羽花山人日記

徒然なるままに

年の暮れ

2022-12-29 15:22:06 | 日記

年 の 暮 れ

年末を迎え,「今年の10大ニュース」がいろいろなところから発表されている。

いずれも,安部元首相銃撃事件がトップに来ている。明るいニュースはスポーツ界のもので,世相は晴れ上がっていない。

来年の10大ニュースに願いを込めるとすれば,「ウクライナに平和が訪れる」,「岸田首相が防衛力強化の方針を撤回する」。いずれもはかない望みだろうか。

朝日新聞に「かたえくぼ」という欄があり,紙面をめくる途中で,ジョークに目を走らせている。当然シニカルなものが多いが,中には微笑ましいものもあり,ホッとさせられる。

今日の紙面に,今年下半期掲載の「かたえくぼ」から選抜された18のジョークが載っている。その中から,恣意的に選んだ5つを引用する。

 

『途切れない』

弔問の列 ― 英国

批判の声 ― 日本

神奈川・露安様  9月17日

 

『もうアキアキ』

― 毎日が「醜聞の日」

神奈川・妄言爺様  9月24日

 

『村上56号』

すごい!!2倍だ!!

― 鉄人28号

兵庫・ジロリンタン様  10月5日

 

『閣僚の辞任』

交代は5人までらしいよ

―にわかサッカーファン

東京・でんのすけ様  11月26日

 

『追加』

ブラボー

―流行語大賞

北海道・えびす様  12月3日

 

よいお年をお迎えください

ンションの玄関に門松が立った。今年も後二日。

三が日が明けるまで休筆します。

このブログを訪ねてくださったすべての皆様,どうか良いお年をお迎えください。

 

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渡辺京二さん

2022-12-27 18:43:06 | 日記

渡辺京二さん

渡辺京二さんが一昨日亡くなった。享年92歳。

渡辺さんは,水俣病の語り部,石牟礼道子さんの伴走者として知られている。西日本新聞の追悼記事によれば,石牟礼さんのご長男は,「渡辺さんなしに『苦海浄土』は生まれなかった」と,述べられているという。

渡辺さんも,石牟礼さんの才能と情念を高く評価しつつ,危なっかしくて見ていられないと,いつも付き添っていたという。しかも,優れた編集者として。

渡辺さんは思想史家として多くの著作を上梓しているが,わたしが読んだのは『逝きし世の面影』1冊だけである。

新聞の書評で,『逝きし世の面影』の書名を見た時,著者の渡辺京二が,水俣病の渡辺さんと結びつかず,同一人物であることを知るまでにしばらく時間がかかった。

平凡社ライブラリーとして2005年に出版された文庫版600頁を,夜寝床の中で読み継いで,約2ヶ月かかって読了した。

渡辺さんは,江戸末期から明治中期に至る日本の庶民社会の様相を,類まれで特異的な文明であると規定し,日本の近代化に伴って,実は優しく豊かだったこの文明が滅亡したことを指摘する。そして,近代を語る上でこの文明の諸相を知り,理解することが重要であるとして,当時日本に滞在していた外国人の日記や書簡など,膨大な数の記録を読み解いて,外国人の目を通して見た世相を記述している。

渡辺さんが亡くなられたことを聞いて,『逝きし世の面影』を取り出し,目を通した。巻末の膨大な参考資料のリストを見て,そのすごさに改めてに感嘆した。

町の図書館に,何冊か渡辺さんの著作があるので,折に触れて読んでみたい。

ご冥福を祈ります。

 

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クリスマスキャロル

2022-12-25 19:50:30 | 日記

クリスマスキャロル

土曜日の夜は,カミさんと一緒に刑事コロンボを録画で見てから寝る習慣になっている。

昨晩は,なぜか録画が不調だったため,やはり録画してあった『クラシックTV』の再放送を見た。タイトルは「知っているようで知らないクリスマスソング」。クリスマス文化研究家の木村正弘さんをゲストに迎えて,クリスマスソングの歴史をたどった。

クリスマスの歌に相当するものは4世紀ころに存在したようだが,知る術がなく,8世紀の単旋律の教会音楽が,クリスマスソングのルーツとなった。本格的なクリスマスソングは,バッハからで,民衆の音楽,キャロルがクリスマスにくっついて,クリスマスキャロルが生まれた。それがアメリカで商業主義に取り入れられてさらに華やかになり,オーケストラ,映画音楽,ポップス歌手と範囲を広げていった。

