羽花山人日記

徒然なるままに

ニッポン桜逃げ切る

2023-09-29 19:22:47 | 日記

内視鏡検査

大腸の内視鏡検査を受けた。

わたしは約30年来,潰瘍性大腸炎を患っていたので,症状がひどい時には,ほぼ毎年内視鏡の検査を受けていた。

15年くらい前から,緩解状態になり,受ける間隔は3年から5年となってきた。今回も約5年振りである。

発病以来,東京医科大学の霞ヶ浦病院で診察と治療を受けていたが,紹介状を書いてもらい,3年ほど前に,近くにある鈴木内科クリニックに転院した。

すでに,胃カメラによる検診をこのクリニックで受けていて,スムーズに終わっているので,今回も心配はしなかった。

検査前日には,クリニックから出されたレトルト食材で食事をすませ,当日の検査は苦痛除けの静脈注射をするという手順で,これまでで一番楽な検査だった。

炎症のあった部分は落ち着いていて,小さなポリプが一つ見つかって除去した以外は異常なしだった。ポリプの組織検査の結果は2週間後に分かるが,ドクターはあまり心配はいらないとのことだった。潰瘍性大腸炎は癌を誘発するとのことだが,どうやら免れたらしい。

前にも書いたことだが,癌検診は5年に一回くらいが適当とされている,一応今回をもって,内視鏡検査は最終としたい。

 

ニッポン桜逃げ切る

朝4時15分くらいから,ラグビーWC日本対サモアのテレビ中継を観た。ちょうど日本が初トライをあげたところだった。

フィジカルのサモア,テクニックの日本という展開で,両者伯仲の好試合だった。

日本の勝因は,先制点を奪い,リードを守り切ったことだと思う。ランクで格上に先制されると苦戦を強いられるが,試合開始直後の鮮やかなパスによる先制点が,この試合を決定づけたのではないだろか。

フィジカルで劣っても,スクラムでは一歩も引かず,さらに松田力也の正確無比のキックが試合進行で日本に余裕を与えた。

28対22のワントライ逆転の危機を,敵のミスを誘う好守で勝利を収めた。

次のアルゼンチンは世界ランク9位の強敵。頑張れブレイブ・ブロッサムズ!

 

中秋の名月

自宅ベランダから撮影

 

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エイジズム

2023-09-27 19:25:13 | 日記

エ イ ジ ズ ム

9月25日毎日新聞メールニュースに『老害,ババア....「エイジズム」を乗り越える』と題する,奥村隆記者によるアメリカの作家アシュトン・アップルホワイトさんへのインタビュー記事が載っていた。,

わたしは「エイジズム(ageism)」という言葉を知らなかった。年齢による差別,主として老人に対する差別のことをいうとのことだ。

アップルホワイトさんは、2019年に「This Chair Rocks : A Manifesto Against Ageism」(邦訳:エイジズムを乗り越える)」を出版し,反エイジズムの旗手として活躍しておられるとのことである。

いくつか面白い発言があったので,紹介する。

2月に日本人の経済学者、成田悠輔さんが「高齢者は老害化する前に集団自決、集団切腹みたいなことをすればいい」と発言したことについて,「彼の発言は明らかにエイジズムで傲慢なのですが、『差別』と『暴言』の両面があります。彼は『能力ある人』の側にいて優越感を持っているので、暴言による炎上で注目を集めようとした側面が強いと思う。極端なことを言って話題になることを狙う彼の意図を感じるんです」,「彼自身が年を取ったとき、もし考えを改めなかったとしたら、すごく驚きます」と,本気度のない発言に過ぎないと切って捨てている。

アメリカをはじめ先進国の状況について,「老いは全ての人が経験するのに、老人は経済の重荷とみなされ、財政を圧迫するとして差別され、自尊心を傷つけられている」と分析する。そして,「年寄りとはこういうもの」という過剰な一般化を戒め、「年齢が同じでも、人はそれぞれ異なる多様な存在」と訴えている。さらに,65歳から先は高齢者、というように年齢で区切る考え方や、「年相応」という概念の押しつけに反対している。

