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臓器移植

2010年08月10日 | 閑話休題
臓器移植法改正後、初めての脳死移植が行われました。
これまでは本人が移植に書面で同意し(臓器提供意思表示カードを所有)、かつその記載に間違いがなく、さらに家族の反対がない場合にのみ、脳死状態からの移植が可能でした。
私自身も臓器提供意思表示カードを所有しており、もしもの場合には移植に反対しないよう家族にお願いしています。
しかし実際には、このような条件が全て整うケースは非常に少なく、現にこれほど重症患者を多く扱う私たちの施設でも脳死移植を経験したことがありません。

このため心臓や肺の重度の病気を持ち、移植でしか生命を維持できない患者さんは、唯一の可能性を求めて海外で移植を受けることを余儀なくされてきました。多くは募金等でその資金を賄うことになりますし、海外で大きな治療を受けるのは本当に大変だと思います。
また心停止後でも提供できる腎臓等の提供も日本では少ないため、中国等で金銭によって移植を受けるケースも増加して、国際問題になっています。

さらにもう一つ大きな問題だったのは、これまでの法律では日本では小児からの臓器提供が認められていなかったことです。ですから子供の心臓病や肝臓病の患者さんは、海外で移植手術を受けるしかありませんでした。これまで何度も海外で移植を受けたという報道を目にされたことがあると思います。アメリカや他のアジアでは可能で、日本だけダメというのはどれだけ論理を振りかざしても理屈が通りません。

ですから私は基本的に今回の改正については賛成です。
確かに脳死の判定にはグレーゾーンがないわけではありませんので、警鐘を鳴らす方もおられます。
私も脳死判定等は極めて慎重に行うべきと考えますが、上記のような状況を考えた場合、前に進めることも重要だと思います。

関連学会では今回の改正で、脳死移植が10倍程度に増加すると見込んでいるとのことです。
それでもまだまだ足りないでしょう。それは、移植を待ちながら亡くなられていく患者さんがいるということです。
今後、日本でも脳死移植が発展することを願っています。
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1 コメント

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カード (柴犬好き)
2010-08-11 23:48:13
臓器移植については、時々耳にします。


最近考えるのは、私はもやもや病なので、もし死んだら研究に役立ててもらえないかとか、脳死になれば臓器提供を…ということ。


でも、家族がどう思うかを考えたら、なかなか答えは出せません。


手術をしてせっかく助けていただいたので、まだまだ生きるつもりだけど。


提供の意思は、昔はカードだったけど今は保険証の裏面に記載できるので、書いてはおこうと思ってます。
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