現在、国立西洋美術館で催されている「プラド美術館展」は、「芸術」「知識」「神話」
「宮廷」「風景」「静物」「宗教」と7つのブロックに分けて展示されている。ベラスケス
の時代(1600年代)のスペインの画家は風景に対して全く興味を示さない。例えば、
ディエゴ・ベラスケス(Diego Rodríguez de Silva y Velázquez)の代表作で今回の
目玉作品とされている『王太子バルタザール・カルロス騎馬像(Prince Baltasar Carlos
on Horseback)』(1635年頃)は「風景」のコーナーに展示されているのだが、
中央に描かれている人物像は文句のつけようがないものの、背景は必ずしも褒められたもの
ではない。「風景」のコーナーで感心させられる作品は『城のある港湾風景(Port with
Castel)』(1601年頃)のパウル・ブリル(Paul Bril)はフランドル人、
『聖セラビアの埋葬のある風景(Landscape with Entombment of Saint Serapia)』
(1639年頃)のクロード・ロラン(Claude Lorrain)はフランス人、『祈る隠遁者
(Praying Hermit)』(1637ー38年頃)のジャン・ルメール(Jean Lemaire)も
フランス人なのである。
それはともかくとしてもビセンテ・カルドゥーチョ(Vicente Carducho)に帰属と
される『巨大な男性頭部(Colossal Male Head)』(1634年頃)からデニス・
ファン・アルスロート(Denis van Alsloot)の『ブリュッセルのオメガング もしくは
鸚鵡の祝祭:職業組合の行列(The Ommegang in Brussels : Procession of Guilds)』
(1616年)までマクロとミクロの振り幅はもはやモダンアート並みである。