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社長の給与、フランスの場合。

2007-05-26 01:05:07 | マスコミ報道
他人の懐具合が気になるのは、洋の東西を問わないようです。ちょっと前になりますが、16日付のLe Figaro(フィガロ紙)の経済面に、社長の給与高額ランキングが出ていました。


経済面(別刷りで、紙の色も違います)のトップに出ていたこの写真の主は、保険業界大手のAXA(アクサ)の社長、Henri de Castries(アンリ・ドゥ=カストリ氏)。でも、彼が1位だったのではなく、いまフランスで、経営陣、特に辞める際の高額給与・手当てが問題になっている折、自ら2007年のストック・オプションを返上すると決めたので、話題の顔として1面に写真入で大きく紹介されています。日本でもビジネスを展開しているアクサ保険、その本社社長が、この人。一見若いですが、名前からしてたぶん元貴族。グランゼコールを出たエリート・コースの人なのでしょうね。


さて、肝心の収入ランキング、中面に一覧表が出ています。調査データは、固定給与・変動給与それぞれとその合計、およびそれぞれの2005年との比較、さらにストックオプション、そして合計でいくらの所得があったのかを明示しています。全部で40社、昨年途中で社長交代のあった企業は、そのすべての社長それぞれがいくらもらったかまで、調べて公表しています。


この3人が、栄光のトップ3。一番上の人、どこかで見た記憶がありませんか。そうです、あのカルロス・ゴーン氏です。2006年、主要企業トップの中で、最高額の所得を得ています。その金額、2,164万ユーロ。1ユーロ=150円で計算すると、32億4,600万円。今なら160円を越えていますから、さらに高額感が出ますね。ただし、ゴーン氏の場合、固定給与は124万ユーロ(1億8,600万円)で残りはほぼすべてストック・オプション。

2位は、LVMH(ルイ・ヴィトン、モエ・エ・シャンドン、へネシー)のベルナール・アルノー氏で、1,536万ユーロ。同じくストック・オプションの割合が多く、73%ほどになっています。

3位がロレアルのジャン=ポール・アゴン氏で、1,190万ユーロ。やはり72%がストックオプションです。

4位以下には、一面の写真に出ていたAXAのドゥ=カストリ氏で、706万ユーロ、2006年のストック・オプション額は、370万ユーロで、半分上を占めますね。それを今年は返上するというのですから、英断で、大きな話題になるのでしょう。5位は、ペルノ酒メーカー、ペルノ・リカール社のパトリック・リカール氏で602万ユーロ。ブランド名と同じ名前ですから、オーナー社長なのでしょうね。

*ストックオプション制度とは、会社が取締役や従業員に対して、予め定められた価額(権利行使価額)で会社の株式を取得することのできる権利を付与し、取締役や従業員は将来、株価が上昇した時点で権利行使を行い、会社の株式を取得し、売却することにより、株価上昇分の報酬が得られるという一種の報酬制度です。
報酬額が企業の業績向上による株価の上昇と直接連動することから、権利を付与された取締役や従業員の株価に対する意識は高まり、業績向上へのインセンティブとなります。
また、結果として、業績向上が株価上昇につながれば株主にも利益をもたらす制度とも言えます。
―――『大和証券 公開基礎情報』

フランスの社長たち、ストックオプションで、かなり高額な所得になっているようですが、ストックオプション以外にも、ゴールデン・パラシュートなど、いろいろと収入を増やす方策を講じているようです。特に問題視されているのが、エアバスなど航空・宇宙関連を傘下に持つEADS社(フランス政府も株主)の経営陣交代に伴う高額な退職支給です。社長だったノエル・フォルジャール氏は納期の遅れなどによる業績不振から社長の椅子を降りたのですが、退職金を850万ユーロ(12億7,500万円)も受け取りました。そして、EADS社は従業員1万人を解雇することを決定。額も額ですし、タイミングも悪すぎますね。1万人を解雇するほど業績を悪化させておきながら、自分は高額の退職金をもらって逃げ出してしまう。さすがに政治問題化し、サルコジ大統領は、受け取った額を返すよう求めています。さらに、悪用されやすいゴールデン・パラシュートを禁止する法律をこの夏以降、成立させる心積もりだそうです。

*ゴールデンパラシュートとは、敵対的買収防衛策のひとつで、敵対的買収されることを防止したい企業の取締役が、敵対的買収者により解任もしくは退任に追い込まれる場合を想定し、その場合には巨額の退職金などの利益が被買収企業の取締役に支払われる委任契約を予め締結しておくもの。
敵対的買収を行うと巨額の損失が買収対象企業に発生する仕組みを導入しておくことで、予め敵対的買収者の買収意欲を削ぐ目的で導入される。
買収する側が、買収目的を達成するために、買収対象となる役員へ多額の退職金を支払うようなケースでもゴールデンパラシュートと呼ぶことがある。
―――『exBuzzwords用語解説』

階級社会で、有力企業のトップの座も、上流階級が仲間内で回しているようにも見えるフランス社会。EADS社の場合は、さすがにやりすぎたのでしょうか。しかし、アメリカの流儀にはとりあえずノンと言っているように見えるフランス社会でも、その上層部では、自分たちに都合がよければ、ストック・オプションやゴールデン・パラシュートなどアメリカの仕組みを早々と取り入れているのですね。それを、アメリカ流の競争社会へ変革しようと登場したサルコジ大統領が取り締まるというのも、皮肉なめぐり合わせです。

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コメント
 
 
 
こんにちは (memaido)
2007-05-26 01:56:39
はじめまして、楽しく拝見させていただきました。
またちょくちょく拝見させていただきます。
 
 
 
よろしく。 (take)
2007-05-26 02:25:52
memaidoさん
コメントありがとうございます。
引き続き、ご訪問、よろしくお願いします。
 
 
 
フランスの階級社会 (シエナ)
2007-05-26 10:28:20
takeさま
 日本にいると、いろいろな面でアメリカにばかり目がむいてしまい、フランスの会社実態や階級社会などについて拝読すると、目からうろこがポロポロ。勉強させていただいています。
 ところで、フランス企業社会では、あまりに階級の壁が厚いので、いわゆる「成り上がって」社長になるなんて人が出現しにくいのでは? と思われるのですが、いかがでしょう
 
 
 
たたき上げ (take)
2007-05-26 17:05:16
シエナさん

おっしゃるとおりで、現場たたき上げというのは、いてもごく稀だと思います。現場は一生現場、エリート層は新入社員のときから管理職。だからこそ、現場の生産性はあがらず、サービスにしても不快感を与えるような態度で平気なのではないでしょうか。

たとえば、グランゼコールの一つ理工科大学校を出、さらに鉱山大学に学ぶという超エリートコースに乗ったカルロス・ゴーン氏はミシュランに入ったときすでに管理職だったはずです。

これはアメリカ企業と同じですね。有名大学のMBAを取って、たとえば銀行に入れば、いきなり秘書付き。

いっぽう、日本は「戦略づくり」より「モノづくり」の国なので、現場を知らないと使い物にならない。だから、新入社員から長年現場で勉強することになる。大きな違いになっていますね。でも、それぞれの国に、それぞれの特徴。どちらがいいというわけではないと思います。

以上、知ってる範囲の知識を総動員しての、素人なりの感想なのですが、参考になりましたでしょうか・・・。
 
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