以上が概略わたしの理解した,クリスマスソングの歴史で,知らなかったこともいくつか紹介された。

例えば,サンタクロースは以前は二人いて,優しいサンタは良い子にプレゼントを,怖いサンタは悪い子に罰を与えたそうだ。また,ジングルベルの橇は本来馬が曳いていて,トナカイは登場していなかった。だから,ベルは馬齢である。

清塚信也さんに言われてなるほどと思ったが,クリスマスソングはすべてメジャーキーで作曲されているとのこと,希望と喜びを表現しているのだそうだ。

それぞれの時代を代表する歌が演奏され,楽しい番組だった。

最後は,ヴァイオリン,チェロ,ピアノのトリオによる清塚信也編曲のクリスマスソングメドレー。鈴木愛里さんが歌う山下達郎作詞・作曲の「クリスマス・イブ」(名曲だ!)で,番組は締められた。

結構イブの気分にさせられて眠りについた。

 

テレビの画面を撮影

Merry Christmas!

 

高校駅伝

全国高校駅伝が京都大路を駆け抜けた。女子の長野東高校に次いで,男子も長野勢の完全制覇と期待したが,佐久長聖は惜しくも2位に落ちた。

高校駅伝には数々の思い出がある。陸上部のマネージャーだったわたしは,走る選手の着替えを持って自転車で伴奏し,中継地点で次の選手の着替えを受け取りながら,42キロをゴールまで自転車を走らせた。

県予選で敗れ,帰りの列車が姨捨近くを通った時,列車の最後尾から眼下に暮れなずむ川中島に向かって,「バカ野郎」と大声で叫んだのを覚えている。選手を非難しての気持ちはさらさらなかったが。

 

今年は馬に見放され

今日は,年末恒例の「心の会」のネット忘年会があり,久しぶりに旧来の仲間の声を聞き,顔を見ることができた。

話題は病気・健康のことから始まったが,最年長で職場・労働環境問題がご専門のKさんから,環境改善における科学の限界と,それを突破する仲間の間での話し合いの重要性についての提起があり,そうした観点からあまり考えたことが無かったので,大変刺激を受けた。

談論風発,あっという間の2時間で,その間に今年最後の運試しの有馬記念があり,期待の三連複はすべて灰燼に帰していた。

イクイノックス,ボルドグフーシュ,ジェラルディーナは着目していたが,期待のタイトルホルダーが馬群に沈んでは如何ともしがたかった。

お馬さん,来年はもう少し微笑みかけてください。

 

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第九の余韻

2022-12-24 19:08:38 | 日記

第九の余韻

ベートーヴェンの第九を聴きに行って来た。年末恒例である。

東京は小原日和のような陽気で、原宿からNHKホールまで気持ちのいい散歩だった。

集まった高校同期生は、つれあいを含めて9名。去年より5名減っている。

ひところは30人以上だったのに、寄る年波とはいえ、いささか淋しい。

しかし、今日の肝煎りの村山弘さんは、来年の3月に、彼が育ててきたオーケストラの公演会を、弘前で開催するとのこと、その意気や壮である。

N響の演奏は素晴らしかった。

指揮者の井上道義さんは、再来年に引退することを表明していて、第九を振るのはこれが最後になるかもしれないとのこと。その熱気が伝わってきて、歯切れ良く盛り上がった演奏とともに、感動した。涙腺が緩くなっているのか,要所要所で涙が流れそうになった。

マスク無しの100名を越す合唱は圧倒的だった。心地よく歌声に身をゆだねた。

演奏後の舞台挨拶

 

余韻にしたりながら,来年もまた来たいと思った。今日来られなかったメンバーの復帰も願って。

 

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食べ物と食い物

2022-12-22 18:58:35 | 日記

食べ物と食い物

カミさんがキッチンに戻って,調理を始めた。火や,熱湯や,刃物を扱うのに不安があったので,用心して控えていたが,試みの昼食準備に問題がなかったので,徐々にキッチンの座を明け渡すことにした。

