原題:『坂道のアポロン』
監督:三木孝浩
脚本:髙橋泉
撮影:小宮山充
出演:知念侑李/中川大志/小松菜奈/真野恵里菜/中村梅雀/ディーン・フジオカ
2018年/日本
歌うことを禁じられる「ヒロイン」について
このように音楽をメインにした作品に対してはどうしても評価が甘めになってしまう。例えば、高校の文化祭において「ザ・オリンポス」というグループサウンズのバンドがオックスの「ガール・フレンド」という曲のカヴァーを演奏するのであるが、停電により演奏が途中で止まってしまう。電源トラブルの修復の間に、主人公の西見薫がピアノで「私のお気に入り(マイ・フェイバリット・シングス/My Favorite Things)」を弾き始めると、それに合わせて、それまで薫と喧嘩をしていた友人の川渕千太郎がドラムをたたき始める。二人は「いつか王子様が(Some Day My Prince Will Come)」、「モーニン(Moanin)」とセッションして生徒たちの喝采を浴びるのである。時代は1966年でグループ・サウンズが台頭してきた時期で、二人は辛うじてジャズの面目を保ったのである。個人的にはこのシーンを観るだけでも満足だった。
それから10年後、医師として働いていた薫の病院に桂木淳一と彼の妻になっていた深堀百合香が訪ねてきて、薫は行方不明になっていた千太郎の居場所を知る。地元で教師になっていた迎律子を誘って千太郎が居る教会を訪ねたのは6月12日の土曜日である。ここで一つ不満があるとするならば再会した薫と千太郎が「マイ・フェイバリット・シングス」を演奏し始めるのであるが、律子が歌おうとすると同時に本作が終わってしまうのである。この時、まるで『ソラニン』(2010年)において宮崎あおいが演じる主人公の井上芽衣子がライブシーンで歌わせてもらえなかったことを思い出した。何故、三木孝浩監督作品において女性は一人では歌うことを禁じられているのかとても興味深い。
オックスさん『ガール・フレンド』の歌詞
ガールフレンド
words by ハシモトジュン
music by ツツミキョウヘイ
Performed by オックス