活字の海で、アップップ

目の前を通り過ぎる膨大な量の活字の中から、心に引っかかった言葉をチョイス。
その他、音楽編、自然編も有り。

ほんとにあった怖い話 2010年 1月号

2009-12-05 20:17:17 | マンガの海(読了編)
出版社:朝日新聞社 編集人:長谷川まち子 
定価:400円(税抜) 発売日:11月25日
特集:いわくモノ



バタバタしていて。
前号のレビューをUPしないうちに、最新号が発売されてしまった。

ということで。
気を取り直して、新年1月号のレビューにかかろう。


今回のINDEXは、以下のとおり。

カラー特集1:ご利益神社&仏閣『ほん怖』おススメ、ベスト10!!
カラー特集2:氷室奈美のオーラドローイング(ゲスト:津久井教生)

コミック:
・魔百合の恐怖レポート「因縁の系譜」 山本まゆり
・影御前V「住んではいけない…その後」 小林薫
・「弱り目に祟り目」 ひわときこ
・「拒絶する空間」 語り:立原とうや 画:水原冬樹
・「離島怪奇譚」 葉山かれん
・スターインタビュー島田秀平「仏眼の語り部」 画:パルス
・心の処方箋「インナー・メディスン」
  『親子の因果』 原案:神楽ゆう 画:堆木庸

”いわくモノ”特集
・第一話「封じられた叫び」 画:鯛夢
・第二話「魂籠め石」 画:有久裕子
・第三話「毟りとられた居場所」 画:筒井りな
・第四話「果てからの念波」 画:大友とも

連載
・霊能者・寺尾玲子の心霊質問箱


さて。
以上の中で、今回の私的ベスト3は…。

一位:影御前V「住んではいけない…その後」 画:小林薫

 影御前というのは、この作品を書いている漫画家・小林氏の
 守護霊のこと。

 普通は先祖等がその役に付くらしいが、彼女の場合は自然霊
 というから少し毛並みが変わっている。

 面白いのは、直接的に彼女はその守護霊と話しは出来ず、
 霊感のあるアシスタントさんを介して会話をしているところ。

 そのシチュエーションもさることながら、今回気に入ったのは
 その守護霊のドライさ。

 小林氏が以前住んでいたマンション(持ち家)。
 その家を業者を介して買った新たなオーナー夫婦が、霊障に
 悩まされる。

 その相談を受けて、何か出来ないかと悩む小林氏に、守護霊は
 きっちりと”それはその人個人の問題。関わるな!”と引導を
 渡す…。

 今回、「インナー・メディスン」でも合ったのだけれど。
 過去世の影響で今生に災いをもたらしている。
 あるいは、過去世の業(カルマ)を解消するために今の辛さがある。 

 そうした話しを読むと、最近は気持ちが結構凹む。

 今、こうして生きている、この人生は僕のものであり、その終始は
 一人今の僕に責任を帰すべきもののはずだ。

 それが、過去からの紐付きの因縁に縛られた人生になるなんて、
 なんだか納得がいかないのだ。

 そうした思いを持っていた中で、この守護霊のドライさが気に入って
 一位に選出してしまった次第である。


二位:「封じられた叫び」 画:鯛夢

 相変わらず、本誌執筆陣の中では抜群の画力を誇る鯛夢氏。
 今回も、一位の座を謹呈したかったのだけれど、敢えて見送ったのは
 2点の理由が。

 一つ目は、今回の幽霊の表情。

 ロッカーに閉じ込められて虐待死した男の子の霊が、知らずにその
 ロッカーを使った女の子の眼前に現れる、というのが話しの骨子。

 そうであれば、この話しにあるように、「ニヤリ」となんで笑える
 のかなぁ?

 そこがどうにも腑に落ちなかった故である。

 もっとも、本誌の売りは、読者や漫画家の体験談をコミック化する
 ことなので、今回のお話も読者からの投稿を(恐らくは)編集が
 ピックアップして鯛夢氏に漫画化を依頼したもの。

 であれば、その表情に不満をもたれても、俺も困るもんね。
 と、鯛夢氏も思うであろうが…(笑)。

 後、作画的には、ディジタル化が進んでいる影響だろうか。
 人物の描線にあまり変化が無く、一本調子になっているように見える。
 力の入れ加減で描線の太さが変わるペンでは無く、サインペンで
 描いているようにも見える絵が多いのが、少し気になった。

 後は、つい細かいところに目が行ってしまうが、2~3ページ目の
 見開き下部の先輩女性の眼鏡。左右でツルの形状が違うのが気になる…。
 (細かくて、すみません(汗))。


三位:魔百合の恐怖報告「因縁の系譜」 山本まゆり

 藁人形という、あまりにも古風な呪詛の道具が主人公。

 だけど。
 そこに籠められた人の怨嗟の念がもたらす霊障の深さは、なかなかに
 侮れない。

 先ほど、過去世のカルマ話は嫌だと言っていたのと矛盾しないか?