食卓に並べられた料理の数々を眺めて,今までわたしが作っていたものとはどこかが違うと感じる。なんとなく,温かみと艶がある。

例えば,ハンバーグステーキである。

わたしはレトルトものを温めて,刻みキャベツを添えるだけで,わがことなれりとする。

カミさんは挽肉,刻みタマネギその他の素材をこね回し,形を整えてフライパンに入れている。プレートには刻みキャベツのほかに,茹でたジャガイモと人参が添えられている。これだけでもう雰囲気が違う。

キャベツの歯触りが違うので,訊いてみると刻んだキャベツを水にさらしたそうで,そうすることでシャキシャキ感が増すという。

要するに手間暇かけて,出すものに気配りをしているということだ。また,それを可能にするレシピのストックを沢山持っているのである。

わたしはと言えば,たまさか料理をするときには,上の写真にあるアンチョコと首っ引きで,ゴールにたどり着けばホッとしてそこでおしまいである。付け合わせをどうするかとか,盛り付けをどうするかとかを考えるゆとりがない。

食べる人に喜んでもらえるように料理することと,食べられるものを出せばいいと考えるのとの間には,一歩にして千里の隔たり(芥川龍之介)がある。

カミさんの作るものを「食べ物」とすれば,わたしの作るものは「食い物」である。

 

冬      至

今日は冬至。冬至と言えばカボチャ。草間彌生さんにご登場願った。(松本市立美術館にて撮影)

 

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外交が見えない

2022-12-20 16:56:29 | 日記

外交が見えない

今日の朝日新聞「オピニオン&フォーラム」の欄に,元外務審議官の田中均さんへのインタビュー記事が載っていた。

田中さんはご自身で,平和主義者ではなく,日米安保条約を基幹とする日本の防衛政策を是とする立場だということを明言された上で,閣議決定された安保三文書についての見解を述べられている。

以下に,わたしなりに田中さんの発言内容を取捨選択し,要約して紹介する。

田中さんは,民主的な手続きで防衛費を適正レベルに増やすことに異論はないが,今回の閣議決定は戦後安保政策の大転換であり,防衛費の増額を前提に,十分な説明もなしに,戦後控えてきた反撃能力の取得に踏み切ったのは適切な政策とは思えないと断言される。

アメリカの強大な軍事力を東アジアに引き入れ,その上に立って近隣諸国との摩擦を軽減する役割を果たすのが,日本の生きる道だという。安倍内閣以来の中国や韓国に強く当たるという政治家の要請を受けて,国内の意見を外にぶつけるだけで,『外』と交わる外交が見えない。

軍事大国にはならないと安心感を与えつつ,まわりの国と関係を作ってきたのが日本外交の伝統で,中国,韓国,北朝鮮に強く当たるという安部外交は,結果を作るという意味では,実りある外交とは言えない。自衛隊関係者が水を得た魚のように防衛費拡充論をぶつのを見ると,怖いと感じる。

以上かいつまんで述べてきた田中さんの意見は,「保守本流」と言われる政治家たちがとってきた政策に通じるところがあるように感じる。田中さんも言われていることだが,その流れを汲む「宏池会」の岸田首相が公明党や野党の一部を巻き込んで,国の進路を誤らせようとしている。まさに危機的な状況である。

朝日新聞の最新の世論調査で,岸田内閣の支持率は31%と急落し,過去最低を記録している。

「民」の力に望みを託したい。

 

暁光の中の牛久大仏

自宅ベランダより撮影

 

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年の瀬

2022-12-19 20:54:51 | 日記

年  の  瀬

年の瀬を迎えると,いろいろなことが新規まき直しに向けて結末をつける。

わたしは,今日がコカリナ個人レッスンの年内吹き納めだった。現在の課題曲は「Cielito lindo」 と「桃色吐息」。残念ながら合格点はもらえず,年越しとなった。

鎌倉殿の13人:昨日,最終回を迎えた。日曜日,夕飯を食べながらNHKBSでほぼ毎週観ていた。吾妻鑑を底本にしているとか。歴史が好きな長男は,大方の大河ドラマがあまりにも歴史を逸脱しているので,観るのを拒否していたのだが,今回は観ていたようだ。歴史に忠実だったのだろう。

