すんけい ぶろぐ

雑感や書評など

大和和紀「あさきゆめみし (5)」

2005-04-30 08:39:19 | 書評
昔の小説では、よく女性がショックを受けて気絶するけど、現実ではそんな場面に出会ったことないなぁ


「あさきゆめみし (5)」です。
朱雀帝の娘・女三の宮をもらってみたものの、どうも今までは勝手が違い戸惑っているうちに、頭の中将の息子である柏木に寝取られてしまいます。それに怒った光源氏は柏木をいびって、精神的に追い詰めます(光源氏だって、さんざん遊んできたじゃんか………)。気が弱かったのか、光源氏の仕打ちにショックを受けた柏木は病に倒れ、そのまま死んでしまいます。

未亡人になってしまった柏木の妻である落葉の宮に目をつけたのが、光源氏の息子である夕霧です。旦那がいなくなって困っている立場につけこんで、どしどし落葉の宮の家庭に踏みこんでいくのですが、当の落葉の宮は、あまり夕霧が気に入らないご様子。三年も通い詰めながらも全く振り向いてくれない。
業を煮やした夕霧は、母親の看病のため転地している落葉の宮を山里まで追っていきます。が、やはり相手をしてもらえない。で、お約束の押し倒し。
……なぜ お心を許してはくださらないのです?
わたしはこんなに安全な男だともうおわかりくださいましたでしょうに
世間にはむりやりに女を従わせる男も多いが……
そういう男たちにはわたしなどさぞ まぬけに見えるでしょうね……
でもあまりつれない扱いをうけると
わたしでもおとなしくばかりはいられない気持ちです
こういう男の気持ちもまるきご存じないあなたさまでもございますまいに
大和和紀「あさきゆめみし (5)」182頁 講談社漫画文庫
具合の悪い母親の看病している女性のもとに行って、女を強引に口説くなんて………。

で、この逢瀬を母親に知られてしまいます。なにかあったものと勘違いした母親は、一夜の契りの代償として夕霧に結婚を迫るのですが、いろいろと行き違いがあって、満足な返事がもらえません。それにショックを受けた母親は、ついに死んでしまいます。

夕霧が殺したようなもんだな…………。ですが、旦那に続いて母も亡くしてしまった落葉の宮には、もう頼るものがありません。それに焦った落葉の宮についている女房たちの手引きで、夕霧はようやく部屋に入りこんで、関係を持つことに成功します。


そういえば、この巻で光源氏が死んでいるけど、個人的には、夕霧の人振りの方が印象深かったです。


あさきゆめみし―源氏物語 (5)

講談社

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群ようこ「きものが欲しい!」

2005-04-29 09:06:02 | 書評
何?


「あのね、群ようこのエッセイを読んでいたけど、そこでバター犬の話が出てきたの」
「ほぉー」
「群ようこが友達に、バター犬の話をしたら、その相手に「バター犬って、何?」って質問されて、答えに窮したんだって」
「アハハハ、そりゃ、女性の口からは、言いにくいだろうね」
「でさぁ、質問なんだけど」
「はい?」
「バター犬って、何?」

…………何ですかね?


群ようこの「きものが欲しい!」を読みました。

着物をハレの特殊なものではなく、日常のものに回帰させようとする作者の野心がつまったエッセイです。
しかし、現代社会では、それもなかなか大変なようで、その苦心と苦労が、読みやすく書かれております。


しかし、やっぱ、着物は金がかかるのね。

女主人は着物を売りたいがために、社長夫人用に婦人の着物を保管するためだけのマンションを、自腹で借り、社長夫人の、
「もう着物をしまう場所がない」
 という断わりの言葉を封じて、どんどん着物を誂えていた。女主人が席をはずしたとき、社長夫人が
「なんだか知らないうちに、訪問着が仕立てあがってくるのよ」
 とおっとりと言っているのを聞いた覚えがあった。
 女主人の一番の問題は、
「似合うと思って、作ってあげておいた」
 と勝手に仕立ててしまうことだった。「先作り」というらしいのだが、私もそれをされて、
「そういうことはやめてください」
 と言ったら、ものすごい形相で、
「私がこんなに一生懸命にやってあげてるのに。こんないいもん、店に出したらすぐ売れるから、その前に作っておいてあげたんやないの」
 とヒステリックに叱られた。
群ようこ「きものが欲しい!」83~84頁 世界文化社
すげぇー世界だな。

以前に読んだ林真理子の本でも、同じことが書かれていたから、着物世界では、けっこうポピュラーなものなのかも。

しかし、他の業界でも、あるのだろうか?

