壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

今朝の雪

2010年02月01日 22時55分52秒 | Weblog
        箱根越す人も有るらし今朝の雪     芭 蕉

 挨拶のこころがある句である。こういう想像をする底には、自分の身を置いているところの、人々の暖かさを感じている気持ちがあるからだ。
 「あるらし」は「あるらん」とか、「あるべし」とかいう表現よりも、もっと身近にそれを感じている気持ちである。

 『笈の小文』に、「蓬左(ほうさ)の人々にむかひとられて、しばらく休息する程」とあって出る。「蓬左」は、熱田神宮を蓬莱宮というので、熱田の左(西方)の地、熱田から名古屋一帯の称。
 「蓬左の人々」とは、越人など尾張の弟子たちをさす。
 貞享四年(1687)十二月四日の作。
 季語は「今朝の雪」で冬。

    「今朝起き出してみると、いちめん目をみひらかせるような雪である。今頃、自分がかつて越えて
     きた、あの箱根の険路(けんろ)を、越える人もあるであろう」


      雪晴れや埴輪の巫女は腰かけて     季 己