原題:『Swiss Army Man』
監督:ダニエル・シャイナート/ダニエル・クワン
脚本:ダニエル・シャイナート/ダニエル・クワン
撮影:ラーキン・サイプル
出演:ポール・ダノ/ダニエル・ラドクリフ/メアリー・エリザベス・ウィンステッド
2016年/アメリカ
「現実」のオタクのえげつなさについて
「オタク」を主人公としたアニメーションならば、例えば、『中二病でも恋がしたい!』(石原立也監督)や、広い意味でならば『クレヨンしんちゃん』も含まれるとおもうのだが、実写として描かれるとこれほど気持ちが悪いものになるのかと驚いた次第なのだが、それはあくまでも作品のクオリティーではなく、2017年7月13日から15日の3日間で起こった奇妙な出来事に対してである。
主人公のハンクは死体であるメニ―を「友人」としてネクロフィリアのように慕い、いつも乗っているバスで見かけただけの既婚者で幼い娘もいるサラ・ジョンソンに片思いをするというこじらせ振りはもはや救いようがないレベルなのだが、自分自身の不気味さをハンク自身は自覚しているようで、ラストは自分の「妄想」に対して開き直ったような感じである。個人的には見てはいけないものを見てしまったような後味の悪さである。
ところでエンディングテーマとして流れる「コットン・アイ・ジョー(Cotton Eye Joe)」は有名なフォークソングで、歌詞の解釈は多岐にわたるようなのだが、まずは本編で使用された歌詞を和訳してみる。
「Cotton Eye Joe」 Andy Hull & Robert McDowell ft. Daniel Radcliffe 日本語訳
もしもコットン・アイ・ジョーの居る隙がなかったならば
僕はとっくの昔に結婚していただろう
君はどこから来たんだ?
君はどこへ行ったのか?
君はどこから来たんだ、コットン・アイ・ジョー?
もしもコットン・アイ・ジョーの居る隙がなかったならば
僕はとっくの昔に結婚していたはずなのに
本作のストーリーを鑑みるならば、コットン・アイ・ジョーとはダニエル・ラドクリフが演じたメニ―になるのだが、元々の意味は奴隷としてアメリカに連れてこられた黒人を指しているようで、黒い顔に白い目が目立つために「綿のような目」と呼ばれているのである。真偽はともかくそんな黒人たちが梅毒を持ち込んだために「僕」は結婚できなかったという恨み節なのである。
Cotton Eye Joe - Swiss Army Man Soundtrack (Official Video)