
ワークショップも三日目。
今回は脳出血急性期に降圧療法が効くかどうかのトライアルです。
脳出血急性期は血圧が高いことがほとんどです。
頭の中の圧力が上がって、頭痛がしますし、気持ち悪くなる患者さんが多いのです。
このため病院に運ばれて来る時には大抵160とか180、時には200以上になっている人がいます。
脳の中の出血がまだじわじわと出ていたり、一旦止まっていても再出血すると大変です。
症状が悪くなるからです。
このため急性期は血圧を下げるのが常識ですが、実はこの「常識」には証拠となるデータがありません。
証拠のことを英語で「エビデンス:evidence」と言います。
エビデンスがないので仕方がない...ですまさずに、きちっと作りにいくのがアメリカのえらいところです。
前列に座っている水色の服の男性はDr. Qureshiという有名な先生で、脳血管の臨床研究に関する論文をすごい勢いで発表されています。
インド系の方ですが、インターネットで調べても論文が200以上ヒットします。
今回のランダム化研究も、以前に発表したATACHという研究を元に計画したものです。
世の中には頭のいい人がいるもんですねー。
現在Dr. Qureshiはミネソタ大学に「Qureshi Stroke Research Center」つまり「Qureshi脳卒中研究センター」を設立して研究されています。業績がすごければ場が与えられる。アメリカはそういうところがすごいですね。
その人と共同研究するのが、国循の豊田先生。以前にも紹介しましたが、日本の脳卒中内科のホープです。今回は私たちも共同研究者の候補として参加させて頂きました。
「日本はアメリカに相手にされないから共同臨床研究など参加できない」と思っていましたが、今回の参加メンバーは明らかに日本を認めてくれていて、是非参加してほしいという雰囲気でした。その仲介をしてくれたのが、前列のDr. Paleshさん。アメリカで育った日本人の方です。
こういった方の協力、日本の政府の協力、そして参加メンバーが力を合わせれば、ひょっとすると「夢のまた夢」だった国際共同研究が、今後、進んでくるかもしれません。
日本の医療はレベルが高いし、きっちりとしている。与えられた条件の中で、非常に緻密に医療が行われていると思います。
ですからこういう臨床研究は強いはずです。
日本の脳卒中医療が世界の舞台に上がる時がそろそろやってきそうです。
それを成し遂げるのは、やはり国循の脳内科の先生達のようです。微力ながら応援したいと思います。