 僕が何だか抵抗を感じてしまうのは、運命論の部分。
 
 単なる霊障ならば、それは交通事故みたいなものなので、OKである。
 #この感覚も、また変わるのかもしれないけどね。

 自分で変えていけるなら、それはそれでよし。なのである。

 それにしても。
 今回取り上げた寺尾玲子氏への相談は、何時にあった話しなのだろう?
 
 最後のページで、相談者に対する予言が開示されているんだけど、
 本人には告知せずに、メディアを介して発表してよいの?と思うけど、
 流石にそれはないよね?(笑)


次点1:「弱り目に祟り目」 画:ひわときこ

 この体験談にあるように自分も最近入院したので、結構臨場感を持って
 読んでしまった。

 確かに、様々な病歴の人がいる病棟だから、あまり不用意な発言は
 不興を蒙るよなあと、今更だけど反省した次第。


次点2:霊能者・寺尾玲子の心霊相談箱

 前回も、同じような講評をしたけれど。
 この心霊相談箱。殆どがちっとも心霊相談ではないんだよね。
 玲子さんのごく普通の常識の視線から見た”そんなの霊障なんかじゃ
 ない!”とする断定が、小気味よい。



(この稿、了)



ほんとにあった怖い話 2010年 01月号 [雑誌]

朝日新聞出版

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2 コメント

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コメント再入力本日になってしまいました (タイム)
2010-02-17 00:20:40
いつも読んでくださってありがとうございます。

これまで他の同様誌でも色々仕事をしてきましたがさすが「ほん怖」はその中でもスタンダードを名乗れる編集方針と誠実さをもった稀有な雑誌であるゆえ、僕からも自信をもってオススメできます。

…で、これは読者体験談コーナーに顕著な”決まりごと”なのですが、「手紙に書かれている話の流れと現象を変更してはならない。」わけです。
はい^^;これ、当然と言えば当然の事なのですが、同系列の雑誌が皆これを守っているのか?と問われれば、いささか疑問。演出のワクを通り越して”ふくらみ”を加味することはままあるように思います。

まあ、そんなわけでおっしゃるとおり、このマンガの「ニヤリ」もお手紙通りの「ニヤリ」でありまして、ネーム中符に落ちなくても無視するわけにはいかなかった、という。。。(笑)
ただ、僕が思うに幽霊の出現形態って、多分に目撃者の心理状態によるところが大きいのだと思うのです。
その時その霊がどんな表情だったか。どんな格好だったか。どんな言動をとったか。。。etc…は、因縁のある場所や場面に差し掛かったときに、全部目撃者の内面から引き出されるものではないかと。
なので、この「ニヤリ」はまだこの子供の事情を知らなかった目撃者が、「自分に害をなすものかもしれない、襲われるかもしれない」という恐怖から付け足してしまった映像だったのではないか?
…と僕自身では解釈しています。

まあ、クドクド書きましたが、そんな意味ででも幽霊ってのは「クリーチャーでなく人間」あるいは「人間が産み出したもの」なんだなあと思うわけです。
それを描ける機会をいただいてる。と思うとこれもやりがいのある仕事ではないかと(笑)
返信する
再入力、ありがとうございます (MOLTA)
2010-02-23 00:25:25
すみません。
お忙しいところを、ご無理言ってしまいました。

でも、とても嬉しかったです。
まだ3月号のUPはできていませんが、近々必ずUPしますので、もう少しお待ちください。
#暫く、合唱ねたで忙しかったもので…。


「ほん怖」の真摯な姿勢は、僕も感じます。

他紙と比べると物足りなさを感じることもあるのは、逆に演出が過剰でないためということなんだろうなと。

オーバーに書こうと思えば、幾らでも話は怖く出来るでしょうけれど、それをするとノンフィクションではなくなっちゃいますものね。

しかし、最後の4行。
深い。深いですね~。

そう。結局は幽霊は枯れ尾花ではなく、人間なんですよね。
人の意識が生み出した(それが幻影であれ、本当に存在する霊であれ)ものなのだということを、改めて納得しました!

この一文で、ますます鯛夢先生のファンになりました。

次回作も、楽しみにしていますね~。
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