「Prescottの最新64bit版ペンティアム4が入りましたから、新しいPCを組み立てておきました」と突然電話が入るとか(家の中に最新のPCがごろごろしているなんて、いやな社長宅だな。宮尾すすむも尻込みするだろうな…………)。


本書では金をかけないで、着物を楽しむ方法なども書いております。
まだ興味があるだけの初心の方には、参考になるのでは?

一方で、着物で散財した遍歴もつづられておりますので、着物地獄にはまっているような方も、楽しめるのでは?


きものが欲しい!

世界文化社

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本宮ひろ志「サラリーマン金太郎 (7)」

2005-04-28 09:06:07 | 書評
SARAKIN 7


天下り官僚天国の東北で奮闘するのがメインのストーリーである「サラリーマン金太郎 (7)」。

そもそも主人公の金太郎が就職した先が、ゼネコンです。
建設と言えば、贈賄・談合が繰り返される腐敗の温床(イメージですが)。
もう、会社内部のウミ(大島社長。官僚出身)は出しています。
そりゃ、まぁ、今度は外部の官僚と戦わざる得ないわけでして。

で、愛息と上司を爆殺されそうになった金太郎はぶちぎれて、かつての八州会のメンバーを集めます。最終の参加台数は五千台(人数は六千人)。八州会のメンバーは一万人いたらしいですから、集まった人員は最盛期の約二分の一。それでも、さすがです。

で、大暴れてして逮捕されて、なんやかんやで執行猶予で、会社は首にならないですみます。これなら、植草教授も早稲田を馘首されることもなかったですね。


で、きれた際の金太郎の叫びが、今日の名言。
これを我慢するのが……
サラリーマンだってんなら……
やめたぁ――――つ
本宮ひろ志「サラリーマン金太郎 (7)」145頁 ヤングジャンプ・コミックス
金太郎は、以前、鷹司誠士によって車でひき殺されそうになります。さらに今回は、子供までが危険な目に。そりゃ、切れるのも当然でしょうけど、…………真面目に仕事していて、殺されそうになるサラリーマンって…………。

今回の爆弾の裏には天下りした官僚がいますし、交通事故に見せかけて殺そうと計画したのも官僚出身の鷹司誠士です。本宮先生の官僚像って…………。


それも、ともかく。

最初に大島社長を追い出したときも、次に一ツ橋伸吾と現場で争ったときも、金太郎が正当な主張を貫いているうちに、色んな人が助けてくれて、事態が改善します。悪は許すべきではありません、ということらしいです。

サラリーマンの鉄則 その七。
不正は許さない(命がけ)。


サラリーマン金太郎 (7)

集英社

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大和和紀「あさきゆめみし (4)」

2005-04-27 08:54:09 | 書評
まぁ古典だからな………


「あさきゆめみし (4)」になります。

玉鬘とやりたいなぁ、どうしよかなぁ、やっぱまずいじゃん、でもやりたいなぁと光源氏が悩んでいるうちに、妻子ある右大将に強引にものにされてしまいます。で、玉鬘は右大将に嫁いでしまいます。

ちょっと婉曲に表現すると、「強引にものにされてしまいます」ですが、端的に言いますと強姦です。ちょっと誇張かもしれませんが、絵から察するに少なくとも和姦ではないことは確かです。つまり、やったもの勝ちです。


まぁなんと言いますか。昔の人はオオラカね。

そんな素晴らしい世界です。
ですから、光源氏と、そのライバルであり、青春時代の良き悪友である頭の中将が、久しぶりに再会し、旧交を温めているシーンを見て、第三者が、
おふたりは
姫さまをとおして
ごきょうだいで
いらっしゃったの
ですね
大和和紀「あさきゆめみし (4)」36頁 講談社漫画文庫
と言っているのを読んで、僕は単純に
この二人は、「夕顔」とかで穴兄弟だったな
と思ってしまいましたが、さすがにそこまで世界のタガが緩んでいるわけもなく、頭の中将の妹である葵の上が、光源氏の奥様でした。