この時代は,大河ドラマにしばしば取り上げられていたが,北条家を中心にしたのは初めてだったようで,武家政治の始まりが丁寧に描かれていた。主人公がいわゆる快刀乱麻のヒーローではなく,シンネリムッツリの陰謀家だったのも珍しい。小栗旬,小池栄子はともに好演。

特に女性の話し言葉が現代風なのに,余り違和感を覚えなかったのは,三谷幸喜さんの脚本のすごいところだろう。とことんの善人は登場せず,人間の中に巣食う欲望が多角的に描かれていて,深みのあるストーリーだった。

FIFAワールドカップ:フランスとの死闘の末,アルゼンチンが優勝した。夜中の中継は敬遠し,ニュース番組でハイライトシーンを観た。ヨーロッパのプロサッカーチームでは活躍するのに,アルゼンチン代表としてのワールドカップではふるわないことを,マラドーナと比べられて母国で批判されていたメッシも,最高殊勲選手で留飲を下げたことだろう。アルゼンチンチーム応援歌の「島唄」が歌われていたかどうかは不明である。

日本が惜敗したクロアチアが3位となって,なんとなく日本も3位に手が届きそうな気分になる。

それにしても,数多あるスポーツ種目の中で,なぜサッカーだけが,世界中を熱狂させるのだろう。

ウクライナでは,ゼレンスキー大統領が提案したクリスマス休戦がロシアによって拒否され,平和は来年以降に持ち越しとなるのは確実だ。残念至極である。

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今年の「第九」

2022-12-17 19:57:11 | 日記

今年の「第九」

今日の朝日新聞の「耕論」は,「2022年の第九」と題して,三人の方の意見を掲載している。

指揮者の佐渡裕さん,音楽学者の岡田暁生さんはそれぞれ,コロナ・ウクライナに明け暮れた今年の暮れに演奏される第九に,特別の意味を付与する傾聴すべき意見を述べられているが,ウクライナ国立劇場の音楽監督・指揮者のミコラ・ジャジューザさんの意見が特に印象的だったので,以下にそれを紹介する。

ジャジューザさんは,オペラ,バレー,オーケストラの総勢200人とともに来日し,12月に第九を振るという。この困難な時期に日本に招かれたことに感謝し,次のように述べている。

ウクライナでは国外に逃れた音楽家たちが戻ってきている。自身もポーランドで活動していたが,ウクライナに戻り,演奏活動をしている。劇場の地下には防空壕があってその収容人員に観客数は制限され,停電や空襲でしばしば演奏が中断される。しかし,過酷な条件の中でも,ウクライナの国民は,新鮮な空気に触れるのと同じように,音楽を求めている。

これまでに何回も日本で第九を演奏し,日本人のこの曲への愛情を知っているが,今年の演奏は今までとは異なるものになる。劇場のメンバーは,この曲が平和と人類の友情を歌い上げているということを,戦争の日々を過ごす中で新たに感じている。日本の皆さんにはそれを感じ取って欲しい。

自分はソヴィエトで音楽を学んだが,ウクライナに平和が訪れるまで,ロシアの作曲家の作品は指揮しないと決めている。一日も早く平和が訪れ,今年とは違う歓喜に満ちた第九を,ウクライナ人だけでなく,世界の人々との合唱によって,この曲を共有したい。第九は人類への愛や友情を歌い上げた曲だから。

わたしは,毎年年末に,N響の首席ヴィオラ奏者だった村山弘さんを始め,高校同期の仲間と,N響の第九を聴いている。今年も24日に,久しぶりのNHKホールで,第九を聴くことになっている。年来の友と再会し,ともに第九に身をゆだねる楽しみを味わいたい。

合唱の冒頭で男声ソロが歌う,ベートーヴェン作詞の言葉,”友よ,この音ではない。心地よく歓びに満ちた歌をはじめよう。”に思いを寄せ,世界の人々が喜びを共に歌い上げる日が来ることを願って。

 

霜  枯  れ

二日ぶりに畑に行ってみたら,ヤーコンの葉が霜で枯れていた。例年だと,11月中旬には降霜があるのだが,約一か月遅い。気温は放射冷却による降霜に十分低い日が11月中にあったのに,風のせいだろうか。

 

