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宮西達也作品を読み解く(2)

2023年10月14日 | 絵本
 「ふしぎな●●やさん」シリーズ。これは全部で「キャンディーや」「タネや」「カサや」「ヒーローや」の四作品ある。かなり以前に大型絵本で「キャンディーや」を語ったときがある。どれも展開がほぼ同じであり、いうなれば起承転結が明確で楽しめるし、その中に繰り返しの要素があり、安定した作品群と言える。



 2007年発刊の「キャンディーや」と次の「タネや」は、一層共通点が多い。どちらも小さく、口のなか、土のなかへと入れられ、挙句にブタくん自身が変化したり、木に実がなったりと一定の筋が予想される。最後に「大物」が登場して、オオカミが逃げ出す逆転のオチを見せる。ブラックボックス的な面白みの典型だ。


 「カサや」は、傘の図柄が空中に広がるというビジュアルが楽しい。途中、黒い傘からお化けが出る変化や、たくさんのブタが消えてなくなるオチも愉快だ。「ヒーローや」は、初めて「身につける」という動作が出てきて、モノによって違うパワーを持つ、しかしその度に危機はやってくるという顛末で、救うのは…。


 こんなふうに並べてみると、手渡された「好奇心」は、使えば身を救うけれど、一時的なものに過ぎず、必ず「最終的手段」が必要になるという括り方になるだろうか。自分が巨大化する、味方?が現われる、思いもかけない展開になる…と様々だが、現実に喩えてみれば、逃げ切れる何かを持っているのは強いことだ。


 「あるひ、ブタくんが、もりのなかを、トッコトッコあるいていくと」登場する「ふしぎな●●やさん」。そしてそこに必ず現れるオオカミ。これは一種の比喩といってもいい。一つの良き出会いの次には、壁や不運が待っている。これは人間の宿命なのだ。出会いによって得た力で負を解消していく。その繰り返しだ。


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