すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

ふるいにのってふなでする

2020年01月09日 | 読書
 大人向けの絵本を読もうと思い立ったので、こういうジャンルがあることを知った。一口に世の中には知らないことが多いというが、本当にその通りだ。絵本一つとってもその範囲は広大だ。調べるとエドワード・ゴーリーの描く作品はナンセンス、ブラックユーモアが主らしい。細密なモノクロタッチが印象的だ。

【ジャンブリーズ】エドワード・リア・文  柴田元幸・訳
         エドワード・ゴーリー・絵




 そういえば、風刺的なことではマザーグースがあったなと今思い出した。学生時代ちょっとだけ詩をかじっていた頃、本を買った記憶がある。結局馴染めなかったのは、世界観や宗教観の違いだったのだろうか。この本を読んでも根本のところでは理解しがたい箇所が多い。ぼんやり読みだすと出だしであれっと思う。

 ふるいにのって ふなでした
 ふるいのふねで うみにでた



 「ふるい」とは、Sieve(ふるい、こし器)である。細かい目のある器に乗って海に向かうのはファンタジーであるのか。しかし、Sieveには「浄化・希望・貞節などの象徴」という意味も隠されている。海水がしみ込んでくる船をなんとか工夫しつつ過ごして、航海を進める面々…それらをジャンブリーズと名づけた?

 うみのかなたの そらとおく
  ジャンブリーズの すむという


 と繰り返されるフレーズは、当然カール・ブッセ(上田敏訳)のあの一節を思い出させる。「山のあなたの 空遠く 幸住むと 人のいふ」。この詩では見果てぬ幸せをどこまでも追い求めているが、ジャンブリーズたちは、無事に戻ってきて、ふるいの舟が残されている絵が結びである。追い求める主体が異なるか。


 そもそも「ジャンブリーズ」も作者リアによる造語とある。原語でも韻を踏んでいることは、私程度でも理解できる。それをまた見事に名訳者が七・五や七・七の調子に載せて内容を導き出している。となると、西野亮廣が意識的に七五調で書く訳も考えとしては主流に思えてくる。声に出して読み、耳に心に残すのだ。


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