近平国家主席を国賓として招くくらいの関係であっても中国公船の尖閣諸島周辺の領海侵入は今年過去最多なのである。見かけだけを取り繕っているだけの「遊び相手」ばかりなのだが、相手と本気で話し合うということを安倍首相は少しでも試みたことがあるのだろうか?
 「負のレガシー」ならばいくらでも挙げられるのだが、例えば、国会においてヘラヘラしながら不規則発言をしたり癇癪による不用意な発言の連発で国会を「児童会」と化してしまったことは、今後それが当たり前にならなければ負のレガシーになるだろうし、安倍首相の嘘に付き合って嘘をつき通した官僚が出世し、あくまでも正直にいようとした職員が自死しなければならなかったことは官僚のやる気を奪ってしまった。
 今年のコロナ禍において「悪夢の民主党政権」とこき下ろす安倍首相は自慢の政治手腕を世間に示せる絶好の機会であっただろうが、やる気を失っている官僚は、例え良いアイデアがあっても首相に伝える意欲はないだろうから、首相の周辺にたむろしているおっちょこちょいたちのトンチンカンな助言に拠った「アベノマスク」などの対策はことごとくスベり倒し、行き詰まった結果突然、誰も文句が言えなくなる伝家の宝刀である「潰瘍性大腸炎」を理由に辞任してしまうのである。
 しかし安倍首相には辞める前にやろうと思えばできるレガシーがなくはない。首相が代わると首相執務室内の書類を一切残さず、空っぽにして次の首相に引き渡すという官邸に残る慣習を止めることである。私的な文章を含め丸ごと残すことをルールとして定められれば、安倍首相のレガシーとして歴史に名を残せる可能性はまだあるよ。


(2020年9月4日付毎日新聞朝刊)
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/mag2/nation/mag2-464798


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「Like A Rock」 Bob Seger & The Silver Bullet Band 和訳

2020-09-03 23:30:56 | 洋楽歌詞和訳

Bob Seger & The Silver Bullet Band - Like A Rock

 ボブ・シーガ―といえば『ビバリーヒルズ・コップ2』(トニー・スコット監督 1987年)の

挿入曲「Shakedown」が有名だが、ここでは個人的に好きな「ライク・ア・ロック」を和訳しておく。

「Like A Rock」 Bob Seger & The Silver Bullet Band 日本語訳

陽光で汗をかきながら
図太くそこに立っていた
とても気持ち良くて
天下を取ったような気分だった
夏の盛りに
僕はあれほど力強く感じたことはなかった
岩のように

僕は18歳で
はした金のために働いて
財布に余裕はなかったが
全く気にならなかったけれど
僕はどこにいても引き締まって堅牢だった
岩のように

僕の両手は頑丈で
僕の両目は曇りなく輝いていた
僕は目的を持って歩き
一歩一歩は速くて軽やかだった
僕は自分が感じたことが正しいと確信していた
岩のように

岩のように
僕はできる限り強くいた
岩のように
僕は何に対してもびくともしなかった
岩のように
僕は一目置かれる存在だった
岩のように

僕は敏腕の奴らのあらゆる目論みによる重圧で潰されることなく
背筋を伸ばして立っていた
僕は誇りを持ち
全てを見晴らすように意気揚々と立っていた
僕はまだ自分の夢を信じていたんだ

今20年が経ち
彼らはどこへ行ったんだ?
20年経つけれど
僕には分からない
僕は座って時々思うんだ
彼らの行先を

時々夜遅く
僕は炉火の光の中で入浴している時
月が昇るとぼんやりとした白光を招き
僕は思い出す

岩のように
僕は背筋を伸ばして立っている
岩のように
門から飛び出し
岩のように
重荷を背負う
岩のように

岩のように
僕の肌を這う太陽
岩のように
風に向かう困難さ
岩のように
僕はまた自分自身を見つめる
岩のように
岩のように


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