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その他、音楽編、自然編も有り。

聖地日和 異境・異形 4 三重県熊野市・産田神社

2009-08-14 02:27:26 | 活字の海(新聞記事編)
毎日新聞 2009年8月9日(日) 日曜くらぶ2面
異境・異形 4 三重県熊野市・産田神社
筆者:伊藤和史 写真:荒牧万佐行
サブタイトル:安産の神 玉砂利美


今回取り上げられたのは、花窟(はなのいわや)神社と産田(うぶた)
神社。

そのどちらもが、イザナミに由来を持つ。
そう。
日本人なら誰もが知るところの(と、最近でも言ってよいのだろうか?)
国産み、神産みの女神である。

女神イザナミは、男神イザナギと結婚して、次々に子である神々を
生み出す。
そして、最後に火の神カグツチを出産した際に、その陰部を火に
焼かれて亡くなる。
死に際しても、イザナミの体から出た吐瀉物、その他の分泌物からも
次々と神々が産まれ出たという。
正に、日本そのものの母性とも言えるイザナミを御祭神としているのが
花窟神社であり、そのイザナミがカグツチを産んだ地とされるのが
産田神社である。

イザナミは、黄泉平坂(よもつひらさか)でのイザナギとの別れを
機に冥界の神として祀られることになるが、ここでは専ら死を司る
というよりも、国産み、神産みから来る子授けの神として親しまれて
いると、筆者は語る。


そのことをよく表わすエピソードとして、筆者が紹介するものが
花窟神社の「岩が岩を産む」という伝承である。

侵食により、岩が徐々に崩落し、中から小さな石が転がり出てくる
情景を見て上記のような発想に至ったようだが、これをここで
留めずに更に広げていった結果、産み出された石そのものを神聖化
する流れとなり、境内には他のどの神社よりも分厚い玉砂利が敷き
詰められることとなったのだそうな。

産田神社の本殿前に敷き詰められた玉砂利。
本誌に掲載されたローアングルからの本殿の写真では、まるで
玉砂利の海に本殿が浮かんでいるようにさえ見える。

(写真は、み熊野ネットの”産田神社”より)

また、産田神社にある神籬(ひもろぎ)。
四角い石の台座が15ほども参列に並べられたそれは、神を招き
下ろす聖なる場として設けられたものだという。

(写真は、み熊野ネットの”産田神社”より)


そして、最後に花窟神社のご神体。
こちらは、この聖地日和シリーズでも何度となく取り上げられて
きた通り、高さ70mにも及ぶ磐座(というより岸壁)をもって
祀られている。
この神社が徹底しているのは、社殿すら無いことである。
もっとも、神社の本来の姿はこうしたご神体のあり方だったと
いうことは、この聖地日和のシリーズの中でも何度と無く語られて
きたことなので、その意味でこの磐座は古き日本の神社のスタイルを
今に伝える貴重なものだと言えよう。

(写真は、み熊野ネットの”花の窟神社”より

玉砂利から始まって、70mの磐座まで。

ここ、熊野の地では、石が全ての源として扱われているかのようだ。
そしてそれは、全てのものに神が宿るというアニミズムの考えにも
通じていくように僕には思える。

神は、全てを産み出した。
そして、神は、その産み出した全てに宿っている。
それが故、万物の中に神の姿を見ることが出来るのだとするアニミズム
の考え方は、自然を超克する対象としてではなく、懐に抱かれる存在
として捉えていた地域の人々の自然な思いの発露として、とても納得が
いくのだ。


龍安寺で有名な枯山水も、そうした延長上にあるものだと考えることは、
考え過ぎだろうか?

(写真は、Wikiより

(この稿、了)


(付記)
Wikiを除いて、今回引用させていただいた写真は、いずれも
み熊野ネット(管理人てつさん&そまさん)からのもの。

 ※ 引用に際しては、み熊野ネット内の引用ルールに則って
   行っています。

ご自身が在住されている熊野地方について、本当に広範囲に、
かつ丹念に情報を集め、まとめてUPされています。

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この地方にご旅行等を計画される際には、是非お立ち寄りに
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2 コメント

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リンク有難うございます (そま@み熊野ねっと)
2009-08-16 09:30:25
はじめまして、み熊野ねっとのそまと申します。サイトについてご紹介いただき誠にありがとうございます。
花の窟神社と産田神社、毎日新聞に載っていたんですね。熊野にはイワクラがたくさんありますけど、中でも花の窟神社はまさに大地母神イザナミというかんじで存在感が大きいです。
ちなみに本宮大社の近くにもイザナミノミコトをお祀りした産田神社という小さな御社があります。
返信する
こちらこそ (MOLTA)
2009-08-16 09:58:05
コメント、ありがとうございます。

み熊野ねっとさんのサイトは、本当に勉強になりました。

コメントにも頂戴したような、別の産田神社の存在等、知らないことだらけでとても嬉しいです。

花窟神社の10月2日のお綱掛け神事にも、是非言ってみたいと思っています(休みが取れれば、ですが…)。


これからも、素晴らしい写真、文章による熊野の様々な事物の紹介を、楽しみにしています。
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