なんだかんだで、玉鬘は去り、光源氏と葵の上にできた息子の夕霧も結婚。光源氏もぼちぼち四十才のようです。そろそろ落ち着くかと思えば、朱雀帝の娘・女三の宮をもらってしまいます。朱雀帝は光源氏の腹違いの兄弟でありますから、女三の宮は姪でしょうか? 女三の宮の年は「13か、14」とのこと。これが数え年だとすると、今の年齢では「12か、13」になり、さらに下がります。

親子ほども違う姪をもらってしまうとは…………、また光源氏のっぷりを堪能させてもらいました。


あさきゆめみし―源氏物語 (4)

講談社

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本宮ひろ志「サラリーマン金太郎 (6)」

2005-04-25 11:22:23 | 書評
まだ六巻か


さて「サラリーマン金太郎 (6)」です。
あと24巻もあるので、チャッチャッと行きます。

金太郎は東北支社に異動になります。そこは役人がつくった建設会社が幅を利かす談合天国です。そこで談合に逆らわず汚い仕事をしている伊郷副支社長の下に、金太郎はつくことになります。が、いきなり殴られ、気絶する金太郎。

で、帰宅した後も伊郷副支社長に対して釈然としない金太郎は、彼の家まで押しかけます。その際の発言が、の今日の金ちゃんの一言。
あんたを知りたい
本宮ひろ志「サラリーマン金太郎 (6)」61頁 ヤングジャンプ・コミックス
で、その後は、殴り合いです。

サラリーマンの鉄則 その五。
「男は拳で語り合え」


サラリーマン金太郎 (6)

集英社

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遙洋子「東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ」

2005-04-24 08:42:09 | 書評
戦う理由


政治論争で螺旋に陥ってしまいがちな「米軍基地」と「日本の自立」。

・「米軍基地」があるうちは、完全に「日本は自立」できない。
・現実の問題として「日本の自立」には、「米軍基地」がなくては維持できない。

強力な軍隊がなくては国益を守ることはできないという考えを中心にすると、その「強力な軍隊」を自前で用意するか、他人から借りてくるか。
自前で用意するなんて大変だから他人から借りてしまえ、と現状を追認するか?
それとも、理想の独歩を求めて、予想されうる多くの困難を引き受けるべきか?

まぁ、「米軍基地」と「日本の自立」に限らず、理想と現実の溝にはいつも横たわる課題です。


さて遙洋子の「東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ」です。

遙洋子…………どこかで聞いたことがあるような? 関西を中心として活躍しているタレントさんなのでしょうか?
それとも、こんな攻撃的な本を出したから、ほされたか?


上野千鶴子と言えば、フェミニズムに興味のない僕でも、知っている学者さんです。
「そんな高名な学者に、タレントが真面目に勉強しに行く」というのが、本書の内容です。

著者自身が「素人に毛が生えた」というレベルなので、そのためフェミニズムについて書かれてはいますが、文章が著者の知識の範囲を超えることはないです。知ったか、をすることはないです。
なので、僕程度でも、サクサク読めます。


