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臓器提供の現状

2017年06月08日 | その他
みなさん、日本の臓器提供の現状をご存じでしょうか?上のグラフを見てください。なんと世界のダントツの最低レベルなのです。

それは腎臓についても例外ではありません。わが国では透析を受けている人がとても多く、2014年には32万人以上と報告されています。日本では臓器提供が極めて少なく、腎移植を待っていてもなかなか回ってこない現状なのです。実際、日本の腎移植の待機期間は14年7ヶ月となっています。
(日本臓器移植ネットワーク https://www.jotnw.or.jp/transplant/about_kidney.html)

私は岐阜大学在職中に「県内で腎臓の提供が不足している」との相談を受け、当時のスタッフと臓器提供に前向きに取り組んできました。その後、2013年に兵庫医大に異動しましたが、兵庫県でもやはり腎臓の提供が足りない状況でした。このため、先日同門会で講演して頂いた野島教授とともに、取り組みを進めています。

「脳神経外科医にとって腎臓移植なんて専門外なのになぜ?」と良く聞かれます。
私が積極的に取り組んでいる理由は、私の恩師の坂井昇先生(岐阜大学脳神経外科前教授)の奥様である留美子先生からお聞きした言葉がきっかけです。先生は神戸市内でも有名な透析専門医でいらっしゃいますが「腎移植はすごい。透析でどうしても良く出来ないデータが移植をするとあっという間に良くなる。全てがリセットできるすごい治療だ」と教えて頂いたのです。腎移植が増えたら自分の患者がいなくなってしまう透析の専門家がこのように明言されるのですから、「腎移植が患者さんを良くすることは間違いない」と思いました。

しかし日本の現状は先に述べたとおりです。腎移植を受けられずに亡くなる人も少なくないと聞きます。待機期間が長すぎるのです。
そこで、とにかく提供の候補となる場合は臓器移植ネットワークの方の説明を聞いて頂くようにしています。もちろん、同意が得られないこともありますが、お声がけしてはじめてご本人がもともと提供の意思を持っておられたことが分かったこともありました。
これまで数十名の方が私たちの取り組みで腎移植を受けたことになります。

みなさんは移植にどんなイメージをお持ちですか?色々な意見があると思いますし、いずれは自分の体の細胞から腎臓が作れるようになるかもしれません。しかし現時点ではそれはまだ夢です。私たちは一人でも多くの方が救われるよう、この方面にも取り組んでいきたいと思っています。
コメント (1)
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