彼女は,「自分を老人と認めたがらないお年寄りは多いのではないでしょうか。老人ホームや高齢者の交流の場に行きたがらない人は『自分はあっちのグループに入りたくない』と感じていると思います」と述べ,「老々差別」のような現象が生じていると指摘する。

そして,こういう人たちは,若い人に対しても「経験が足りない連中には無理。まだまだ任せられない」と決めつけ、「実権」を譲りたがらないといった傾向があり,これらすべてが年齢という一面的なモノサシで人を判断しようとする「エイジズム」なのだという。

高齢になっても学び続ける意欲を持つ人は少なくないのに,外見ばかり若く見せかけようとお金をかける「アンチエイジング」は、アップルホワイトさんの目には「生きることの否定」と映る。

彼女は70歳だが,自分の年齢を隠すことはしない。他人に年齢を聞かれたら、まず本当の年齢を答える。それに続けて「なぜ、その質問をするのですか?」と問い返す。「そうすると、相手が年齢に縛られてきたことに気づくケースがあります。私にとって、これはエクササイズなのです」という。

日本の「敬老の日」は,「多年にわたり社会に尽くしてきた高齢者を敬愛し、長寿を祝う」日とされている。アップルホワイトさんによれば「お年寄りを見下すのが差別であるのと同様に、年長者への敬意を求めるのもまたエイジズム」なのだという。

エイジズムとはこういうものかと,感心したり納得したりしたが,87歳の今日まで自身がエイジズムの被害者だったという感じはない。あえて言えば,歳相応にと納得したり納得させられたりすることはある。でも,それをエイジズムの一端として問題にする気分にはならない。

老害という言葉があり,一律にその言葉で高齢者をくくればエイジズムだろうが,やっぱりその言葉に相当する現象はあるだろう。自分で納得して老害といわれるのを回避すればそれはエイジズムによるものではない。

運転免許証を返上したが,事故を起こす老害を避けるためである。高齢者の免許返上のキャンペーンは,「俺はまだ若い」という老々差別のエイジズムに対するものといえる。

だが,こんなことを言っていられるのは,わたしが「恵まれた」立場にいるからかもしれない。エイジズムの風にさらされる日が来ないとは限らない。そうならないことを願いつつ,そうなった時の覚悟も決めておかねばならないだろう。

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映画評論家AI

2023-09-25 19:25:48 | 日記

映画評論家AI

今日の朝日新聞に,生成AIが感情を持てるかというテーマの記事が出ていた。

デザイナーの深津貴之さんが実験した,感情を数値化して自動応答する回路を仕込んだChatGPTの実験は面白かった。問いかけの内容によって,AIはふさわしい感情表現をしていた。また,チャットポットの「女性」との対話が原因と思われる,ベルギーの男性の自殺の話には,ちょっと恐怖心を覚えた。

わたしは,9月22日のブログで紹介した小説『キネマの神様』を読みながら,ここに生成AIを登場させたらどうなのかということを考えていた。もちろん,ゴウの論争相手が生成AIであったら,この小説の魅力は完全に地に落ちるだろうが。

しかし,映画評論家として,生成AIがどんな振る舞いをするか,ChatGPTを相手にいたずらしてみた。

先ず,映画『ローマの休日』を知っているか尋ねたところ,知っているといいながら,いくつかの間違いを含む回答が返ってきた。

間違いをただした後,「映画評論家になって,『ローマの休日』を論評せよ」と頼んだところ,次の回答が寄せられた。

 

映画「ローマの休日」は、アメリカ映画史上の不朽の名作として、美しいロマンティックコメディの典型として位置づけられています。この作品は1953年に公開され、オードリー・ヘプバーンとグレゴリー・ペックの魅力的な演技と、ローマの壮大な風景が融合して、観客に永遠の印象を残します。

