


故事成語類(実践問題その22)です。引き続き、主として漢詩類から作成。しかしながら、今回は、
難易度: 「きわめて難」 です。
「書き問題」には鋭敏な勘や閃きと想像力、「読み問題」には重箱の隅をつつく様な記憶力などが必要かも(^^)
どうぞトライしてみてください・・・。ちなみに、もし問題として出されたら、私、せいぜい半分ぐらいしか対応できそうにありません(^^;)
(よみ)
①「裳(もすそ)をかかげて 墟丘(おか)に上れば 但だ見る 蒿と(薇)と 白骨 黄泉に帰し 肌体 塵に乗りて飛べり」 (注)「薇」は「ぜんまい」とも読みますが、原文・詩意から、ここでは「ぜんまい」ではありません。
②「馬より下りて 君に酒を飲ましむ 君に問う 何れの所にか之くと 君は言う 意を得ず 帰りて南山の(陲)に臥せんと」
③「人生の行楽 勉強に在り 酒あらば 負(そむ)く莫かれ 瑠璃の(鍾)に 」
④「古陵の松柏 天飇に吼ゆ 山寺 春を尋ぬれば 春寂寥 眉雪の老僧 時に箒を (輟) め 落花深き処に 南朝を説く」
⑤「農人 乍(たちま)ち相い見て 歓笑しつつ 柴扉(さいひ)を (款) く」
(かき)
①~②「・・・① (カンカ) 暮雨に燃え ② (タンジュ) 春雲 暖かなり・・・」(注)カンカ:谷間の花々 タンジュ:谷川の深淵ぎわの樹々 (谷間の花々は夕暮れの雨にぬれて燃えださんばかりに赤い、谷川の深い淵、そのきわに立つ樹々のその上には暖かそうな春の雲が漂っている)
③「何れの時か (イッソン) の酒もて 重ねて与(とも)に細かに文を論ぜん」
④「緑樹 交々(こもごも)加う 山鳥の啼 晴風 (トウヨウ) して 落花飛ぶ 鳥歌い花舞いて 太守酔う 明日酒醒むれば 春已に帰らん」(注)前段の意:緑の樹々の間で山の鳥たちがかわるがわる鳴き交わす声、さわやかな春風がたゆとうて散る花が飛び交う・・・。トウヨウ:水のただよいゆらぐようにたゆとうさま。
⑤「・・・二物憎む可しと雖も 性命には (センサ) なし 斯の味 曾て比いせざるも 中に禍(わざわい)の涯なきを蔵す・・・」 (注)二物:ここでは蛇と蝦蟇のこと。性命は生命と同じ。 「センサ」は背を向けあいちぐはぐとなること。蛇と蝦蟇、この二物はどう見てもにくにくしげだけれども、それを食べても命に別状はない。ところがフグの方は、その味はたとえようもないが、その代わり、中に測り知れないわざわいをひそめている。(「河豚の詩」(宋・梅堯臣の長詩)の一節から)
<回答・解説>はこのあとすぐ(^^)


<回答・解説>
(読み問題)
① (のえんどう):薇:ビ、のえんどう、ぜんまい 蒿:コウ、よもぎ 墟:キョ、おか、あと
② (ほとり):陲:スイ、ほとり、さかい、あや(うい) *王維の詩には「南山の陲(ほとり)」って表現・語句が良く出てくる気がします。後段は「意を得ず 南山の陲(ほとり)に帰臥(きが)せん」と読むこともできます。用例:白雲の陲、砂漠の陲、音熟語:辺陲(へんすい)、四陲、西陲など・・・
③ (さかずき :鍾:ショウ、あつ(める)、さかずき、つりがね *ここは詩意からして「つりがね」ではおかしいですね、「さかずき」と読まないと・・・。なお、ご参考までに、「勉強」の意味:「人生の楽しみは勉強にある」→この「勉強」は日本語の勉強とは違い、「無理をすること」、「無理やりにでもすること」。人生の楽しみは応分になどと言わず、無理やりにでも享受すべきであるとという意味だそうです(^^) 酒があれば、それも、贅沢な瑠璃の大盃になみなみとつがれてさし出されたら決して背を向けてはいけない、断ってはいけない・・・との意。唐宋八大家の一人である欧陽修のなんとも味わい深い一節ですね(^^)
