すんけい ぶろぐ

雑感や書評など

糸井重里・ほぼ日刊イトイ新聞「オトナ語の謎。」

2005-06-01 09:12:05 | 書評
はやく大人になりたいー


知人が「大人は汚れている、とか言うけど、子供も、そんなに純粋でもないよな」と語っていたことがあります。
言い得て妙だと思います。

けっこう、大人の世界も、優しさに満ちていますよね。(まぁ欺瞞に満ちているとも言えますが)


そんな「オトナ」の事情を、うまく包み隠してくれる言葉を集めた「オトナ語の謎。」を読みました。

[そうなんですねー]
 「さようでございますか」だとかしこまりすぎで、「そうなんですか?」だと驚きすぎで、「そうなんですよね」だと同意しすぎ。そういう事情はなんとなく知っていたんですけどやっぱりそういうことでしたか、そういうふうなことになりますよね、私もそういうふうになると思いますよ、というしつに微妙なニュアンスを表現する、これぞまさにオトナ語。経緯、親しみ、踏み込みすぎない礼儀、など複雑に入り組む感情を見事に表現している。
監修・糸井重里 編・ほぼ日刊イトイ新聞「オトナ語の謎。」207頁 新潮文庫
小首を傾げながら言うと、ちょうどいいですよね。


[~させていただく]
 武士道とは、死ぬことと見つけたり! オトナとは、へりくだることと見つけたり!
「こちらで発送させていただきます」
「もちろん、苦情はこちらで処理させていただきます」
「喜んでこちらで尻ぬぐいさせていただきます」
 ほんとのオトナはどんなへりくだりだって恥ずかしく思ったりしないんだぜ。

[~させていただく形式をとらせていただいております]
 一方、こちらの言葉はへりくだっているようにみせかけて、相手に紳士的に同意を追っている。みんなそういうふうにしてくれているのであなたももちろんそうしてくださいね、の意味が込められているので、「こうしてもらうことはできますかね?」などと言ってはいけない。

[いかようにも]
 もう、あなたが言うことなら、どうとでも私はするのです、と、これほどまでに低姿勢になりながら、それでもさらにへりくだることは忘れないのです。
 「ご指摘いただければ、いかようにも対処いたします」
 ――へりくだること、無限。
 オトナは書き初めでそう書いたとか。

[してもらってかまわない]
 かと思うと、先方からこんな高飛車な言い回しが!
 「ぜひぜひ、弊社に承らせていただきたく……」
 「まあ、ウチとしては、してもらってかまわないけどね」
 ああ、社会における力関係とは、かくも両者の言語を隔たらせしものか。耐えるオトナの脳裏に浮かぶ言葉。
 ――へりくだること、無限。
監修・糸井重里 編・ほぼ日刊イトイ新聞「オトナ語の謎。」228~229頁 新潮文庫
へりくだって、へりくだって、相手が調子に乗ってきたら、「ブタが、どんどん太る太る、フフフフ」と内心で笑うようにしております。

不思議なもので、そうやってると、へりくだるのが面白くなってきます。

皆様も、お試し下さい。


オトナ語の謎。

新潮社

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