しかし、この本の肝はフェミニズムではありません。タイトル通り、「ケンカを学ぶ」です。極論すればフェミニズムなんか、関係ないです。


女性を誹謗中傷する言葉に人は事欠かない。
「行かず後家のねたみ。」
「ブスのひがみ。」
「お前の男関係をバラしてやろうか。」
「結婚してからしゃべれ。」
 そこからやがて議論は子供のケンカの様相となり、本来のテーマは姿を消す。
 ブスへの容赦ない制裁で多くの女性が押し黙る、よくある構図を避けるには、一瞬のうちにぐうの音も出ないほどの勝ちが必要とされる。勝つ人の論理を私は教わりたかった。が、意外な答えがかえってきた。
「相手にとどめを刺しちゃいけません。」
 そのごもっともな御意見に私は多少なりとも、失望を覚えた。それは子供の頃からよく母親に言われた「ケンカしちゃいけません」を彷彿させる。
「なんで? なんでとどめを刺しちゃいけないんですか?」
「その世界であなたが嫌われ者になる。それは得策じゃない。あなたは、とどめを刺すやり方を覚えるのではなく、相手をもてあそぶやり方を覚えて帰りなさい。」
 私は鳥肌が立った。やっぱ、本物だ、と思った。
「議論の勝敗は本人が決めるのではない。聴衆が決めます。相手をもてあそんでおけば、勝ちはおのずと決まるもの。それ以上する必要も、必然もない。」
 教授は今度はニコッと微笑んで言った。
「男をもてあそんだら、真っ赤になって怒って面白いわよ。」
 本物は違う。ケンカに負けたとき、数々の先輩が助言してくれたが、このアドバイスになぜもっと早く出会わなかったかと、負け続けた二十代を振り返った。
遙洋子「東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ」23~24頁 ちくま文庫
なるほどねーと、男の僕も感心したわけですが、なにか一抹の違和感が残る。なんか釈然としない。なんだろうと考えると、「負け続けた二十代を振り返った」という言葉。

今現在、僕は二十代最後の日々を生きております。いろいろなものに、現在進行形で「負け続け」ております。
しかし、人と論戦して負けたことがあるだろうか? と自問すると、…………ほとんど、ないのでは?

それは、自分が論争の巧者というわけではありません。単純に、試合回数が少ないのです。
そして、意見が衝突すると、目上の人間であれば「あぁ、そうかもしれませんねぇー」と適当に相槌を打ち、目下の人間であれば「そういう考え方もあるのかなぁ」と適当に言葉を濁して、話題を強制的に終了してきました。

どうなんでしょう? 多くの人間は、大なり小なり僕と同じように生きてきたのではないでしょうか?

タレントや学者といった特殊な職業でもなければ、絶えず論争の勝者になる必要がないどころか、敢えて勝利を貪欲に望もうとすれば、普通の世渡りにはむしろ不都合なのでは?


しかし、芸能界は分からないですが、大学に在籍していた経験から思うに、学者の世界でも、熾烈な言い争いの最中に効果的な即答が必要とされる場面など、そんなにないような?
多くの論争は、紙面を介して行われているように感じられました。ですから、理路整然とした文章で多角的にじっくりと論難する能力が求められても、その場その場で瞬時に切っ先鋭い寸言でもって相手をやりこめることが、必須だったとは思えないのですが…………。

 仕事場で一番元気なのはコギャルだった。人気商売である以上、そこはさまざまな勢力図が広がる。そう、今、最も評価を受けている人間が最高権力者として、局を闊歩する。ただ、他の職場と同じく、人気とは別のところで、男性が年齢とともに自分のポジションを認知させていくのとは逆に、女性は年々居場所が無くなる感が否めない。
そこでは、女に限って若ければ若いほどもてはやされ、その若さの証として無知であることが評価され、その延長で、言葉遣いの乱れに出会うとオヤジたちは狂喜乱舞する。
遙洋子「東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ」56頁 ちくま文庫
「仕事場」といっているのは、芸能界のことです。「コギャル」が持てはやされているという記述に、ちょっと時代を感じてしまいますが(タモさんが、コギャル言葉に大喜びしていた時期ですな)、指摘している構図自体は、今も色あせてはいないのでは?
それどころか、この状態というのは、芸能界に限定する必要もなく、今も日本全体をおおっているように思えます。

つまりは、こういうものと戦うのがフェミニズムであり、その敵は思想であり、経済であり、文学であり、国家であり、社会であり、哲学であり、結婚であり、体制であり、常識であり、老人であり、若者であり、子供であり、家族であり、男であり、女でもあるわけだ。
こういう四方八方を敵で囲まれている環境下において、絶えず女性という自分を守り続けなければいけないのだから、結局「ディスカッション」なんて隠微な姿勢で収まるはずはなく、「ケンカ」という直接的な方法が求められるわけですな。