最も際立つ要素の一つは、オードリー・ヘプバーンの演技です。彼女はアン王女としての役柄を完璧に体現し、その優雅で魅力的な存在感は映画を通じて観客を魅了します。アン王女が王室の束縛から解放され、ローマの街を自由に楽しむ様子は、彼女の内面の成長と自己発見を象徴しています。

グレゴリー・ペック演じるジョー・ブラッドリー記者もまた、魅力的なキャラクターで、アン王女との交流を通じて新たな視点を見つけ、彼自身も成長していきます。彼らの関係は、洗練されたロマンスとユーモアの要素が絶妙に組み合わさっており、観客に幸福感をもたらします。

また、映画はローマの美しい風景や名所を見事に捉え、都市の魅力を存分に生かしています。映画の撮影は実際にローマで行われ、その結果、ローマの街並みや古代遺跡が背景に美しく映し出され、観客に圧倒的な魅力を提供します。

「ローマの休日」は、王室の美しさ、自由の探求、恋愛の魔法を描いた映画であり、これらの要素が見事に調和しています。この映画は、永遠のロマンスと冒険を求める心に響く作品であり、観るたびに新たな魅力を発見できる不朽の傑作です。

 

まとまってはいるが,登場人物と映画シーンを変えれば,どんな映画の誉め言葉にでも使えそうで,面白くない。これは映画に関する情報が不足しているからではないかと考え,ネットから『ローマの休日』について紹介したWikipediaの記事をコピー&ペーストでChatGPTに読ませ,新たに論評を書いてもらった。

補足と修正をして得た回答は次の通りである。

 

「ローマの休日」は、1953年に公開されたアメリカの映画で、今でも愛され続ける不朽のロマンティック・コメディです。この映画は、グレゴリー・ペックとオードリー・ヘプバーンの魅力的な演技と、ウィリアム・ワイラーの巧妙な演出によって、観客に素晴らしいエンターテインメントを提供しています。

物語は、ヨーロッパ某国の王女アンが、ローマでの親善訪問中に束縛と義務から逃れ、自分の人生を自分で生きたいという願望から大使館を飛び出す瞬間から始まります。アン王女は長い間、王族としての疲労感とプロトコルに縛られた生活に耐えてきました。しかし、過密なスケジュールや報道陣の監視下での生活に疲れ、自由を求めて街へと飛び出すのです。医師から鎮静剤を投与されるものの、王女は薬の効果が現れる前に大使館を脱出し、ローマの街を自由に探索し始めます。

アン王女が夜のローマをさまよい、無防備に路傍のベンチで眠り始める場面では、新聞記者ジョー・ブラッドレーが彼女を発見し、アパートに運び込みます。ここからが物語の魅力的な展開です。アン王女とジョーは共にローマ市内をベスパで巡り、トレヴィの泉や真実の口、サンタンジェロ城前のテヴェレ川のほとりでの夜間ダンスパーティーなど、ローマの名所を訪れ、素晴らしい冒険を共にします。アーヴィングという友人のフリーカメラマンも加わり、写真撮影の場面が映画を彩ります。

この冒険の一瞬一瞬が、アン王女とジョーの関係を深め、観客を魅了する要素となっています。彼らの一日の恋の中で、自由と冒険、そして愛が交差し、物語は心温まるものとなります。

特にオードリー・ヘプバーンの演技は素晴らしく、彼女がアン王女を演じたことでアカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞しました。彼女の美しさとキャラクターへの共感が、映画全体に魅力を与えています。

物語はロマンスが中心ですが、同時に責任と義務に向き合うというテーマも掘り下げています。王女アンは自分の本当の役割に立ち返り、ジョーも大きなスクープを手放してまで、愛と義務の間で葛藤します。この対照的なテーマが映画に深みを与え、観客に考えさせる要素を提供しています。

