水鳥やてうちんひとつ城を出る 蕪 村
「てうちん」は、「ちょうちん」と読み「提灯」と書く。つまり、紙張りの火袋の中にロウソクを立てる照明具の一つ。
「水鳥や」とあるだけで、水鳥の様子は詳しく説明されていない。もともと実景に即した句ではなく、水鳥は単に一抹の気分を添えるための配合である。
しかし、詠まれている事情から推せば、この水鳥は当然、声だけが聞こえているのである。
非常に大きな舞台装置と、書き割りとを連想させるものがある。
季語は「水鳥」で冬。冬、水に浮かぶ鳥をまとめて水鳥という。秋に渡ってきて冬を越し、春になると帰って行く鳥が多い。河川・湖沼で水鳥を見かけるのは、冬が最も多いので冬の季語とされた。
白鳥・鴨・雁などは北から渡ってくる鳥であるが、鴛鴦(おしどり)は、山中の渓流から冬になると平地の水辺に移ってくる。鳰(かいつぶり・にほ)は留鳥である。
また、季節に関係のないガチョウやアヒルなども、水鳥として詠めば冬季である。
「石垣で固められた城郭とその外堀とを、闇が封じ込めている。
堀のあたりと思われる遥か下の方からは、寒さに眠れない水鳥
のかすかな声が、思い出したように時々聞こえてくる。城門の
あたりと思われるところから、不意に赤みがかった提灯が一つ
すべり出た。何かの急使であろう。堀に架けられた橋の上をひ
たすら揺れながら、こちらに近づいてくる」
弁天堂 冷えをひろげて鳰の波 季 己
「てうちん」は、「ちょうちん」と読み「提灯」と書く。つまり、紙張りの火袋の中にロウソクを立てる照明具の一つ。
「水鳥や」とあるだけで、水鳥の様子は詳しく説明されていない。もともと実景に即した句ではなく、水鳥は単に一抹の気分を添えるための配合である。
しかし、詠まれている事情から推せば、この水鳥は当然、声だけが聞こえているのである。
非常に大きな舞台装置と、書き割りとを連想させるものがある。
季語は「水鳥」で冬。冬、水に浮かぶ鳥をまとめて水鳥という。秋に渡ってきて冬を越し、春になると帰って行く鳥が多い。河川・湖沼で水鳥を見かけるのは、冬が最も多いので冬の季語とされた。
白鳥・鴨・雁などは北から渡ってくる鳥であるが、鴛鴦(おしどり)は、山中の渓流から冬になると平地の水辺に移ってくる。鳰(かいつぶり・にほ)は留鳥である。
また、季節に関係のないガチョウやアヒルなども、水鳥として詠めば冬季である。
「石垣で固められた城郭とその外堀とを、闇が封じ込めている。
堀のあたりと思われる遥か下の方からは、寒さに眠れない水鳥
のかすかな声が、思い出したように時々聞こえてくる。城門の
あたりと思われるところから、不意に赤みがかった提灯が一つ
すべり出た。何かの急使であろう。堀に架けられた橋の上をひ
たすら揺れながら、こちらに近づいてくる」
弁天堂 冷えをひろげて鳰の波 季 己