原題:『青くて痛くて脆い』
監督:狩山俊輔
脚本:杉原憲明
撮影:花村也寸志
出演:吉沢亮/杉咲花/岡山天音/松本穂香/清水尋也/森七奈/茅島みずき/光石研/柄本佑
2020年/日本
気がつかない「影響力」について
「人に不用意に近づかない事」と「誰かの意見に反する意見をできるだけ口にしない事」の2つを信条にしている主人公の田端楓は大学に入学しても、その信条を貫いていたのだが、ある日、授業中に「みんなが平和を求めれば世の中は平和になる」と教師に意見している秋好寿乃を目撃し、その後何故か秋好に付きまとわれるようになって一緒に学食で食事をしたりするような関係になる。
それぞれ学内で浮いた存在だった2人はやがて秘密結社サークル「モアイ」を設立して「世界を変える」ための運動を密かに始める。最初はフリースクールの手伝いをする程度の活動だったのだが、大学院生の脇坂が加わって3年後、「モアイ」は就活サークルと化しており、秋好はリーダーを務めているのだが、楓は関係を断っており「モアイ」に強い怨みを抱いている。
本作の面白さは現実主義の楓と理想主義の秋好がお互いに影響を与え合って、結果的に秋好が現実路線に方向を変える一方で楓が、秋好や「モアイ」に対して「理想」を抱くようになり、さらに2人ともそのことに気がついておらず、「モアイ」のデータ流出問題に関する説明会前の会場で楓と秋好が差しで語り合うのだが、どうしてこうなってしまったのか2人とも説明がつかなくなっているのである。
結局、楓にとっては自分が得意とする、決して描き込まない(つまり深入りしない)「パラパラ漫画」のような軽いフットワークこそ人間関係を上手くこなす最良の手段だったのであるが、このような若者の微妙な心理をよく拾い上げたと感心した。