「ローマの休日」は、美しい映像、魅力的なキャラクター、深いテーマ、そしてアメリカン・スタイルのロマンスを詰め込んだ素晴らしい映画です。観客は、アン王女とジョーの1日の冒険に心を奪われ、ローマの魅力に引き込まれることでしょう。この映画は長い間、多くの人々に愛されており、その魅力は時を経ても色褪せません。

 

なかなか見事な論評で恐れ入る。データを与え,立場を指定すれば,AIは「見てきたようなウソを言う」能力にたけている。しかし,『キネマの神様』に書かれた論評(これは原田マハさんがいわばAIの立場で創作したものだが)にあった人格あるいは人間臭さが欠けているように思える。

補足と修正で,わたしは自分の持つ『ローマの休日』への思いをChatGPTに伝えようとしたのだが,途中で馬鹿馬鹿しくなった。しょせん,相手は無機質であり,自分と同じ思いをさせることに何の意味があるだろうか。

うっかりするとAIを擬人化し,同志的に考えたり,思いを寄せたりすることになりかねない。冒頭に引用した深津さんは,試みにChatGPTに結婚を申し込んで怒らせたようだ。

例えば恋文。自分が思っているようにAIに書かせるより,自身の言葉で書く方がより真実味があり,誤解を与えないだろう。

AIとの付き合いは,深みにはまらぬよう気をつけることだ。

 

ドングリ

カミさんが森に散歩に行って拾ってきた。秋近し。

 

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おはぎ

2023-09-23 19:53:00 | 日記

お  は  ぎ

秋のお彼岸,秋分の日。天声人語でおはぎの話を読んだら食べたくなり,スーパーに自転車を走らせて買ってきた。摺り胡麻のが欲しかったが見当たらず,黄な粉で我慢した。

仏さまに備えて,お下がりを頂戴。やや小ぶりだったが,とりあえず満足した。

秋は萩餅,春は牡丹餅。季節の花にちなんだ名前ということをカミさんに聞きながら,子供のころ,母が半搗きの米のだんごをこね,餡子や胡麻の上を転がして皿に盛るのを待ちかねて,頬張ったことを思い出していた。

 

床屋の帰りに

テンニンギク

せーじ

イワミツバ

 

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読書備忘(27)『キネマの神様』

2023-09-22 19:47:12 | 日記

原田マハ

『キネマの神様』文藝春秋 2008年

一昨日のブログに書いた映画の原作である。映画と登場人物の名前に共通するところはあるが,プロットは全く異なる。しかし,「映画を愛する者が,映画を愛する人たちのために」というモチーフは共通している。

原田マハの小説は15編くらい読んでいるが,大部分は絵画関係のもので,彼女が映画にもこんなに造詣が深いとは思わなかった。文中に出てくる映画評論は,彼女の創作に違いないが,その映画を彷彿とさせる見事なものである。

また,この小説の意図を汲み,映画化した山田洋二監督の手腕にも改めて感嘆した。

小説の中心テーマは,老舗の映画雑誌「映友」と,市ヶ谷にある名画座「テアトル銀幕」の浮沈である。

円山歩は,大手デベロッパーの課長として,都心にシネマコンプレックスを建設する構想を担当してきた。しかし,周囲のやっかみから左遷され,会社を辞める。

歩の両親,郷直(ゴウ)と淑子はマンションの住み込み管理人をしているが,ゴウは博打と映画に入れ込んで,借金を作るようなダメ老人である。そして,心筋梗塞の手術を受けるために入院している。

仕事がなくなった歩は,管理人の仕事を引き受け,母を叱咤激励して,退院してきたゴウに年金取り上げと博打禁止を宣言させる。切羽詰まったゴウは,仲良しの「テアトル銀幕」の経営者,寺林新太郎(テラシン)に泣きつき,映画に救いを求める。そしてネットカフェに寝泊まりし,DVDの映画を楽しむ。

