羽花山人日記

徒然なるままに

和歌三首

2021-01-31 17:27:16 | 日記

今日の朝日歌壇から

 

学術会議の任命のこと静もりぬ次の話題に移るらし世は                                                                       和泉市 長尾幹也様

ご本尊の日本学術会議そのものが腰砕けのような気がする。杞憂であればよいが。

 

スーダンの飢えし子供が見つめてる十ドルの寄付をためらう我を                                                           アメリカ 大竹幾久子様

「ごめんね。今年の分はもうすませちゃったんだ。」と詫びながら,定期的に送られてくるユニセフと国境なき医師団のパンフに写る子供たちを見る。

 

三密を避ける術なき鶏舎にて処分されゆく生命の数多                                                                                  横浜市 毛涯明子様

人間て本当に勝手なものだと思いながら,自分もその一員だと気づく。

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ジャッキー・ロビンソン

2021-01-30 17:41:03 | 日記

朝,畑に行こうと外出したが,北風の寒さに尻尾を巻いて家に戻った。こんな日はおとなしくしているに限ると,テレビで映画を観ることにした。先日のブログに書いたハンク・アーロンのことから思い出して,ビデオに撮りためてあったジャッキー・ロビンソンを主人公にした『世界を変えた男』を観た。

1946年に,ブルックリンドジャースのオーナー,ブランチ・リッキーの決断によって,ニグロリーグから3Aにスカウトされ,翌年に黒人初の大リーガーとして登録されたジャッキー・ロビンソンの,リーグ1年目の軌跡が描かれている。ハリウッド映画らしく分かりやすい筋書きだが,差別と迫害に対し挑発に乗らず,ひたすら忍耐を貫き,彼に続く黒人大リーガーへの道を切り開いたジャッキーの姿がよく描かれている。映画を観終わって浮かんだのは,「人の尊厳」という言葉だった。ジャッキー・ロビンソンは野球殿堂入りを果たし,彼の背番号42はプロからアマチュアに至るまで,全米の野球チームで永久欠番になっているそうだ。

ジャッキーでもう一つ思い浮かべるのはロバート・B・パーカー 著の『ダブルプレー』 (早川書房 2005年 Robert B. Parker. Double Play. 2004)である。このハードボイルドの巨匠は,フィクションの白人,太平洋戦争生き残りの海兵隊員パークをジャッキーのボディーガードとして登場させ,白人至上主義者やマフィアによる襲撃との攻防を描いている。著者のヒューマニズムが随所ににじみ出ている佳作である。今は亡き菊池光氏による訳文は,歯切れがよく,原文を彷彿とさせる。

選抜高校野球大会の出場校が発表された。地元茨城からは昨年亡くなった知将,木内幸男氏がかつて率いた常総学院が,故郷長野県からは初出場の上田西高校がそれぞれ選ばれている。球児たちがコロナにおかされることなく,健闘されんことを祈る。

 

 

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運転免許証更新

2021-01-28 17:47:30 | 日記

運転免許証を更新した。2年前に一時停止を怠ったのを(事故にならなくてよかったが),運悪くパトカーに見つかったので,ゴールドからブルーに格落ちした。

50年前に取得した免許も,これでおしまいにするつもりだ。乗っている車の車検が6月なので,そこで廃車にしようと考えている。近隣を走っているバスがないのでかなり不便になるが,転ばぬ先の杖,ここら辺が年貢の納め時であろう。それまでの4ヶ月に,いろいろ片付けて,新しい生活リズムに備えなければならない。

夕刻に初雪が舞った。

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ガブリエルのオーボエ

2021-01-27 14:23:38 | 日記

YouTubeで映画”The Mission”を久しぶりに観た。この映画は1756年に起きたグアラニー戦争を題材にしている。わたしは,パラグアイ赴任中に,イグアスの滝やイエズス会の遺跡を何回も訪れているので,この映画に特別の感慨を抱いている。

イグアスの滝周辺の先住民,グアラニー族へのイエズス会の伝道活動によって築かれた豊かな楽園が,奴隷売買を是認するポルトガル領に組み込まれたため,軍の攻撃によって破壊される過程が描かれている。随所に登場するイグアスの滝の水量と轟音は圧巻である。非暴力を貫き,信仰の力をもって立ち向かおうと,軍勢の銃口の前に十字架を捧げながら身をさらすガブリエル神父の姿は感動的である。