そういう意味で、やはり本書はフェミニズムの本なんですな。


おまけ。
どうでもいいことなんですが、
「もう、女の価値は美にはないわよ。自分の妻は美しいことより、医者であるとか、金持ちであるとか、有名な画家であるとか。女の価値は変動しました。」
遙洋子「東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ」53頁 ちくま文庫
という上野千鶴子の言葉が載っておりますが、まだまだ、そんなことはないと思うぞ。


東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ

筑摩書房

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本宮ひろ志「サラリーマン金太郎 (5)」

2005-04-23 15:46:13 | 書評
鷹司誠士はサングラスです。僕の拙いサラリーマン人生では、会社でグラサンには、会えませんでした。


「サラリーマン金太郎 (5)」です。後、25巻待っています。25巻読むことよりも、25巻分の感想を書くのかと思うと、少々うんざりです(嫌なら書かなければいいだけの話ですが)。


この五巻で、ようやく六分の一終了になります。

ここまでで分かったのは、金太郎の味方(理解者)は、嫌な登場をするということです。

黒川優作 ……… 下の社員に恐れられており、傲岸に振る舞っているように見える。が、実はいい人。
三田善吉 ……… 財界のフィクサーとして、息子に怪我をさせた金太郎を痛めつけようとする。が、実はいい人。
一ツ橋伸吾 …… 現場の責任者。工事のサボタージュを指示し、会社から金を巻き上げようとしている。が、実はいい人。
中村加代 ……… パチンコ屋で、人にたかって遊んでいる。が、実はいい人。

サラリーマンの鉄則 その五。
初対面は嫌な人。


さて、今回は鷹司誠士が登場。黒川社長が、未来の会社を担う人間と見込んで通産省から引っ張ってきた男です。
彼の初対面は…………まったく、普通です。それどころか、金太郎をライバルとして評価すらしています。

これは、駄目なパターンでは? と密かに危惧しておりましたが、案の定、金太郎には、こんなことを言われてしまいます。これが、今日の金太郎の名言でもあります。
俺ね……
あんたをまるっきり信用してねえよ
本宮ひろ志「サラリーマン金太郎 (5)」194頁 ヤングジャンプ・コミックス
この一言なのですが、けっこう唐突に言い出します。なにが気に食わなかったのでしょうか?

以前、悪玉として追い出された大島社長も官僚出身でしたから、そこなんですかねぇ。


サラリーマン金太郎 (5)

集英社

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大和和紀「あさきゆめみし (3)」

2005-04-22 08:28:01 | 書評
もう第何次なんだか


「あさきゆめみし (3)」です。
光源氏は相変わらずもてまくって、なにを思ったのか「六条の院」という豪邸を建てて、かつて関係のあった女を呼び集めて、一緒に暮らし始めます。

これは、いつまでも男に愛されていたという女の夢なのでしょうか?
それとも、多くの女を集めてハーレムをつくりたいという男の夢なのでしょうか?

新しく若い女だけを集めるのではなく、新旧の女を一緒くたにしてしまうところに、「スーパーロボット大戦」的な楽しみをしたかったのかなぁ………。


で、「六条の院」には、亡き夕顔の娘である玉鬘も一緒に住むことになりました。
玉鬘の実父は光源氏の政治上のライバルである頭の中将です。ですが、すっかり彼女は忘れ去られており、肥前で乳母の家族に養われて育ちます。美しい女性となった玉鬘には求婚者が多いのですが、京に戻る夢を諦めきれません。それで太夫の監から強引に求婚されたのを機に、あてもなく上京します。そこで、玉鬘を拾ったのが光源氏です。
玉鬘には、まったく後ろ盾がない状態。それに対して、光源氏は非常な権勢を誇っている好色家。で、当然の成り行きで、玉鬘は押し倒されそうになります。
玉鬘 「……そんな……! あなたさまは……わたくしのお父上さまではありませぬか……!」
光源氏「親としての愛にもうひとつの愛が加わるのがいけないことですか?」
大和和紀「あさきゆめみし (3)」386頁 講談社漫画文庫
相変わらず、お見事な返答です。

身寄りのない不幸な女性を囲って、関係を強引に迫るなんて、エロ漫画の世界だな………、しかも相手から嫌われないのだから、さすが大したものです。


あさきゆめみし―源氏物語 (3)