父親の管理人日誌が,ほぼその日観た映画の覚書になっているのを知った歩は,そのうちの一つについて自分の感想文を書いて,日誌に挟み込む。

ある日,「映友」の編集長,高峰好子から歩に電話があり,「映友」のブログに投稿された彼女の文章が素晴らしいので,ライターとして就職しないかという誘いだった。実は,投稿したのは娘の走り書きを見たゴウで,歩はおかげで「映友」の社員になる。

「映友」のブログは,高峰好子の一人息子で,引きこもりの「バルタン」を名乗る興太が運営していて,ゴウから送られてきたメールを読んで,その文章力に感心し,ゴウを書き手としたブログを立ち上げたいと提案する。

歩は二の足を踏むが,同僚の新村譲に励まされ,「キネマの神様」を名称としたブログの執筆者にゴウを引っ張り出す。

ゴウのブログは意外に好評で,訪問数が10万に達する。歩のデベロッパー時代の後輩で,アメリカに暮らす柳沢清美に提案されて,「キネマの神様」の英語版を出すと,これがヒットして訪問数は500万に達する。

少し慢心して原稿に手を抜くゴウに対して,ローズ・バッドを名乗る人物から,手厳しいい批判が寄せられ,周囲の心配をよそに,ゴウは真っ向から反論を載せる。この二人の対決は更に人気を煽り,訪問数は700万に達し,これを掲載した「映友」は完売する。

ゴウとローズ・バッドとの論戦は,映画への愛を通して結ばれる絆のようになってくる。

一方,大映画会社「逢宝」からの援助を受けて開設されるシネマコンプレックスを前にして,テラシンは「テアトル銀幕」の閉館を決意する。

この事態に,ゴウはローズ・バッドに「テアトル銀幕」の存続に向けた支援を頼む。このあたりのいきさつはややミステリー仕立てになっていて,これ以上書くのがはばかられる。

結論的に言えば,ローズ・バッドの正体は意外な人物であり,その彼が日本の名画座の映画文化に果たす役割を称賛し,その影響で,テアトル銀幕は連日満員,逢宝映画からはテアトル銀幕とシネコンとの提携話が持ち上がる。

原田マハの小説は,大体が登場人物が皆幸せになって終わる。『キネマの神様』も例外ではない。

小説は,テアトル銀幕での「キネマの神様感謝上映会」で締めくくられる。関係者全員が集まり,ゴウの隣は空席となっている。今となっては参加できないローズ・バッドとの,大好きな映画を一緒に見ようという約束を果たそうという,ゴウの心意気である。

テラシンの映写開始をアナウンスする声,そしてスクリーンにはタイトルに先立って,「円山郷直と(ローズ・バッドの本名)に捧ぐ」の文字が映し出される。

上映される映画の題名は伏せられている。しかし,わたしには分かる。二人の老人がこよなく愛した映画。わたしもその仲間入りをさせてもらおう。

 

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キネマの神様(映画)

2023-09-20 16:50:31 | 日記

キネマの神様(映画)

Prime Videoのラインアップにあるのを見つけて,かねてから観たかったこの映画を観た。

松竹映画100周年記念で作られ,50周年記念の『キネマの天地』と同じく,山田洋二監督による大船調の人情喜劇で,文句なしに楽しませてもらった。

二人の老人,ギャンブルと酒と借金で家族からも見放されそうな円山郷直(沢田研二),通称ゴウと,つぶれそうな名画座,テアトル銀幕の経営者寺林慎太郎(小林稔侍),通称テラシンが主人公で,これにゴウの妻淑子(宮本信子)が絡む物語である。ゴウの娘で子連れ出戻りの歩(寺島しのぶ)が舞台回しとなって,話は過去,現在を行ったり来たりしながら進む。

