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雑感や書評など

山田真哉「女子大生会計士の事件簿〈DX.1〉ベンチャーの王子様」

2005-06-29 08:20:49 | 書評
会計の勉強もしないといけないんだけど、それで最初に手にした本がこれとは…………


「女子大生会計士の事件簿〈DX.1〉ベンチャーの王子様」。

久しぶりの、ゆるーい小説です(角川文庫も久しぶり)。
まぁHow Toものの宿命だから仕方ないのでしょうけど。

タイトルから見て分かる通り、ストーリーを読んでいると自然と会計についての知識が身についていく…………ということになっていますが、まぁ、そっちの方はあんま期待できないと思って下さい。

一応、会計をめぐる話が展開するのですが、体系的に紹介しているわけではないので、いくつかの専門用語が、なんとなく理解できたような気分になる程度です。


で、ストーリー。
史上最年少の会計士・藤原萌実(〝萌〟は、その筋を狙ったのかなぁ)と、会計士補の柿本一麻が仕事先で数々の会計に関する謎を解決していく、というもの。

で、この藤原萌実。現役の女子大生で、ちょっと美人で、勝気で適当、だけれども曲がったことが嫌いな天然元気印の女の子。
この設定を聞いただけで、頭に「あんな感じのキャラか?」と思った方もいるかもしれませんが、その通り。そのキャラです。

対して、柿本一麻は藤原萌実よりも年上の二十九歳ですが、まだ彼女の部下。ちょっと気弱でぬけているけど、バカ正直でにくめないキャラ。
この設定を聞いただけで、頭に「あんな感じのキャラか?」と思った方もいるかもしれませんが、その通り。そのキャラです。

で、柿本一麻は藤原萌実にホの字なわけですが、それを前面に押し出すような勇気はない。
それに気がつかない藤原萌実は、時に彼を惑わすような発言をしたりして、その度に、柿本一麻はちょっとドギマギしたりして…………。
この設定を聞いただけで、頭に「あんな感じの流れか?」と思った方もいるかもしれませんが、その通り。その流れです。

「あの、萌さん。ちょっと相談があるんですけど」
「なあに、カッキー。私に恋愛相談なの?」
「はぁ?」
「いいの、いいのよ、隠さなくても。その顔は恋に悩んでいる顔ね。でもね、カッキー。自分が好きな人に恋愛相談するのは、あまり感心できることじゃないわね」
「とっ、とっ、突然、何を言い出すのですか?!」
「確かに、恋愛相談にかこつけて自分の想いを伝えるというのは告白の常套手段よ。告白するほうは〈振られて悲しいんだ〉とか言って、自分が慰めてほしいことをアピールするつもりでしょうね」
「ちょ、ちょっと持ってくださいよ」
「でもね、そのときの告白されたほうの気持ちとか考えたことある? 〈なんだ、この人振られたから私のほうに来たのかぁ〉って引いちゃう場合もあるのよ。そういったこともちゃんと考えてから告白しなさい。要は〈利害関係がある人に相談したらうまくいくこともいかなくなる〉のよ。それにね……」
「だ、だから、ちょっと持ってくださいよ、萌さん。まずちゃんと僕の話を聞いてください!」
「えっ、何よ。これからが〈萌実恋愛諭〉のいいところなのに」
「あのですね。僕が相談したいのはこの科目の質的重要性についてです。なんで、監査中に恋愛相談なんてしなきゃならないのですか!」
「そっ、そうだったの……。それならそうと、あんたも早く言いなさいよ! ベラベラしゃべり続けた私がバカみたいじゃない!」
「……」
山田真哉「女子大生会計士の事件簿〈DX.1〉ベンチャーの王子様」37~39頁 角川文庫
こんな感じで、ゆるーく話は進んでいきます。

心理描写などはなく、だいたいが会話でストーリーは進行。
謎解きのキーパーソーンは、ご都合主義で登場。
せっかくの最年少の現役女子大生という設定は物語では全く無視(単に藤原萌実の若さをあらわす記号としか存在しており、物語では全く活かされてない)。


…………まぁ、雰囲気を楽しむ小説ですからね。あんまり、無茶なものを求めても仕方ありません。

中学や高校時代に読んだような小説を読みたい方には、悪くないのでは?


女子大生会計士の事件簿〈DX.1〉ベンチャーの王子様

角川書店

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