映画の冒頭で,ミッションに向かうガブリエル神父が,インディオの心に届かせようと吹く,オーボエの調べが「ガブリエルのオーボエ」である。

昨年7月に亡くなった映画音楽の巨匠,エンニオ・モリコーネの作曲によるこの曲は,オーケストラ,チェロ,バイオリン,フルートなど様々な編曲で世界中で演奏されている。中でも,イタリア在住の日本人バイオリニスト,横山令奈(Leina Yokoyama)さんが,イタリアで真っ先に新型コロナウイルスの感染が広がったクレモナの街で,治療に格闘する関係者を励ますために,病院の屋上で演奏する姿と音色は圧倒的である。わたしはYouTubeで何回も視聴し,心を癒されている。

イグアスの滝,2002年に撮影。

 

パラグアイにあるイエズス会の遺跡。世界遺産に登録されている。2001年撮影。

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春遠からじ

2021-01-26 17:46:39 | 日記

いつも散歩する公園の桜のつぼみはまだ固いままだが,少し大きくなったような気がする。2ヶ月先には満開の花を見せてくれるだろう。その頃に,コロナウイルスが少し影を潜めてくれるといいが。

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アガサ・クリスティー再び

2021-01-25 20:42:08 | 日記

わたしがブログに書いたアガサ・クリスティーについての記事に寄せて,友人の一人がメールをくれた。その中に,好きな作品の一つとして,”Towards Zero”が挙げられていた。調べてみると,邦訳が『ゼロ時間へ』という題名で早川書房のクリスティー文庫に収録されていて,町の図書館の蔵書にあることが分かったので借りてきた。

今日は業者が台所と浴室のクリーニングに来て,コロナ除けにと窓を開けっ放しにしていたので,厚着して部屋の隅に縮こまり,クリスティーに没頭した。

わたしは,ポアロ,マープル,タペンス夫妻以外が探偵役のものはあまり読んでおらず,バトル警視が登場する作品はこれが初めてである。海辺の断崖を望む館に住む,資産家で未婚の老婦人の殺害事件である。「世の中で最も罪深いのは,推理小説を後ろから読むことである。」という,アルフレッド・ヒッチコックの名言に従って,結末やそれを示唆することはここには書かないが,二転,三転の展開は飽きさせず,一気に読んだ。エルキュール・ポアロが,実在の人物として小説の中で言及されるのが面白い。

クリスティーの小説には隙がない。結末の謎解きを試みるならば,文の隅々まで目を光らせる必要がある。今回は最後の最後で背負い投げを食らった。

何年振りかで,クリスティーの謎解きに挑戦し,少し若返った気がした。やっぱりアガサはすごい。

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85±1

2021-01-24 19:29:04 | 日記

ハンク・アーロン氏が亡くなった。86歳だった。1947年ジャッキー・ロビンソンが初の黒人大リーガーとして登場してから20年近く後の1954年の大リーガー入りだったが,それでも様々な苦労があったらしい。1974年にベーブルースのホームラン記録を破った時の前後には,白人至上主義者から脅迫を受け,身の危険にすらさらされたとか。王貞二氏と親交を結び,少年野球の振興に尽くした話は心を温めてくれる。

アーロン氏への追悼記事と同じページに,宝田明氏の談話が掲載されていた。初代ゴジラ映画の主役として,ゴジラに込められて反核の思いを今も発し続けておられるとか。紙面に見る氏の顔(かんばせ)は,86歳にしてなお端正である。

同じ紙面の下にあるお悔やみ欄に,坂本スミ子さんの訃報が載っていた。享年84歳。彼女の歌声をYouTubeで聴いた。“ウナセラディ東京”,“たそがれの御堂筋”。ご冥福を祈ります。

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読書備忘(4) 芥川賞

2021-01-23 15:45:58 | 日記

10日ほど前に,カミさんが町の図書館から宇佐美りんの著書を2冊借りてきた。その内の1冊『推し,燃ゆ』( 集英社 2020年)の芥川賞を受賞が発表され,この本は返したら次に借りるまで1年以上かかることになるのでと,まわしてくれた。わたしは,日本の現代小説はほとんど読まないし,特に若い女性が書いたものは言葉遣いや扱われている題材がなじめなくて,ちょっと腰が引けたが,読み始めてみると面白く,最後まで読み通せた。

10代後半の少女の独白の形をとっている。この少女はアイドルに夢中になっていて,その生活や行動はすべてアイドル中心で動いている。学業も放棄し,高校は2年で挫折して中退している。家族にはあきらめられ,つながっているのは同じアイドルの追っかけ仲間だけである。応援するアイドルが彼らの「推し」である。

彼女はいう。「世間には,友達とか恋人とか知り合いとか家族とか関係性が沢山あって,それらは互いに作用しながら日々微細に動いていく。常に平等で相互的な関係を目指している人たちは,そのバランスが崩れた一方的な関係性を不健全だという。」そして,追っかけの対象としてのアイドルを愛していれば十分幸せだという。