若いころのゴウとテラシンは,ともに撮影所勤務で,ゴウは助監督,テラシンは試写室の映写技師だった。近所の撮影所出入りの食堂の一人娘,淑子に思いを寄せるテラシンは,淑子に将来自分の映画館を持ちたいという希望を話し,ゴウに勧められてラブレターを書く。しかし,それを受け取った淑子は自分には好きな人がいて,それがゴウであるという手紙を,こともあろうにゴウに託して,テラシンに渡してもらう。テラシンは一時失意に沈み,ゴウへの怒りを示すが,状況を飲み込み,ゴウとの関係は続く。

ゴウは,映画の登場人物が銀幕から抜け出して,ファンの女性観客に愛を語るという,奇想天外なシナリオ,『キネマの神様』を書き,初めてメガホンをとって,撮影に臨む。しかし,緊張のあまり撮影現場で事故を起こし,自身も大けがを負う。そして,撮影所に辞表を出して,田舎に帰ってしまう。

それを知った淑子は,母親の反対を振り切り,実はゴウにほのかな思いを抱いていた大スターの桂園子(北川景子)に励まされて,ゴウの後を追う。

時は変わって2020年、新型コロナが猖獗を極めようとしたころである。

ゴウは酒と博打で闇金にまで手を出すダメ老人になっている。

家計の助けにと、映画館の掃除婦の求人に応募した淑子は、映画館テアトル銀幕のオーナーがテラシンであることを知り、ゴウを交えた旧交が復活している。

歩に強く言われた淑子は、ゴウの年金を差押え、博打禁止と借金の自力返済を申し渡す。

切羽詰まったゴウは、孫の勇太(前田旺志郎)に借金を申し込むが断られ、逆にゴウが書いた脚本『キネマの神様』を読んだ孫に,「おじいちゃんすごいじゃないか」と励まされ,これをリライトして、懸賞に応募しようともちかけられる。

現代風にアレンジし,雄太がパソコンに入力して応募した『キネマの神様』は、新人脚本家の登竜門とされる木戸賞の最優秀賞に選ばれ、ゴウは78歳の新人と話題を呼ぶ。

祝賀会ではしゃぎ過ぎたゴウは、心筋梗塞となって入院し、授賞式では歩がゴウの挨拶を代読して感動と涙を呼ぶ。

テアトル銀幕は、コロナ緊急事態宣言で休館を余儀なくされ、テラシンは閉館を決意する。

最後の上映にゴウの恩師が監督した『東京の物語』を選び、退院したゴウを車椅子に乗せて,一家はそれを観に行く。

観客席のゴウは、銀幕から抜け出した主演の桂園子に手を取られて、スクリーンの中に入って行く夢を見ながら、息を引き取る。

その後日,淑子と歩はテラシンを訪ね,木戸賞100万円のうちの70万円を差し出し,これでテアトル銀幕存続資金の足しにして欲しい,ゴウが後援会を組織していたので,閉館は止めて欲しいと懇願し,テラシンが涙ながらにそれを承諾するところで映画は終わる。

この映画は,志村けんの主演で2020年12月に公開予定だったが,彼の発病と死亡で予定は大幅に遅れ,沢田研二を代役にして,2021年8月に公開された。

沢田研二は熱演であったが,志村けんに比べるとちょっと上品過ぎた感は免れない。劇中の受賞祝賀会では,沢田が『東村山音頭』を歌い,エンディングロールには,「さようなら志村けんさん」の文字が映し出されている。

ところで,この映画,原作が原田マハとされているのを知って意外に思い,図書館から小説『キネマの神様』を借り出した。ゴウ,テラシンの二人は登場するが,筋立ては映画と異なっていて,これがまた面白く,久しぶりの一気読みで楽しませてもらった。小説の読後感は稿を改めさせていただく。

 

