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脳動脈瘤 その4 脳動脈瘤と遺伝

2019年11月09日 | その他
さて、今回は脳動脈瘤と遺伝についてお話しします。
あなたのご家族に脳動脈瘤があると診断されたら、「ひょっとしたら自分も?」とか、「子供に遺伝しないか?」と心配になりますよね。実際、脳動脈瘤と診断された患者さんやそのご家族からよく質問を受けます。
「家族全員がMRIを受けたが、誰も異常はなかった」という患者さんがおられる一方で、これから紹介するようなこともあります。

                    

ある患者さんがくも膜下出血で搬入されてきました。極めて重症でしたが、ご家族の希望があったため緊急手術を行って集中治療を行いました。正直、私たちでさえ「もう助からない」と思うほど重症だったのですが、スタッフの懸命な治療によって奇跡的に一命を取り留め、なんと最終的に社会復帰されました。本当に運の強い方だったと思います。
さて、ある日、その方の弟さんが外来で「私たちは大丈夫でしょうか?」と質問されました。私は「脳動脈瘤は明確な遺伝病ではありません。しかし、脳動脈瘤が診断された家系では、脳動脈瘤の診断率がやや高いと報告されています。一度、MRIを受けてみてはどうでしょうか?」とお話ししました。
このようなお話をしても、検査を受けない人が多いのですが、その方はお兄さんが重症だったためかMRIを予約して帰宅されました。そして後日、外来でMRIを一緒に確認したところ、なんとお兄さんと全く同じ場所に同じようなサイズの動脈瘤があったのです。ご本人は大変驚き、動揺されたご様子で、「先生、すぐに手術してください!」と治療を希望されました。
後日、少し落ち着かれてからご家族とともに再度説明を行いましたが、やはり予定通り手術を行うこととなりました。
幸い治療は無事に終わり、患者さんも私たちも胸をなでおろした、という経過です。

                    

このように兄弟や親子で全く同じ場所に動脈瘤を認めることがありますし、家族の中に動脈瘤のある人がいる場合には家族歴のない場合に比べて3-4倍の確率で脳動脈瘤が見つかると言われています。やっぱり、兄弟や親子では顔や形が似るように、血管も似ているのでしょうね。
したがって、親族に脳動脈瘤がある場合には一度MRIを受けると良いと思います。

さて一方で、脳動脈瘤を合併しやすい病気もあります。
有名なのは多発性囊胞腎という病気ですが、それ以外にもいくつかの遺伝病(Ehlers-Danlos IV 型,Marfan症候群,神経線維腫症 1型など)で脳動脈瘤の診断頻度が高いとされています。
ある種の脳腫瘍や脳動脈硬化疾患を有する患者さんも、診断率が高いというデータがあります。

脳動脈瘤と遺伝、家族歴についてお話ししました。
次回は脳動脈瘤の増大についてお話しします。


追記:
まさにこの記事をアップした直後、外来で診察した患者さんのご兄弟が重症のくも膜下出血を起こされてしまった、と聞きました。MRIはまず無害の検査です。ぜひ家族歴のある方は受けていただきたいと思います。

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1 コメント

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検査します (ひらめ)
2019-11-11 20:30:46
母親がくも膜下出血です。今までそのままにしていましたが、先生のこのブログを見て決心しました。MRI検査をします。どこで依頼すればいいんでしょうか?脳ドックでしょうか?
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