④ (とど) :輟:テツ、つづ(る)、や(める)、とど(める) 熟語 *ここは「とど(める)」と読みます。以前の実践問題では「業を輟(や)める」=「輟業(てつぎょう): 仕事をやめること」を出題しました。
⑤ (たた):款 …カン 準1…まこと、たた(く) 、しる(す)、よろこ(ぶ) *以前の実践問題では音の書き問題(これも難問でしたが)で「款款」で出題。「款」の意味はむずかしいですね。ただ、この訓読みは一度覚えておけば忘れないと思います。「たたく」の意味・読みの音熟語は①「款門・款く:かんもん・たた・く」 「款扉・款く:かんぴ・たた・く」* 款門・款扉とも「訪問する」意。 ②「款塞・ 款く:かんさい、たた・く」 *款塞は「とりでの門をたたく→降伏する」意。
(書き問題)
① (澗花) :澗:カン、ケン、たに、たにみず *「澗」の字が思い浮かべば簡単なんですが・・・。関連熟語:「澗泉」(かんせん)、「渓澗」(けいかん)など・・・。「澗底の松・・・」とかなんとか、問題集や過去問であったような・・・。
② (潭樹) :潭:タン、シン、ふち、ふか(い)、みぎわ *これも「潭」の字が浮かべば・・・。「潭々と水を湛えている」とか「潭」の字は良く見かけますけどね・・・。
③ (一樽):*これも前出の王陽修の詩「豊楽亭遊春」の一節です。本問題中、これが一番易しいですね。樽の酒ということで回答可能ですね。「樽」は酒に絡んで、「樽俎折衝」とか「 琴樽(きんそん)=琴と酒樽 。文人が酒宴を開いて詩文をつくることのたとえ」とか良く使われています。
④ (蕩漾) :漾:ヨウ、ただよ(う) 「漾」の字が思い浮かんでも「蕩」までたどりつけるかどうか(^^)。*「漾」の音熟語はなかなか見かけませんが、「軽漾(ケイヨウ)激(ゲキ)して影(かげ)唇(くちびる)を動かす」という故事成語類(故事成語名言大辞典)があります。(意味:花はものを言わないとだれが言っただろうか、さざ波が立つと、花の影がゆれて 唇を動かしているように見える。)ご参考まで。・・・この「軽漾」は知っていたんですが・・・(^^;)。
⑤ (舛差 ):難問中の難問ではないでしょうか・・・。宋の梅堯臣という詩人の、一風変わった「河豚の詩」の長詩の一節からの出題です。全文はなかなか面白い詩ですよ。・・・「命に別状なし」=「生命には舛差(センサ)なし」で覚えるしかないかも・・・。滅多に見かけず使われもしない語句だと思います。これが回答できた人はホントにすごいのでは(^^)!! 舛:セン、そむ(く)、あやま(る)、いりま(じる)
ちなみに、「舛」の字についてネットで検索したら、以下の先人の説明がありました。無断転載失礼&感謝です。これもご参考までに・・・
舛(セン):「タ(右足)とヰ(右足)」左足と右足とが互い違いの方向にあってゆきちがうさま。
関連熟語:舛午(センゴ):命令などに背いて従わないこと 午=忤(さからう) ←これは過去問等であったような・・・。
舛互(センゴ):食い違い、互いに入り混じる 舛誤(センゴ):誤る、誤り(=舛訛、舛謬) 舛差(センサ):食い違い 「性命無舛差」(=性命ニハ舛差無シ)(梅尭臣の詩) 舛錯(センサク):物事が反対になって乱れる、入り混じる 舛馳(センチ):逆の方向に進む、それぞれ勝手なやり方で行う 舛駁(センバク):それぞれに食い違って統一がない(其道舛駁、其言也不中 =ソノ道ハ舛駁ニシテ、ソノ言ヤ中ラズ(荘子))
如何でしたか? ・・・ではまた👋(^_^)/~👋