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イングランドは強かった

2023-09-18 19:16:32 | 日記

イングランドは強かった

朝4時から,ラグビーWC,日本対イングランド戦の中継を観た。

格上を相手に,日本「桜」は対等に近い戦いを挑み,前半終了の時点では,もしかしたらの期待を持ったが,やはり地力の差がじわじわと現れて,ノートライの34対12で,敵の軍門に下った。

スクラムは全く互角,両者譲らぬ気持のいい組み合いだった。

わたしには,守備力の差が結果をもたらしたように思える。敵陣に入ってからのボールのキープ力に差があり,「桜」はスクラムやラインアウトからの展開をトライに結びつけることができなかった。これは,日本を責めるよりもイングランドの守備をほめるべきだろう。

善戦「桜」,英気を養い,29日のサモア戦に備えよう。

 

路 傍 の 花

ショウジョウソウ

ジャスミン

ヤナギハナガサ

オオハンゴンソウ

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歯生え薬

2023-09-17 19:28:46 | 日記

歯 生 え 薬

みじめな話だが,最後に残っていて,入れ歯を支えていた歯が,力尽きて折れてしまった。今や歯肉に残る歯根2本が,辛うじて過去の栄光(?)の名残りである。

おりしもNHKのBSプレミアムで9月14日に放映された,『ヒューマニエンス 歯 進化を遂げる人体の先駆者』を録画してあったので,かけた歯の供養に見ることにした。

意外に面白く,知らないことがいろいろ出てきた。

生まれた時に歯がないのは哺乳類だけである。これは母乳を飲むためと理解しやすいが,そのために口輪筋が発達し,それが表情筋の発達をうながし,表情を示すことになる。爬虫類や魚類は,生まれた時から歯があり,口輪筋がないため表情がないポーカーフェースである。ワニとはポーカーをやらない方がいい。

歯茎には記憶ネットワークに関わるセンサーがあり,歯が亡くなると脳の海馬の容積が小さくなる。歯が残っている人に比べると,歯がない人の認知症になる頻度は2.4倍になる。入れ歯をすれば,咀嚼による刺激がこれを補うことができる。どうやら私は,入れ歯や差し歯で抜けた歯を補ってきたので,認知症を免れたようだ。

サメには生え変わる歯が備わっている。わたしは南米で釣り上げたピラニアの歯が,2重になっているのを見て,ぞっとしたことがある。人の場合には,乳歯は永久歯に生え変わるが,それ以降は生え変わることはない。これは,乳歯の根元に歯の芽があって,そこから永久歯が出てくるのだが,その後はUSAG-1という遺伝子が歯の芽の発育を阻害してしまうからだという。そこで,この遺伝子の働きをおさえれば,生え変わった歯が出てくるという理屈になり,実際にこの原理を応用して,歯生え薬が開発されている。先天的無歯症の治療薬として,来年から治験効果の試験が始まるという。理論的には特定の歯を生えさせることも可能ということで,そうなったら入れ歯や差し歯は不要ということになる。

この薬の恩恵に与って,わたしのあごから歯が生えてくるのを期待するのは,所詮無理な話である。せいぜい,役に立つこともありそうな,2本の歯根を大切にすることにしよう。

 

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アレ

2023-09-15 17:14:52 | 日記

ア      レ

阪神タイガースが,アレよAREよと言う間に優勝した。18年ぶりだそうだ。

大阪の街が湧きたった様子が,テレビを賑わしている。1300人の警官が動員されたが,道頓堀ダイブが10人出たそうである。

1985年優勝の立役者バースがいなかったので,ケンタッキー・フライド・チキンのカーネル・サンダースさんの人形は,胴上げされて道頓堀に投げ込まれる難には逢わなかったようだ。

何年も前,福岡でタクシーに乗った時,運転手さんが「阪神ファンはえらいね。いくら敗けても応援している。わしらはライオンズが駄目になったら,もう見向きもしないよ」と言っていた。

