平安時代の末、平家が栄えていた頃、
遠江の国・池田の宿に、花のように美しく優しい熊野(ゆや)という娘
がおりました。
遠江の国府・見付(現在の磐田市)に赴任していた平宗盛に見初められた
熊野は、やがて宗盛と共に都へ上って行きました。
宗盛と幸せな日々を送っていた熊野のもとに、ある日、母の病の報
せが届きます。
いかにせん都の春も惜しけれど
なれしあずまの花やちるらん
(都も離れがたいが、故郷で命をを散らそうとしている母が心配です)
熊野は京を離れ母の元に駆けつけましたが、母の命は長くありませんでした。
更に愛する宗盛の戦死と平家滅亡を聞いた熊野は、尼となり静かに生涯を
終えました。
熊野が祈りを捧げた庵のあとの行興寺の庭には今も母のために熊野が
植えた藤の花が、毎年長い花房をつけています。
行興寺の山門をくぐると満開の長藤に包まれました。
本堂でお参りです。
熊野御前とその母親の墓の前のお堂には線香がたかれ、お供え物を携えられていました。
お寺の境内は長藤の甘い香りに包まれて、別天地のようでした。
長藤をパチリ。