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実は「記号接地問題」に悩む

2024年06月24日 | 読書
 本屋大賞作品のRe53『成瀬は天下を取りにいく』(宮島未奈 新潮社)を読んだ。その続編であるRe54『成瀬は信じた道をいく』も翌日に読了した。主人公の持つ痛快さ、ユニークさがこの物語の骨子となり、確かに面白く読めた。こうした設定がウケるのは、自分も含め読者が彼女に一種の憧れを感じるからに違いない。


 『隠蔽捜査』の竜崎しかり、古くはTVドラマ(コミックか)の『斎藤さん』しかり、そのいずれもが正義感が強く、日和らない、めったにぶれない…多数がそうありたいと願う人物像を据える。だから「変わっていく」のは本人ではなく周辺人物。読み手は誰かの心境に共感するのかもしれない。そんな思いが浮かんだ。


 「二百歳まで生きる」と宣言した冒頭に成瀬の真骨頂があり、掲げていく他の様々な目標とつながらないように見えて、一つ一つクリアしていく度に力をつけ、スケール感を増す。時事ネタを上手に取り入れつつ「生きる」芯も感じる筋だ。ドラマ化ならば成瀬役は平手友梨奈か。一緒に読んだ家人と意見があった。





 新聞一面下部に広告があったので、興味を惹かれた。Re55『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』(今井むつみ・秋田喜美 中公新書)。オノマトペを手がかりに言語の本質に迫っていく構成で、途中で少し読みがだれてしまった。ただ、「記号接地問題」という認知科学上の言葉を知っただけでも価値があった。


 言葉の意味を理解するために、「まるごとの対象についての身体的な経験」の有無や大小などが問われており、非常に興味深い。一年生の孫の宿題を見てやる際にも日々感じていて、考え出せば小学校教員の仕事は今は怖くて難しくて出来そうにない。だから、本県の教員志願倍率は落ちたのか…ってかなり無理矢理(笑)。


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