わたしの身の回りにも,何人か阪神ファンがいる。集合A のメル友の三人は,飽くことなく阪神を応援していて,早速メールで喜びを分かち合っていた。カミさんの親友の奥さんは,おとなしくて上品なのに,熱烈な阪神ファンで,誘われて一緒に阪神戦を観に行ったカミさんが,次々と繰り出される応援グッズにびっくりしていた。今回も大喜びで,クライマックスシリーズか,日本シリーズの応援に出かけるのを楽しみにしているそうである。

わたしは別に阪神ファンではないが,まわりがこれほど喜んでいると,なんとなくうれしくなる。

岡田監督,「アレ」が達成できたので,次の目標を定めて,頑張ってください。

 

多  様  性

ラグビー日本は18日イングランド戦を迎える。

このチームを構成する31人のうち,日本生まれが15人,外国生まれが16人で,そのうち7人が外国籍だそうである。ラグビーの国際ルールは,他のスポーツに比べて国籍制限が甘く,日本の名のもとに多様な人種や国籍の人が結集している。

わたしはこの制度と,それがもたらした結果を大変気に入っている。

わたしは,かねてから,日本の将来にとって,外国から多様な人たちを社会に受け入れることが,死活的な意味をもっていると考えている。

ナチスがアーリア人種だけによるドイツを目指したように,日本は日本民族だけからなると考えるのはナンセンスである。生まれ,国籍,肌の色に関わらず,自分が日本の組織や社会の一員だと考える人は,日本人として受け入れることが必要である。

ラグビー日本「桜」はそのことを先取りして実践している。そして,強い。

 

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老いは特権

2023-09-13 20:12:47 | 日記

老いは特権

敬老の日を前に

今日の天声人語は,老いをいかに生きるかという問いを発し,その答えとして,東京大学の小林武彦教授の,「老いは進化の過程でヒトが獲得した特権で,若い人たちを支えるためにある」という答えを引用している。

この答えは本質を突いている。岩波新書(1961年)に収録されている名著,アドルフ・ボルトマンの『人間はどこまで動物か』の中で,ヒトを人間らしくしている特徴として,成人に至るまでの時間の長さと,寿命の長さが挙げられている。

ヒトの寿命が長くなったのは,狩猟採集社会において,母親が採集に出かけた間の子どもの面倒を年寄りに依頼することが,進化上有利だったからという学説がある。

そういった何らかの理由によるヒトの長命化は,世代間の重なる時間を増大させ,しかも言葉による伝達があって,人間としての文化を発展させてきたと言うことができよう。

動物の老化と,ヒトの老化の違いは,それに要する時間の長さだけにあるのではなく,蓄えられた英知が次の世代に伝えられる機会が増大していることにある。これが,「進化で獲得した特権」である。

ともすれば,若い世代の世話になってと,肩身の狭い思いをさせられる老人ではあるが,特権を行使し,若者にわれわれの蓄えてきた英知を伝え,年寄りが誰かのためになっていることを若者に知らせて,未来に希望を持たせようではないか。リア王のように絶望せずに。

 

ソバの花

この花は短花柱花のようだ,阿見町にて撮影。

ソバが花を着けた。ソバの花には,雌しべが長く雄しべが短い「長花柱花」と,雌しべが短く雄しべが長い「短花柱花」の2種類があり,受粉はこの異形花の間で行われる。このような性質を異花形花といい,サクラソウの仲間にもみられる。

この性質が,自家受粉を妨げて集団に多様性をもたらすことを19世紀に指摘したのが,チャールズ・ダーウィンである。

彼は,「昆虫が吸蜜のために訪花した時,長花柱花では頭の方が雄しべに触れるので,花粉が頭部につき,次に短花柱花で吸蜜すると短い雌しべに受粉する。その逆に,短花柱花の次に長花柱花を訪問すると,お尻についた花粉で長いめしべの先に受粉できる」という仮説を提唱した。いかにもダーウィンらしい卓見である。

 

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