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国のかたち

2022-12-15 20:11:07 | 日記

国のかたち

岸田首相は,敵基地への攻撃能力を含む,防衛力増強を提起している。

そして,この提起をめぐって,その財源をどう調達するかということが議論され,マスコミの報道もそこに重点が置かれているように見える。

しかし,待って欲しい。財源云々は防衛力増強を前提にした議論である。その前提についての議論はどうするのか。それ抜きで,岸田提案を既成事実化することは極めて危険なことだ。

憲法,なかんずく9条を骨抜きにし,「国のかたち」を換骨奪胎しようという,岸田首相の提起を根源から問い直す議論が,国会をはじめあらゆる場で必要である。

孫・子にこの提起の実現した「かたち」の日本を残すのは,余りにもつらい話だ。

 

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舟を編む(映画)

2022-12-13 19:58:14 | 日記

舟を編む(映画)

NHKのBSプレミアムで,映画『舟を編む』を見た。

2013年に公開された石井裕也監督による映画で,原作の三浦しをんさんの小説は,2011年に光文社から発行され,「本屋大賞」を獲得している。

わたしはこの小説を10年ほど前に読んでいるが,小説と同様に評判の高かった映画の方は初めて観た。

「舟を編む」とは言葉の海を航行する舟である辞書を編集するということで,映画は玄武書房という出版社における『大渡海』という中型の辞書編集の物語である。

1995年,長年辞書編集一筋で来た荒木光平が,妻の病気で出版社を辞めるところから,話は始まる。荒木の穴埋めに,馬締(まじめ)光也という社員がスカウトされてくる。名前だけでなく,性格までくそ真面目で無口・口下手の,この青年が映画の主人公である。

営業上の理由から,『大渡海』の編集が打ち切られそうになり,それを乗り切る話以外は特に大きな波乱はなく,馬締の下宿の大家さんの姪,香具矢への恋,辞書監修者の松本朋佑教授の病気を絡ませながら,映画は淡々と辞書編集の筋を追っている。

しかし,日々変化を遂げる日本語を解説する「今を生きる辞書」を目指す主人公をはじめとする関係者の情熱に,周辺の人たちが魅せられ,協力していく話の展開は,観るものを飽きさせない。

そして,編集開始から12年,ついに『大渡海』は完成する。だが,この辞書に命を吹き込んだ松本教授は,完成を待たずに他界する。

妻の香具矢とともに,松本教授の自宅を弔問した帰りに,馬締は教授がいつも眺めていた海を見つめ,香具矢に話しかけるところで映画は終わる。

原作者の三浦しをんさんは,執筆にあたって辞書編集の現場を丹念に取材されたという。それを反映して,映画では辞書を作り上げていく過程の凄まじさ,面白さを見ることができる。

一つの辞書を作るのに,短くて10年,長くて25年を要するという話がうなずける。

新しい言葉を探すために,合コンに教授が出席したり,若い女性たちが群れる場所で食事したりする。単語が一つ抜け落ちていることが見つかったことから,最初から照合をやり直すという正確さを追求する熱意には,厳しいものがある。辞書の紙質にも徹底的にこだわる。

松本教授から託された「恋」の語訳を,馬締は「ある人を好きになってしまい、寝ても覚めてもその人が頭から離れず、他のことが手につかなくなり、身悶えしたくなるような心の状態。 / 成就すれば、天にものぼる気持ちになる。」と書く。「右」の語訳に,馬締は「西を向いた時の北側」と答え,松本教授の「10と書いた時0のある方」に皆感心する。

主演の松田龍平(馬締),宮崎あおい(香具矢)共に好演である。特に松田龍平はこの映画の演技で,数々の主演男優賞を獲得している。

松田教授の加藤剛,同夫人の八千草薫,大家の渡辺美佐子など,故人となった懐かしい名優たちに会うことができた。

余談だが,2008年に発行された『広辞苑』第6版,第1刷の「ヤーコン」の語訳に明らかな誤りがあったので,そのことを知らせたところ,編集部から丁重なメールをいただき,第2刷から訂正するとのことであった。

このところビデオに録り置いた邦画を続けて観た。まだ『おくりびと』が残っているので,楽しみにしている。(写真はいずれもテレビの画面を撮影)

 

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