講談社

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本宮ひろ志「サラリーマン金太郎 (4)」

2005-04-21 08:55:40 | 書評
必ずしも太い方がいいわけじゃないらしいですよ(負け惜しみ)


他はどうだか知りませんが、うちの田舎の高校受験は、普通は公立一本・私立一本でした。だいたいの人が、公立がメインで、私立がサブだったように思われます。ですので、自信があると、公立一本にしぼる方もいました。

で、僕の高校は公立でした。受験する機会が少ないので、記念受験するような人間はいません。また滑り止めは私立を選びますから、うちの高校を受ける際は、ほぼ100%が真剣に試験を受けていました。


日本史の教師が話してくれたこと。面接の場面で、彼が本当に体験したこと。

さて、いつものように部屋に受験生が入ってくる。例によって、入室してきた受験生は、教師から「お座りください」と言われるまで突っ立っている。そして、いつものように「はい」と礼儀正しく答えて、座る。教師はいつものように、
「お名前は?」
と聞く。すると、その受験生は、
「センマサオです」
と言う。彼の顔は、いたって真面目。教師は、同姓同名かと思い手元の資料を見るが、違っている。しかも、彼は別に千昌夫には似ていない。

つまり、多くの日本人にとって人生の最初の試練となる高校受験の場で、その受験生はシュールなギャグを飛ばしたのです。

その豪胆な受験生は、後に東大に合格。IT会社を設立して、M&Aで次々と合併・吸収をくり返すことで、一代で巨大な会社をつくりあげ、ついにはフジテレビをも飲みこもうと挑み、世間をあっと言わせることになりました……………というのは嘘です。


そんなことを思い出した「サラリーマン金太郎 (4)」。

ついに正社員として採用された金ちゃんが、新人研修を受けるのですが、いきなり「役員会に参加させてくれ」と社長に要望を提出します。さすが金ちゃんです。普通の新入社員では、できないことです。


…………しかし「センマサオ」の彼は、どうしているのかなぁ?
そもそも、うちの高校には合格したのだろうか?

まぁそれは置いといて。

金ちゃんは、男フェロモン全開で難事を次々と解決していきます。
その調子で、財界人が使うようなクラブのママも、顔つき(オーラ)だけで落としてしまいます。

今日の金ちゃんの一言は、そのママに迫られたときの言葉。
俺……
あまり
うまくねえぜ
本宮ひろ志「サラリーマン金太郎 (4)」72頁 ヤングジャンプ・コミックス

サラリーマンの鉄則 その四。
「正直たれ」


サラリーマン金太郎 (4)

集英社

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ブラッド・バード「アイアン・ジャイアント」

2005-04-20 08:40:18 | 映画評
食べた鉄は、どこから出しているんだ?


マイケル・ムーアの「ボウリング・フォー・コロンバイン」でチャールトン・ヘストンが、
「I have a gun」
と猟銃(かな?)を片手に叫んでいるシーンが大好きです。

あれを見る度に、「アメリカっておもろいなぁ」と思います。


日本人からすると、「銃規制しないことには、始まらないだろ?」と思ってしまうのですが、どうも、そう簡単にはいかないようでして。
利権がからんでいるということを云々する前に、「銃こそアメリカの象徴」という考えがあるようで、ある種の人にとっては飯の種とか票田とか以前に、「銃の否定」ということは「アメリカの否定」にすら感じてしまうようです。


で、「アイアン・ジャイアント」を見ました。

おそらくはソ連の兵器と思われる巨大なロボットがアメリカに落下します。で、そこに住む母子家庭の子供と偶然出会います。後は、お約束の展開。母子家庭の子供は孤独を癒し、ロボットには心が芽生えていきます。

そのロボットが兵器である自分を棄てようとして言うセリフが、
「I not gun」
なんですよ。

「僕は兵器じゃない」ではなく、「僕は銃じゃない」と言うところにアメリカを感じますなぁ~。


で、映像自体もアメリカ。アニメですが「萌え」はないですし、ロボットのデザインもあのヒゲの衝撃を思い起こさせるような、雄々しいものです。

まぁ子供と見るには、ちょうどよろしいのでは?


アイアン・ジャイアント 特別版

ワーナー・ホーム・ビデオ

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