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 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

大杉漣の演技について

2018-04-17 20:28:52 | goo映画レビュー

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 大杉漣が急逝した際に、真っ先に思い出したことが『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮新書 2014.9.20)の著者である春日太一の大杉漣の評価である。

 「岸谷五朗にしてもそうだが、世間的になんとなく《名優》的な扱いを受けている近年の役者たちへの評価に対し、時代劇を中心に観てきた筆者からすると疑問を呈さざるを得ない。
 それを痛感させられたのが、先日とあるホームページに掲載された記事だ。大杉漣を中心に、寺島進、遠藤憲一、光石研、田口トモロヲが一堂に会し、座談会をしていたのだ。彼らが今の日本を代表するバイプレイヤーなのかと思ったら、気持ちが暗くなった。
 というのも、遠藤憲一を除いて、他の四人は時代劇では実に稚拙な芝居を晒してきたからだ。
 特に酷いのは大杉漣だ。そもそも、彼が『名優』の扱いを受けているのが理解できない。いつも棒読みで抑揚のないセリフと大げさに強張った表情は、冗談なのかと思わせるほど下手くそだからだ。それでも、現代劇であれば、使いようによってなんとか誤魔化せてきていた。が、時代劇ではそうはいかない。その『大根芝居』で多くの時代劇を台無しにしてきた。」(p.116)

 もうけちょんけちょんなのである。個人的には大杉漣の芝居にそんな違和感を持ったことはない。演技が上手い人はすぐにわかるが、演技が下手かどうかは共演者次第で目立ったり、あるいは役によってはその「下手さ」がハマっていたりすることがあるからである。
 しかし春日太一に一理あると思う理由は、大杉は長い間ピンク映画をメインに活動しており、ピンク映画で演技力が問われることはなく、演技力を評価されなかったから下積みが長く続いたのではあろう。
 「努力は必ず報われる」というよりも「継続は力なり」という言葉が相応しいのかもしれないが、大杉は演技は上手くならなかったものの、「味」を出すようになってきたことは間違いないだろうし、下積みの長かった人が共通して持つ特徴である、物腰の柔らかさから愛される俳優になったと思う。


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