>こうしてやっと、あなたの問いに戻ることになります。書き込むための〈支持体〉である紙は、反響します―――書くためのシステムがどのようなものであれ、その音声学的なモチーフがつねに響いているのです。紙はたんなる表面のようにみえますが、その下にじつはある容積を、襞をもっているのです。紙の背後にある迷宮の壁面は、みずから語る声や唄の反響を響かせるのです。紙には届く範囲(ポルテ)があり、紙で作ったメガホン(ポルト・ヴォワ)で声の届く範囲(ポルテ)があるからです(この紙のもつ射程(ポルテ)については、のちに考察する必要があるでしょう)。(ジャック・デリダ著『パピエ・マシン』上巻333ページより抜粋)