リサイクル
AERA今週号に,長坂真護という美術家のことが紹介されていた。その経歴は多彩で,ストリートアーティストとして,中古車に積んだ自分の作品を売り歩き,ようやく認められると,そのポジションに飽き足らず,アメリカまで出かけて行って挫折する。友人に助けられ,その思想に感化されて,人を幸せにする作品を書きたいと思うようになる。たまたま読んだ雑誌の記事から,ガーナのアグボグブロシーのことを知り,何の伝手もなしに単身でそこに飛び込む。
アグボグブロシーには,東京ドーム32個分の広さのところに,先進国から毎年25万トンの電子廃棄物が持ち込まれる。ここに暮らす3万人の住民は廃棄物を燃やし,残った金属を売って暮らしを立てている。大気汚染,有害物質のせいで,30代で命を落とす人が多い。
長坂は,この環境を何とかしたいと考え,廃材を日本に持ち帰り,それをキャンバスに張り付けて,油絵を製作する。この作品は評判を呼び,SDGsをめざす企業などからの買い上げが増え,年収は2018年には5千万円,そして今年は,10億円の収入が見込まれている。
彼は収入の5%だけを自分のために使い,95%をアグボグブロシーに投資し,学校を建設し,リサイクル工場の設立を目指し,オリーブ農場の運営に参与している。そのために,彼は年間600点の創作活動を行っている。今後は自分の取り分を1%にする予定である。
このようにして,廃棄物を押し付けている企業の利益の一部は,美術を媒介にして,アグボグブロシーに還元される。
わたしはこの記事を読んで,わたしから見たら37歳の若者が,個人でこれだけのことを成し遂げていることに驚嘆した。もちろん,彼の画家としての才能がそれを可能にしているだろうが,素晴らしい実行力である。
個人の力だけではなく,社会的・組織的に,処理の危険性,意義を正当に評価し,依頼する側が得ている利益の,引き受ける側への還元が十分になされるようになれば,それはある意味で素晴らしいリサイクルになるのではなかろうか。
ノーベル賞
今年のノーベル物理学賞が,真鍋淑郎さんに授与されることになった。賞を分かち合うクラウス・ハッセルマンさん(ドイツ)とジョルジョ・パリーシさん(イタリア)は,それぞれ母国の大学を卒業し,母国で研究を続けられた。真鍋さんは東大を卒業したが,研究はアメリカで行われた。
ちょっと寂しくないかな。
サークル再開
2ヶ月ぶりに,コカリナサークル「ひびき」の例会があった。全員出席。やっぱりアンサンブルは楽しい。