この「推し」がフアンを殴打したことがきっかけで,所属するグループが解散し,彼は普通人と結婚し引退する。主人公はすべてをつぎ込んできた目標を失うところで小説は終わっている。

著者は21歳の大学生で,これが2作目ということだが,その文章力には目を見張るものがある。21歳という若さゆえに,小説の主人公に代表される現代の若者の情念を自分の中に取り込み,自身の言葉で表現できるのではないだろうか。若者たちが現在の社会に抱く閉塞感を考えさせられた。

小説の中には,ネット用語が頻繁に登場し,戸惑わされたが,その内の一つ「おっさん文体」というのには感心した。孫がわたしのブログを読んで,「文章が硬いね」と評したが,まさに「おっさん文体」なのであろう。

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正直者

2021-01-21 19:59:38 | 日記

トランプ氏がワシントンを去った。夫人とともに大統領専用機で。バイデン新大統領就任前の一瞬の空白を狙った最後の権限行使だったのだろうか。

オバマ大統領の就任式には,やや居心地が悪そうだったが,ブッシュ氏が同席し,オバマ氏は就任演説で前大統領に敬意を表していた。ミシェル・オバマ夫人は,懇切にホワイトハウスを案内してくれたローラ・ブッシュ夫人の好意に心から感謝している(ミシェル・オバマ『マイ・ストーリー』 集英社)。

メラニア・トランプ夫人は,「自分の夫は自分に非常に正直で,正直なことは美徳でしょう。」と,大統領選挙の時に演説していた。自分自身に正直すぎることは,しばしばわがままや駄々っ子に通じる。

トランプ氏はユニークな大統領であった。このユニークさが,普遍的なものにならず,すっとユニークのままであって欲しい。

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ニセアカシアは

2021-01-20 11:29:11 | 日記

大学入試共通テストが無事終了した。わたしは二十数年前に,この前身のセンターテストの,生物の問題作成に関係していたので,ついついどんな出題があったかに興味が惹かれてしまう。今年の生物に,外来種を扱った問題が出た。この外来種という言葉を見て,わたしはニセアカシアのことを思い出した。

十数年前に帰郷した折,地元紙の記事にニセアカシア伐採の記事が出ているのを読んでびっくりした。千曲川やその上流の牛伏川で,外来種駆除の目的でニセアカシアの伐採が公的事業として行われるという。

ニセアカシア(ハリエンジュ)は地元では単にアカシアと呼ばれ,犀川や奈良井川の河岸を彩る景観として慣れ親しまれてきた。母校の応援歌には「アカシア薫る旗風に」という歌詞があり,美術部はアカシア会と命名されていた。初夏に白い花をつけ,蜜蜂がそれに群れる。アカシアのある風景は,わたしのノスタルジアをかきたてるものである。

そのアカシアが何故?調べてみると,ニセアカシアはとんでもない悪者に仕立てられていた。日本生態学会は侵略的外来種ワースト100のひとつに選定し,法的には生態系被害防止外来種リストに記載されている。その性質はすべて悪いものとされる。繁殖力旺盛で松林などに侵入して,景観を大きく改変する,マメ科で空中窒素固定能力があり,生物多様性を損なう,等々。果ては,棘があるのでヒトに怪我をさせる。まさに,坊主憎けりゃ袈裟まで憎いのである。

わたしはかねがね外来種駆除のあり方に違和感を覚えていた。フレッド・ピアスが書いた『外来種は本当に悪者か? 新しい野生THE NEW WILD』(草思社 2016年)を読んで,その意を益々強くした。外来種が入り込んで,豊かで安定した生態系が作られた例,外来種を駆除しようとした事業が,出来上がっていた生態系を攪乱し,惨憺たる結果に終わった例などが具体的に述べられ,外来種をいたずらに排除しようとするのではなく,取り入れて評価し,利用することの重要性が述べられている。そもそもわれわれの身の回りは外来種だらけである。極端な例をあげれば,食用作物で在来種なのは,ダイズ,アズキ,ワサビなどほんのわずかで,圧倒的大部分は外来種である。

アカシアのある景観は,地元住民にとっては100年以上にわたって慣れ親しんできた大切なものである。ニセアカシアに不都合なところがあれば,調節すればよい。外来種だといって撲滅を目指し,公的機関がボランティアまで募集するというのは,全く承服できない。ニセアカシアは伐採してもひこばえからの再生力が強く,そのため駆除に除草剤の使用が推奨されている。除草剤を散布して得られる生物多様性とは一体いかなるものか。

奈良井川沿いのアカシアが健在であることを,mt77さんのブログで知った。この景観が無粋な外来種駆除によって破壊されないことを強く願っている。

(下の写真は,bing.com/imagesよりダウンロードしました。)

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